Tuesday, July 21, 2015

Semicon West 2015に参加して


シリコンバレーでインターン中、吉田昌平です。今回は年に一度サンフランシスコで開催される、SEMICON West 2015&InterSolarに参加してきました。

私は主に会場を回りどんな企業が参加し、どんな製品を紹介しているのかに重点を置いていました。会場の大きさと迫力にのまれながらも私のボスについて行き、いろんな製品を観察しました。入場して10分、ずっと思い続けていたことが一つ。知識が追いつかない!


Semiconductor (半導体)について少し知り始めたのが、先日お会いした東京エレクトロンの社員の方に出会ってからなので、細かいところはなかなか理解ができませんでした。ですが、セミコン産業といっても半導体製造機を製造する会社から半導体を用いソーラーパネルを製造する会社まで多種多様だったので、いろんな種類の機械に囲まれていたという意味ではとても楽しめました。やはり男の子の性というべきですか、機械系や金属系のものはいつでも輝いて見えます。中でも、半導体をカットする前の状態は素晴らしかったです。

会場の規模、参加者の数、各企業のブースで熱心に製品説明するスタッフの方の熱意から、イベントがどれだけ有名で重要ものかは十分理解できました。大小様々なブースに企業が製品を並べ、お客様が入ればすぐに対応し、企業アピールのためにグッズを無料提供する。どのブースもホスピタリティーに溢れていました!イベント主催側の配慮も素晴らしく、参加企業の方のホテルの手配からイベント専用アプリを用意までしておりスムーズにイベント情報の取得することが可能でした。

会場を回っていて気づいたのは、やはりサンフランシスコ、海外企業の多さが目立っていました。アメリカだけではなく、日本や中国などのアジア系も多かったようです。マレーシア企業なども見ることができたので少し驚きました。それだけ、SEMICONの規模が大きいという意味ですね!世界中から企業と参加者が来ているだけあって人種の多様性も幅広かったです。先日参加した韓国ロボットフォーラムとの時とは違い、多くの日本企業を見ることができたので、これからの日本企業の海外進出への期待が膨らみました。日本の半導体産業は東京エレクトロンやニコンに続きたくさんの企業が奮闘していたのでこれからも頑張って欲しいです。

イベントを振り返って、昔と比べて参加者の数も減り少し人気ではなくなってきたように思われる半導体産業。でも、サンフランシスコのど真ん中でイベントが開かれ続けているということはそれだけまだ需要があり、世の中が必要としているということです。なので、これからの新たなイノベーションにより、かつての人気を取り戻し、住みやすくより良い生活を人々がおくれるような社会を形成する手助けをできるように期待しています。

吉田昌平 JABI 学生会員–Intern from Wittenberg University/関西外大-

Friday, July 17, 2015

2015年夏のシンポジウム: IoT向け半導体とロボット技術

7月11日土曜日に、カリフォルニア州サンタクララにあるインテル本社の講堂で行われたCASPA (Chinese American Semiconductor Professional Association) 2015年夏のシンポジウムに参加してきました。今回のタイトルは「Living in Avatar: Network Computing, Artificial Intelligence, and Robotics to Fuel Future Computing」で、いくつかのプレゼンテーションがありました。この中から興味深かった内容をご紹介したいと思います。

Robotics Inventions National Drones社のCEO、Marek Sadowski氏は、NASA Amesで火星探査マーズローバーの設計に携わった後、ITのコンサルタントとしてIMB、HP、NTTなどの企業で活躍、2004年に今の会社を立ち上げ、ロボットの開発をしています。ポーランドに設計部隊があり、インドのIT企業に例えて「ロボット開発のバンガロールになる。」と、意気込んでいました。今回は、サービスロボットや家庭用掃除ロボット、オフィス用大型掃除ロボット、湖底深度を測る自動ロボットボートなどを紹介。また、軍事偵察ロボットや複数のロボットを一人でコントロールできるBMS(戦場管理システム)なども開発しているとの事でした。警備ロボットのKnightscopeや、有名なiRobotに競合する製品を作っています。



Cadence Design Systems社のチーフ戦略オフィサー、Brandon Wang氏は、IoT市場の状況と将来についての話をしました。90年代のパソコンから、2000年代の携帯電話、その後のスマホを経て、今後はIoTで爆発的に半導体の出荷数が増えるという話です。興味深かったのは、バリューチェーンを4つのレベルに分けてマーケットサイズを予想していることです。同氏によると2020年には、レベル1 (Things)が$31B、レベル2 (Communication Network)が$17B、レベル3 (Cloud Computing)が$18B、そしてレベル4 (Application and Service) は$262B となり、やはり、アプリケーションやサービスの付加価値が一番大きくなるとの事でした。




携帯デバイスに様々なセンサーが加えられる事によってコストが下がり、さらに市場が加速するというサイクルに入ってきています。無線技術も、2020年には伝送速度10Gbpsが可能な5Gがやってくると考えられ、省電力技術やチップのパッケージ技術の進歩も相まって、ウェアラブル製品やアプリケーション市場がさらに加速するとの事です。それにしても、半導体の集積度やMEMS (Micro Electro-Mechanical Systems)の進歩、低電圧駆動による超低電力SoC等による、不揮発性メモリー制御、電力制御、無線充電など、ウェアラブル機器に利用されている技術の進歩には、目を見張るものがあります。

SRI International社のプリンシパル・リサーチエンジニア、Roy Kornbluh氏は、同社におけるロボット研究の成果を紹介しました。同氏は、現在Artificial Muscle社が開発している電場応答性高分子(Electro-Active Polymers: EAP)の発明者でもあり、ソフトアクチュエータとも呼ばれる人工筋肉について説明しました。実験のデモビデオでは、ロボットの上腕筋への応用や、柔らかいロボットの足、蛇ロボット、電圧をかけて硬くすることでロボットの指間接を制御する例などが紹介されました。


また、SRI社が開発した静電エラストマーを使用しているGrabit社製の「何でも掴めるロボット」の紹介もありました。製造現場や織物工場などで活用されています。

さらに、ExcoMuscle(外部筋肉)やバネを活用することで、従来のロボットに比べて20倍もの歩行エネルギー効率を達成した、PROXI人型ロボットの紹介もありました。このロボットは、先日のDRC (DARPA Robotics Challenge) でも活躍しました。

人工筋肉は、まだ耐久性やコスト、大量生産などに問題が残されています。例えば、ハプティクスと呼ばれる触覚フィードバック技術としてスマホ等のタッチスクリーンに、あるいは高級ヘッドフォンの低音振動用などへの適応や商品化が期待されており、残された技術課題等の解決が望まれます。いずれ小型モーターやリニアモーターに取って代わる人工筋肉ができれば、生物のように静かに動くロボットが出てくるのではと、今後の展開が楽しみです。

スマホ市場の拡大によってセンサーのコストが下がり、ネットワークやクラウドの発展によって通信、ストレージ、計算処理コストが下がり、AIやDeep Learning機械学習によって知能が向上、その上で人工筋肉などの新たなメカトロニクスの発展が見えてきています。まさに、IoTとロボットの分野でいわゆるカンブリア紀の大爆発が起ころうとしているのです。

岡田朋之


Tuesday, July 7, 2015

ロボットフォーラム レポート



去る6月25日、サンノゼにあるJABIL社のBlue Sky Innovation CenterにてKorea Robot Forum & Business Roadshowが開催されました。韓国のDaegu(大邱)市から10社以上が参加し、ロボット向けの部品や部品加工技術などの紹介が行われました。ロボット向けといっても、自動車や携帯電話など他の業界向けに展開されている部品や装置を、ロボット向けに売り込むのが目的の様でした。 今回はシリコンバレーのロボット業界著名人が参加し、キーノートやパネルセッションが開かれ、興味深い話が聞けましたので、内容をレポートしたいと思います。

JABILは今年で50周年になる米国のEMS企業で、さまざまな製品を生産している会社です。イベントのホストだということもあり、まず、Senior Vice President of Marketing and SalesのJoanne Moretti氏からJABILの歴史やビジネスについての紹介がありました。またUS Commercial ServiceのJoanne Vliet氏が米国と海外企業を繋ぎ米国直接投資をサポートする、Select USAプログラムについて説明され、米国に100拠点、海外に100拠点を設けての活動をしているとの事。詳細は日本語のサイトを参照ください。http://www.buyusa.gov/japan/investinamerica/index.asp キーノートスピーチではJABILのJohn Dulchinos氏やiRobot (Roomba)開発の父として知られている、Scott N. Miller 氏が登壇されました。 

John Dulchinos氏のプレゼンは以前にも一度聞いたことがあるのですが、彼が30年前にサービスロボットの未来を夢見てこの業界に飛び込んだが、今になって、その時に語られていた世界が来る素地が、やっと揃ったと話されていました。技術の進化や部品コストの低下、人工知能の発達といった要因だけではなく、労働人口の減少や労働コストの上昇によってロボット導入のビジネスケースができ、新たにロボットが注目されて来ているようです。

例えば、今まで世界の製造工場として機能してきた中国の製造業における労働コストは、この数年でメキシコを抜き、また新興国の賃金も増加している為、今後は製造用のロボット、特に組み立て工程でのロボットの必要性が大幅に増えるだろう。加えて、少子化対策の影響で人口分布が偏っており、高齢化社会におけるサービスロボットの必要性も増えるとのこと。日本で起きていることが数桁大きいレベルで起きてくるので、製造現場や社会インフラへのロボットの導入が加速しそうです。

次に、iRobot開発の父として知られているScott Miller氏の話が聞けたのは大変有意義でした。MIT時代に作ったマグロロボットでマグロの水泳効率を再現した話から、Walt Disney社で数メートルある巨大恐竜ロボットを作った話、Hasbro社向けに低価格な幼児用の人形を作った話など盛りだくさんでした。面白かったのはiRobotルンバ掃除機がヒットした後、Scoobaという床拭きロボットを開発したが、さっぱり売れなかった理由です。ルンバは競合製品が掃除機なので値段が高くても消費者は購入したが、Scoobaの競合は数十ドルで入手可能なモップなので、値段を200ドルレベルに下げる必要があったということです。また、iRobotを開発した理由も面白く、人々にどんなロボットが欲しいかと聞いて回ったら、掃除機かビールを持ってきてくれるロボットが欲しいというのが圧倒的に多かったからだそうです。

Scott Miller氏は現在Dragon Innovationでさまざまな新しい製品を製作しており、開発例には有名なSpheroやJIBOがあります。このような新製品の開発は2ステージあり、まずはプロトタイプの開発、それから量産向け開発となります。プロトタイプの開発は、最近の技術の進歩でさまざまなツールがあるため、比較的簡単にできるようになったとの事。3Dプリンターや、Arduino, Beegle board, Rasberry PIなどの開発ボード、ROSなどのオープンソースソフトのおかげで、特別な電気工学や機械工学の知識がなくても開発ができるという状況が、さまざまな製品アイデアの実現化に貢献しています。量産フェーズでは、少量多品種開発向けにRethink RoboticsのBaxterのような組み立てロボットがでてきており、今後は過去の大量生産から少量多品種生産に移行していくだろうと説明されました。また、ミレニアル世代といわれる16歳 -34歳の世代は、製品へのこだわりや新製品への興味が高いのと、米国では団塊の世代と同数の人口比率で存在する為、今後少量多品種に消費の傾向を変えてくるのではとの事でした。

Translink CapitalのJay Eum氏はSamsung Ventures の米国トップの経験から自分のベンチャーキャピタルを起こした人で、キーノートでは起業と海外展開について話されました。韓国系米国人のEum氏は韓国で最近成功したインターネット企業を紹介。日本でも知られているネイバーやカカオトーク, 最近ソフトバンクが投資をしたクーパンなどについて、ローカルマーケットで勝利する重要性について説明されました。ハードウェアビジネスは海外向けの展開も大事だが、リテールやローカルなサービスの場合は、無理して海外向けに展開して失敗するよりもまずは自国での地固めが重要で、成功ファクターとしては、抵抗の低い道を選ぶこと、ビジネスのバランスを考慮してマーケット機会を選ぶこと、内部リソースと外部のネットワークを最大限活用することなど、具体例を挙げて説明されました。

キーノートの後はパネルセッションに以降。ここでも著名人のコメントが多く聞けました。最初のセッションは”工業ロボットの新たフロンティア“ “New Frontiers for Industrial Robotics”というタイトルで、Baxterで有名なRethink RoboticsのBrian Benoit氏、Fetch RoboticsのCTOのMichael Ferguson氏、Stanford Research Institute(SRI)発 でArtifical Musleから進化した会社Grabitの投資家、Charlie Duncheon氏、ABBからもパネル参加され、工業ロボットの未来について話されました。

工業用ロボットで今後期待されるのは、人と共存して組み立てができるロボット(ABB YuMi Rethink Robotics Baxterなど)です。またAmazon のKivaロボットのように工場や倉庫などで製品やパーツを選び運搬するロボット(Fetch Robotics)、さまざまな製品を傷つけることなく掴める技術(Grabit)などの紹介がありました。Grabitとは従来機械では不可能であった布,織物を掴むことができるため、繊維工業の製造工程の自動化が可能になります。

組み立てロボットの問題点についても議論されました。少数多品種の生産では短期間に生産ラインを立ち上げ、短期間生産した後また短期間に別の製品に変更する必要性があるため、現在のロボット機能変更のフレキシビリティ(柔軟性)では追いつかず、まだまだ人間が作業をする必要があるようです。ロボットの技術が進歩し一台で複数の作業を学習することができるようになれば、前出の人口減や人件費高に対応できてくると考えられ、今後の技術進歩が期待されています。

最後は、Silicon Valley Roboticsの会長でありSRIのロボット研究所長Rich Mahoney氏、ホテル向けサービスロボットSaviokeのCEO、Steve Cousins氏、iRobot VenturesのHans Anders氏、ElementのTim Smith氏が登壇、そしてSilicon Valley RoboticsのExecutive Director, Andra Keay氏をモデレーターとしてパネルセッションが行われました。

Mahoney氏は、SRIにおけるロボット開発の状況と、最近開催されたDARPAロボティクス・チャレンジについて紹介がありました。SRIでは今までの半分の電池容量で3時間歩き続けるロボットや超軽量アシストスーツを開発しているとの事。DARPAロボティクス・チャレンジにはメディアが300社も参加し、内100社は日本のメディアだったそうです。日本のロボットに対する熱意が感じられました。今回の大会では雰囲気が以前とはずいぶん変わり、まるでスポーツ・イベントのように観客が歓声をあげたり応援をしたりしていたのが印象的だったようです。ロボットが転ぶシーンはYoutubeで何度も流され、米国内のロボットに対する悪いイメージ(映画ターミネーター、労働を奪う敵など)の改善に役だって良かったとのコメントもありました。

SaviokeのCousins氏は、ロボットのハードとソフトのバージョン管理や、アップグレードの大変さについて説明されました。サービスロボットを社会に理解してもらい浸透させるためには、ストーリーボードやビデオなどで利用シーンを説明すると良い。iPhoneができるまで誰もスマホの必要性を感じなかったのが、今は、スマホなしでは考えられないように、ロボットも利用シーンが明確になれば必要と感じてもらえるという話でした。これは技術先行で開発した後、誰も買わないと言った問題の解決に有効だと思います。最近はKickStarterやIndigogoなどでビデオを見せて投資を募ることが流行ってますが、同じ考えであると感じました。 今回のイベントでは、人間の代わりをする組み立て用ロボットやサービスロボットが浸透していくのにはまだまだ大変な道のりであるが、コストパフォーマンスがビジネスモデルの境界線を越え、急激に採用が進む時代が間近に迫っているのではと感じました。Dulchinos氏が30年前に夢見た世界が、あと数年でやってくるのかも知れません。

岡田朋之

Tuesday, June 30, 2015

JABI Hourに参加して

今日のインターン先での仕事はいつもと違う終わり方をした。通常通りならば、5-6時に仕事を終え家に帰る用意をするのだが、今日はその後、JABI Hourの準備をし始めた。JABI HourとはJABIに属する人や、興味を持つ人が集まり自由に話す場で、私は今回が初めての参加となった。参加者の大半は独立し、現在各々の会社を持つ人や独立を考えている人達が多く、起業を目指す私にとっては、大変勉強となる時間だった。

最初は参加者それぞれの2分間の自己紹介と質疑応答で始まったが、予想通り、皆話す内容と質問したいことが多く、時間を越えるのが当たり前となった。彼らの人生は、私が聞いたことも経験したこともない波瀾万丈なもので、とても新鮮なものだった。独立に至った経緯や理由は、私のモチベーションを上げるには十分すぎるものだった。私の自己紹介の番が来た時は少し緊張したが、言いたい事とそれについて尋ねたい事を聞けた。そして、私へのアドバイスは的確なもの、そして、独創性に溢れるものがあり、学び、吸収するものが沢山あった。

話のトピックは数え切れないほど多岐にわたり、ビジネスの話から政治の話、物理、安保やエイリアンなど雑学的な話まであった。普段、私の友達と話す内容とはまったく違う内容と質で飽きることがなかった。特に、起業とは関係ないが、安保に関する議論は、テレビに出てくる著名人の討論を聞いているようだった。

私の母は沖縄出身なので、個人的にはいろいろ思うことがあった。常日頃から思っている事だが、集団的自由権の行使について、政府は戦争が起こることを前提に話しているような気がするので嫌気がさしている。現在はアメリカに守られている状況で、日本に何かあればアメリカが助けてくれる。だが、反対にアメリカになにかあれば防護可能にするというものだ。そうなれば『戦争』ではないかもしれないが、自衛隊の中から戦闘により死者が出る可能性も出てくるかもしれない。そうなれば状況も一変するだろう。無知な私だが、個人的には、日本が昔の過ちをまた繰り返しかねないと懸念している。

政治に対して若者はどのように考えているかという質問も話の中で出てきた。私自身、政治はあんまり知っている方ではないが、海外に留学し、いろんな学生と話、日本の現状をより客観的にみれるようになって思ったのは、今の日本では若者の興味のベクトルは、先進国の中でも得に平和な日本であるがゆえ、いろんな方向にあり、あまりにも政治に関心のない学生が多すぎるという事だ。「知る、知らない」の前に関心がなければ考えることもない。もちろん、真面目に考えている学生も沢山いるが、その逆も然りだ。私、ビジネス、起業、日本に携わるものとしては、日本の政治状況や他国との問題は大変大切なものなので、これからも注意していきたい。

次回のJABI Hourはどのようになるか、もう既に楽しみにしている。普段考えないようなことを考える機会を与えてくれ、そして新しい考えを生み出してくれた数々のアドバイスを聞くことができ、とても良い経験になった。JABI Hour感謝である。

吉田昌平 JABI 学生会員–Intern from Wittenberg University/関西外大-

Monday, June 29, 2015

自動車業界向けイノベーション

6月16日、パロアルトにあるオスマンファミリー・ユダヤ人コミュニティーセンター(Oshman Family JCC)で開催された“カナダとイスラエルからの自動車業界向けイノベーション:Funding the Smart Car of Tomorrow“に参加してきました。カナダ大使館パルアルト事務所とイスラエル経済省(Government of Israel Economic Mission)がアレンジした会合で、12社のピッチを20名ほどのVCや企業の人達が聞き、その後で個別会議と懇親会がありました。

12社の中身ですが、 サイバーセキュリティー関連:2社 (イスラエル)
www.argus-sec.com
www.discretix.com/markets/automotive/
3D モーションキャプチャー技術:1社 (イスラエル)
www.xtr3d.com
人体検出オプティカル技術:1社 (イスラエル)
www.guardian-optech.com
フリートモニタリングクラウド技術:2社(イスラエル)
http://www.i4drive.com/
www.mobi-wize.com
見ないで操作できるタッチスクリーン技術:1社 (イスラエル)
http://www.inprisltd.com/
緊急車両報知システム:1社 (カナダ)
https://www.brakers.net/home.html
センサー技術:1社 (カナダ)
http://www.invotekinc.com/
衝突防止技術:1社 (カナダ)
http://phantomintelligence.com/
空間位置センサー技術:1社(カナダ)
http://www.gesturesense.com/xyz/
IoT開発クラウドプラットフォーム:1社 (米国)
http://litmusautomation.com/
英語のまとめは下記を参照ください。
http://www.israeltradeca.org/sites/default/files/short_list_-_transportation_delegation_1.pdf

 イスラエルでは、去年Mobileyeが上場したこともあり、自動車関連の起業が盛んになっているように感じました。カナダはトロントがスタートアップやアクセレレーター、インキュベーターが多く、最近シリコンバレーにピッチに来る会社が増えていると感じます。

これらの中からいくつか面白いと感じた会社をピックアップし、紹介させていただきます。

1.3D モーションキャプチャー技術:1社 (イスラエル)
Extreme Reality: www.xtr3d.com
 カメラで人のジェスチャーを見て動きを判断する技術。Qualcommが買収したGestureTekやGoogleが買収したFlutter、Leap Motionなど、いろいろと出てきている技術で、Microsoft Kinnectなどでも有名。この会社の技術は、マルチデバイスで2Dカメラを使い、人の動きを3Dで判断できる技術に進化しており、ミドルウェアーをセガや360等のゲームソフトの会社、またSamsungスマホ端末にも提供しています。 フレーム毎に3Dモデルを作って、人のとる姿勢を判断。スマホや医療機器、ロボットなどの分野でMicrosoft KinnectやLeap Motion に対抗していくと思われます。スマホでスワイプの代わりにジェスチャーで何をするのかと疑問だったのですが、コンソールゲームに対抗してスマホを大画面に接続してゲームをする際に使えます。ただし、スマホ用ゲームコントローラ市場が立ち上がらなかったことを鑑みると、このようなユースケースが実際に流行るのかはまだ疑問が残ります。 ロボット向けや自動車向けでは、人の動きを見て状況を判断したり、人をよける、ついて行く等、新たな利用方法が出てくるかも知れません。他にも最近話題の高齢者見守りで、人の動きを観察する利用方法があると思います。今後のIoT、ロボット向けの展開が期待されます。

2.人体検出オプティカル技術:1社 (イスラエル)
Guardian: www.guardian-optech.com
 この会社はカメラで近赤外線を検出し、生物がいるか判別する技術で、心臓の鼓動が出す“ゆらぎ”を検出して正確に生物の存在を判定できます。一つ考えられるユースケースはよくニュースに出てくる、乳児や幼児の車への置き去り。パチンコや買い物のための故意なケースはもちろん、単に忘れてしまうケースにも対応でき、カメラで車内をモニターして置き去りを通知、早期に子供を救うことができます。 他にも、座席に人がいない場合は、衝突時にエアーバッグを起動しないなどのユースケースも考えられます。

 すでにデトロイトの自動車企業とのテスト開発が決まっており、今後日本の自動車企業向けや自動運転技術向けにも使えないかと思いました。ただしこれらだけではビジネスにするのは難しいので、他のユースケースも求められるでしょう。

 特別なハードウェアは必要なく、市販のカメラを利用して低コストで作れるため、検出アルゴリズムを武器にカメラシステムを作って売りたいとの事でした。

3.見ないで操作できるタッチスクリーン技術:1社 (イスラエル)
Upsense: http://www.inprisltd.com/
 最近の車には、カーナビだけではなく、オーディオやエアコン操作用などにもタッチスクリーンがついてます。  しかし、 運転者の注意をそらす為、米国では事故の16%は運転者がタッチスクリーン操作中におきるとの統計があるとの事。音声コマンドなどの技術も出てきていますが、この会社は、人差し指から小指までの4本の指をスクリーンにおいて簡単に操作できるという技術を作りました。一切スクリーンを見ずに操作ができるため、自動車向けには最適。この技術はスマホにもソフトウェアとしてダウンロードできるため、さまざまな応用が可能です。  キーボードのようにデファクトな操作方法ができて、将来ブラインドタッチスクリーン操作の基本になるかもとも思いました。

 これらの会社に共通して言えるのは、どれも高度な技術をたくさん持っているわけではなく、既存のコンポーネンツや技術をうまく応用して新しい市場を作っていることです。どの会社が生き残り成功していくかは、いかに新たな市場を見つけ、タイミング良く製品を導入し他社との差別化をするのが重要だと感じます。 早すぎても市場が立ち上がらなかったり、遅すぎると先行者に市場を奪われたり、途中で製品や市場のピボットも必要かもしれません。最後は、これらの状況に柔軟に対応し、チームの力を100%引き出せるリーダーがおり、辛抱強く有益なサポートを与えることができるAngelやVCがついている会社が成功していくと思います。

JABIでは日本向けに新たな技術やスタートアップを紹介し、投資やパートナーシップのお手伝いをしております。また、日本からの技術を米国に導入したり、技術や投資先のリサーチも行ったりしております。スタートアップや社内起業経験者も在籍しており、新事業の立ち上げや拡大にコンサルティングやマネージメントとしての参加も可能です。

岡田朋之

Wednesday, June 24, 2015

アジア・アメリカン・マルチメディア協会(AAMA)主催、コンシューマ・コネクテッド デバイス・カンファレンスからの報告 その3

去る5月7日にシリコンバレーで開催されたAsia American Multimedia Association主催のConsumer Connected Device Conferenceに参加した報告ブログその3を(最終)を書きます。今回はドローンとロボットのパネルセッションについての報告です。

5.パネルセッション:ドローン このパネルでは下記の人たちが登壇しました。
Jessie Lu, Dir of communication, Ehang, inc. – drone manufacturer Bryan Field-Elliot, Founder&CEO, PivielPath - Cloud service for drones  http://pixiepath.com/ Max Bruner, CEO Mavrx – global imaging analysis for agriculture drone http://www.mavrx.co/ Timothy Harris, Co-founder&CEO, Swift Navigation – inch accurate drone location http://www.swiftnav.com/ Nathan Schuett , CEO, Prenav – startup, autonomous drone for image capturing cellphone towers http://www.prenav.com/#intro Moderator: Chris Lee, AAMA Conference Co-Chair &Board members, VC/Growth Investor, Accel Partners
まずドローンとは何か、ラジコン(RC)とはどう違うのかという話から始まりました。ドローンには2種類あり、マルチローターで垂直上昇下降が可能なものと、固定翼を持ち長距離飛行が可能なものがあります。またマーケットも、消費者向け、商用、軍用があります。

ドローンは基本空飛ぶロボットだとも言え、コンピューターの発展、小型化による飛行制御の進歩から生み出されました。登壇のパネリストは消費者向けのドローンを販売しているEhangや農業用のドローンに使われる画像解析技術の会社Mavrx,ドローンの位置をインチ単位で特定できる技術を商用デリバリードローン向けに提供しているSwift Navigation、携帯事業者のセルタワーなどの点検に使われるドローンを提供している、Prenavなどの、さまざまな活用例が紹介されました。

今後の課題として、やはり規制の問題、衝突回避技術の必要性、自律行動可能なドローンの開発、コントロールする人間のエラー対応や、環境(突風、木々など)への対応などが話されました。

面白かったのは、ドローンの技術はセンサー、プロセッサーなどほぼすべてスマホに搭載されており、スマホにローターをつければドローンになるという製品例も紹介されました。

6.パネルセッション:ロボット このパネルでは下記の人たちが登壇しました。
Steve Cousins, CEO Savioke Marco Mascorro, CEO, Fellow Robots John Dulchinos, VP Global Automation, JABIL Ping Wang, Technical Director, Techstars (phD in neuroscience) – qualcomm robotics accelerator Moderator: Jay Eum, Managing Director, Translink Capital & AAMA Conference Co-Chair & President
シリコンバレーではロボット開発が最近熱くなってきているが、なぜなのかという話題で始まりました。JABILのダルチノス(Dulchinos)氏は、最近まで産業用ロボットのAdept社のCEOを勤めていた人ですが、80年代にこれからはロボットだという話を聞いてロボットの会社に就職したが、やっと今になってロボットが本格的に社会に進出しそうだと話されました。また日本の高齢化社会などによるサービスロボットの必要性から、世の中がロボットを受け入れる状況になってきているとの事。技術の進歩により、プロセッサーやメモリー、さまざまなセンサーが安価になり、インターネットによる情報拡散も加わって、今までは大手企業の資本力や多人数がないとできなかった開発が、少人数のスタートアップのチームでできるようになったことも大きいとの事。オープンソースのロボット向けソフト、ROSS,や3Dプリンター、人工知能ディープラーニングの進歩も加わり、ロボットが昨今の技術進歩の最終到着地になりつつあるとの話でした。

クアルコム (Qualcomm)のアクセレレーター、Techstartsでは毎年10チームを選んで投資・開発を進めるが、今年は10チーム中、半分は米国外から、4分の1は産業向け、半分は消費者向け、3分の1はドローンだとの事。またJABILによると、今までのFA(Factory Automation)でのロボットの活用はチッププレースメントマシン等、製造工程の5-10%程度に限られており、組み立て工程は人間に頼っていたが、ここにきて人間とともに組み立てをこなすロボットも出てきているとの事。

サビオキ(Savioke)のカズンズ(Steve Cousins)氏はグーグルが買収した著名なWillow GarageのCEOだった人物ですが、Willow Garageでは人型ロボットが冷蔵庫からビールを持ってくるといった、面白いが、5千万円もするというロボットで、コストの割りにあまり有用でない開発をしていたが、今回のSaviokeでは、実用的なホテルのサービスロボットを低価格で提供することにフォーカスしているとの事でした。

Techstarsのワング(Ping Wang)氏は、ロボット開発の現状を生物のカンブリア爆発といわれる、古生代カンブリア紀、 およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門( ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象にたとえ、ロボットはあらゆる機能特化に向けて一旦進化し、その中からゼネラルインテリジェンスを持った人型ロボットに進化していくのではという話をされました。彼はニューロサイエンス、脳科学の博士号を持っており、人工知能と人間の脳を比較して、淘汰圧によって進化してきた機能を機械で実現することの難しさがあると説明。 過去30年間人型ロボットを作ろうとしてきた方向性は誤っており、まずは動植物の進化になぞって、IoTセンサーは植物、ロボットはIoT植物が生み出すデータを食べるIoT動物とたとえ、そこからの進化により将来的には人間型ロボットが生まれてくるだろうという話をされました。

最後に: シリコンバレーでは最近多くのIoT関連のセミナー、パネルセッション、ミートアップが開かれており、まさに次の産業革命が起こるのではという気配を感じます。シリコンバレー独特の起業文化やエコシステムから出てくるさまざまなアイデヤや商品を、日本企業にご紹介し、今後の事業戦略、商品開発、そして海外ビジネスや提携に役立てていただきたいと考えております。

岡田朋之

Tuesday, June 23, 2015

アジア・アメリカン・マルチメディア協会(AAMA)主催、コンシューマ・コネクテッド デバイス・カンファレンスからの報告 その2

去る5月7日にシリコンバレーで開催されたAsia American Multimedia Association主催のConsumer Connected Device Conferenceに参加した報告書「その2」です。今回はIoTとウェアラブルのパネルセッションについて報告いたします。

3.パネルセッション:IoT IoTのパネルセッションには、下記の人達が登壇しました。
Shane Dyer, CEO, Arrayent – connected device platform Jeff Gao, Dir of Strategies IoT, CISCO David Friedman: CEO Ayla Networks David Knight, CEO, TERBINE - IoT data brokerage Moderator: Jessica Tien, AAMA Co-Chair & Board member, principal, int’l tax services, Ernt&Young LLP
シスコのガオ(Gao)氏は、今後ありとあらゆる物がお互いに話ができるようになり、すべての物がつながった時には、情報のフィードバックループが大きな価値を生み出すだろうという話をされました。Arrayent社のダイアー(Dyer)氏は、現状さまざまな商品がひとつずつネットにつながるように進んでおり、一旦ひとつの製品がつながると、コンシューマーはつながるのが当たり前だと考え、つながらない製品は売れなくなる。この動きが加速する事ですべての家電製品がネットにつながっていくだろうとの事。Arrayent社は米国の家電大手、Whirlpoolの製品やガレージドア等をネットにつなげるクラウド技術を提供しています。Ayla Networks社のフリードマン(Friedman)氏はIoTの接着剤を提供、中国で使われているメッセージングサービスのWechatをIoTにつなげるソリューションを提供しているとの事でした。

このパネルセッションでは、データの帰属問題や、先出の、人命にかかわるIoTのセキュリティー問題についても議論されました。

4.パネルセッション:ウェアラブル このパネルでは下記の人たちが登壇しました。
Urska Srsen, co-founder/Coo Bellabeat Justin Butler, VP of commercial development, Misfit Hans Tung, Managing Partner, GGV Capital Xiao-Feng Li, General Manager, Huami Inc. – mi band (xiaomi branded fitness band) Moderator: Ming Yeh, AAMA Board member, managing director, SVB capital China
タング(Hans Tung)氏のGGVキャピタルはこの数年で中国を中心に躍進中のXiaomi(小米)に早い時期から投資をし、大きな成果をあげて来ました。またHuamiはXiaomiブランドのウェアラブル商品を展開しており、Xiaomi社の携帯電話は米国では販売されていないものの、Huami社は今後低価格帯を狙ってXiamiや他の携帯電話と連携する腕バンドを展開して行くとの事。最近の商品は一日で10万個売り上げるなど、Xiaomiの販売手法で成果をあげています。 またシリコンバレーのスタートアップ、MisfitもXiaomiの投資を受け、中国展開を進めています。シリコンバレーのインキュベーター、アクセレレーターから、中国資本に投資を受け、中国で製造、中国市場で大量に売りコストを下げ、世界展開するという構図が出でき手いるとの事です。

次回はドローンとロボットのパネルセッションについて話します。

岡田朋之