去る5月7日にシリコンバレーで開催されたAsia American Multimedia Association主催のConsumer Connected Device Conferenceに参加してきました。パネルセッションを主に、今話題のIoT, Drone, Robotについて話し合われ、Google からも新規ビジネス、新規ハードウェアプラットフォーム開発者が登壇し、最新のシリコンバレー情報を聞くことができました。
今回はJABIL(ジェイビル)という米国のEMS企業が、シリコンバレーに5月にオープンしたBlue Sky Center というアクセレレーターのお披露目も兼ねて行われ、シリコンバレー各地で乱立しているインキュベーター・アクセレレーターの勢いを感じました。またAsia American Multimedia Associationに所属するメンバーは主に台湾、中国系で、シリコンバレーの技術を中国で製造する流れがますます強くなっているとも感じました。
報告が遅れましたが、長くなりますので、今回のカンフェレンスで得た内容を抜粋して3回に分け、2話ずつご報告します。
Lowes Innovations Lab: Executive Director, Kyle Nel
ロウズ(Lowe’s)は米国で展開する住宅リフォーム及び生活家電チェーンで、Lowe’s イノベーションラボ (http://www.lowesinnovationlabs.com/#about)を社内に設立し、店舗向けにバーチュアルリアリティーを使った商品カタログを展開するなど、新技術をどんどん取り込んでいる会社です。ラボの責任者であるカイル(Kyle)氏が、店内の案内ロボット、OSHBOTについて説明しれくれました。
OSHBOTは店舗を動き回ってお客さんの質問に答えたり、商品の場所を案内するロボットで、お客様が気持ちがらないよう、いわゆる“不気味の谷 = Uncanny Valley”を避け、あえて人型にせず顧客が近寄りやすい形態にしたとの事。シリコンバレーにあるFellow Robots (http://fellowrobots.com/)というベンチャー企業と共同開発し、自動ナビゲーション、自然言語処理、視覚検出などの技術を採用。リアルタイム在庫確認なども可能で、店員をサポートすることで、より良い購買体験ができるようにしているとの事です。将来は案内係の店員が要らなくなるのではと感じました。
Helium Systems: Rob Chandhok
ロブチャンドック(Rob Chandhok)氏はクアルコムでIoT規格のオールジョイン(AllJoyn)を立ち上げた人物で、IoT業界の立役者のような人ですが、2014年後半にHelium Systemsに移り、インターネットのエッジをつなげる小さなモジュールを開発しています。IoTでビジネスをする際に重要な競争性は、ビッグデータと機械学習の活用だとの事。また今後はセキュリティーが大きな問題となるだろうとも。社会インフラに浸透するIoTのセキュリティー問題は人命にかかわるため、さまざまなケースを考える必要があると説明してました。例えばセキュリティーカメラの映像を秘匿化しても、映像が送られいたり、人がいるいないの情報自体も悪用可能で、秘匿化だけではセキュリティー対策をしたとは言えないという話がありました。
次回はIoTとウェアラブルのパネルセッションについて報告いたします。
岡田朋之
Monday, June 22, 2015
Tuesday, June 9, 2015
JABI Salon - 日本における高年齢者と労働 –
初めまして。Wittenberg Universityにて学位留学中、関西外国語大学4年生吉田昌平です。出身は徳島県、アメリカでは起業家目指して奮闘しています。現在は、カリフォルニア州サンタクララのInnovation Matrixという企業の元でインターンとして働いています。
2015年6月9日カリフォルニアにて、JABI主催の第13回目サロンにJABIのNext会員として参加しました。サロンの内容は、ゲストスピーカーの 藤木通弘教授(産業医科大学)による『日本における高年齢者と労働』についての講演を聞き、その後サロン参加者と藤木教授による質疑応答という形でした。
講演の内容は、超高齢化社会とも呼ばれる日本での現状の説明、少子化などの高齢化社会の要因、未来の労働力の低下といった問題、老化の種類、さらに認知症問題など様々な高年齢者に関することでした。
話の中でも特に、日本ではこれらの問題に対して産業医科という分野の技術を用い、問題を解決しようとする動きがあるということに すごく驚きました。そして、そういった分野を用いて現在の労働環境の見直しと改善ができればますます良い社会作りができるのではないかという期待が膨らみました。(産業医とは、企業等において労働者の健康管理等を行う医師であり、労働安全衛生法により、一定規模の事業所には産業医の選任は義務づけられている。Wikipedia: 産業医)
Finlandでは高年齢者の労働能力を見極め適切な労働を配分するために、ワークアビリティインデックス(労働適応能力評価スケール)といった方法が国で実施されているということを聞き、日本ではなぜそのようなことが国の法律として行われていないか疑問が残りましたが、その反面、様々な企業が似たようなこと、例えば、フルタイムからパートタイムへのシフト、などを実施し始めているので、より多くの人々が労働者の労働に対する適応能力に目が行き始めるのも時間の問題ではないかと感じました。
超高齢化社会の中、増え続ける高齢者のための活動は必要です。今の日本では定年というシステムがありますが、孤独、老化、認知症など労働をしないことでおこりうる問題につながるのではないかと思ったことはあります。したがって、高年齢の労働者の適応能力に合わせた労働の配分システム構築などが、そういった問題の一つの解決策になるかもしれない。サロンを通して、一人の日本の若者として、また起業家の卵としても、日本社会、そして未来を支えるために必要なものを作りたい、という気持ちがとても強く残りました。
吉田昌平
2015年6月9日カリフォルニアにて、JABI主催の第13回目サロンにJABIのNext会員として参加しました。サロンの内容は、ゲストスピーカーの 藤木通弘教授(産業医科大学)による『日本における高年齢者と労働』についての講演を聞き、その後サロン参加者と藤木教授による質疑応答という形でした。
講演の内容は、超高齢化社会とも呼ばれる日本での現状の説明、少子化などの高齢化社会の要因、未来の労働力の低下といった問題、老化の種類、さらに認知症問題など様々な高年齢者に関することでした。
話の中でも特に、日本ではこれらの問題に対して産業医科という分野の技術を用い、問題を解決しようとする動きがあるということに すごく驚きました。そして、そういった分野を用いて現在の労働環境の見直しと改善ができればますます良い社会作りができるのではないかという期待が膨らみました。(産業医とは、企業等において労働者の健康管理等を行う医師であり、労働安全衛生法により、一定規模の事業所には産業医の選任は義務づけられている。Wikipedia: 産業医)
Finlandでは高年齢者の労働能力を見極め適切な労働を配分するために、ワークアビリティインデックス(労働適応能力評価スケール)といった方法が国で実施されているということを聞き、日本ではなぜそのようなことが国の法律として行われていないか疑問が残りましたが、その反面、様々な企業が似たようなこと、例えば、フルタイムからパートタイムへのシフト、などを実施し始めているので、より多くの人々が労働者の労働に対する適応能力に目が行き始めるのも時間の問題ではないかと感じました。
超高齢化社会の中、増え続ける高齢者のための活動は必要です。今の日本では定年というシステムがありますが、孤独、老化、認知症など労働をしないことでおこりうる問題につながるのではないかと思ったことはあります。したがって、高年齢の労働者の適応能力に合わせた労働の配分システム構築などが、そういった問題の一つの解決策になるかもしれない。サロンを通して、一人の日本の若者として、また起業家の卵としても、日本社会、そして未来を支えるために必要なものを作りたい、という気持ちがとても強く残りました。
吉田昌平
Thursday, May 28, 2015
ロボット投資家フォーラム
去る5月6日、パロアルトのSRIインターナショナルで開催されたシリコンバレーロボティックス(SVR )主催のロボット投資家フォーラムに参加してきました。
シリコンバレーロボティックスは、5年ほど前に設立された非営利団体。SRIインターナショナルでロボット研究開発を主導しているDr. Rich Mahoney氏がプレジデント、Andra Keay氏をマネージングディレクターとして、シリコンバレーでの様々なロボット啓蒙活動を行っています。最近も、パロアルトで毎年恒例のロボットブロックパーティーを主催、ロボット関連の色々なスタートアップ企業や学生が成果を展示するなど、多くの子供連れが訪れて賑わいました。その他にも、スタンフォード大学やサンフランシスコではセミナーやパネルセッションを開いたり、Willow Garageに代表されるシリコンバレーのロボット起業家達が情報を共有したり、協業を模索したりする機会を提供しています。
今回のロボット投資家フォーラムでは、冒頭、植毛治療で活躍するロボット企業Restoration Roboticsに投資をしているベンチャーキャピタル、Clarus Venturesのパートナーの一人Emmet Cunningham 医学博士が、医療用ロボットの投資環境について語り、その他ベンチャー企業やスタートアップの起業家達がベンチャーキャピタルやコンサルタントの方々に向けてプレゼンテーションを行いました。
Restoration Roboticsは起業して12年、4年前から投資を開始したClarus Ventures によると、今後2年間で黒字化できるだろうと言う事です。この分野の投資というのは、医療機器認可に時間がかかることもあり、まさに腰を据えての投資になります。医療ロボットは、認可や特許の取得により競合他社に対して参入障壁を築くことができ、また “かみそりの刃を売るビジネスモデル”で展開できるので、後のリターンが大きいと説明していました。これに比べてコンシューマ向けの製品やロボット(例えば、ドローンなど)は、技術がこなれており誰でも比較的簡単に起業が可能で、初期投資も少なくて良い。その代わりに、参入障壁の低さから起業後に過当競争に巻き込まれるリスクがあると、両ロボット分野の比較をしていました。
また、今まで産業用が主流であったロボットの技術が、ビッグデータ、センサー、人工知能の技術などを融合して、サービスロボットに展開されてきていること。これまでの産業用ロボットが累積で数百万台しか作られてきていないのに対して、サービスロボットはその何十倍、何百倍のマーケットサイズになるだろうと語っていました。さらに、人間型ゼネラルロボットの登場はまだまだ数十年以上先の話なので、当面は様々なアプリケーションに特化したロボットが、医療やサービスの世界に登場してくると考えているそうです。
人のできない、もしくは不得意なことをさせるという観点から、サービスロボットにはマーケットのニーズを優先に考え、技術ありきではなく、いかに人の生活を向上できるかということが求められます。それらを最低限のコストで製品やサービスとして提供することが重要であり、また自社の強みを明確にする必要もあると考えます。一方で、ロボットの定義がIoTのデバイスと重複したり、境界があいまいになってきたりしています。日本では、特に私の世代では、ロボットというと鉄腕アトムやガンダムが頭に浮かびますが、ニーズありきで柔軟に考えて行くことが重要だと感じました。
今回のフォーラム後半では、複数の起業家のプレゼンテーションがありましたが、一部を下記に紹介します。
最近私が入会した非営利団体JABI(Japan America Business Initiative)は、ロボット業界の聡明期からロボット開発に取り組み、当業界には大変詳しい大永氏が創立しました。私自身、IoTやロボットが次の大きな産業の波となる予感を感じており、今後はシリコンバレーと日本を繋ぐビジネス展開が増えてくると考え、関連イベントに出席してはブログという形による情報の共有を行っています。これからもシリコンバレーと日本の架け橋として発信していきます。
岡田朋之
シリコンバレーロボティックスは、5年ほど前に設立された非営利団体。SRIインターナショナルでロボット研究開発を主導しているDr. Rich Mahoney氏がプレジデント、Andra Keay氏をマネージングディレクターとして、シリコンバレーでの様々なロボット啓蒙活動を行っています。最近も、パロアルトで毎年恒例のロボットブロックパーティーを主催、ロボット関連の色々なスタートアップ企業や学生が成果を展示するなど、多くの子供連れが訪れて賑わいました。その他にも、スタンフォード大学やサンフランシスコではセミナーやパネルセッションを開いたり、Willow Garageに代表されるシリコンバレーのロボット起業家達が情報を共有したり、協業を模索したりする機会を提供しています。
今回のロボット投資家フォーラムでは、冒頭、植毛治療で活躍するロボット企業Restoration Roboticsに投資をしているベンチャーキャピタル、Clarus Venturesのパートナーの一人Emmet Cunningham 医学博士が、医療用ロボットの投資環境について語り、その他ベンチャー企業やスタートアップの起業家達がベンチャーキャピタルやコンサルタントの方々に向けてプレゼンテーションを行いました。
Restoration Roboticsは起業して12年、4年前から投資を開始したClarus Ventures によると、今後2年間で黒字化できるだろうと言う事です。この分野の投資というのは、医療機器認可に時間がかかることもあり、まさに腰を据えての投資になります。医療ロボットは、認可や特許の取得により競合他社に対して参入障壁を築くことができ、また “かみそりの刃を売るビジネスモデル”で展開できるので、後のリターンが大きいと説明していました。これに比べてコンシューマ向けの製品やロボット(例えば、ドローンなど)は、技術がこなれており誰でも比較的簡単に起業が可能で、初期投資も少なくて良い。その代わりに、参入障壁の低さから起業後に過当競争に巻き込まれるリスクがあると、両ロボット分野の比較をしていました。
また、今まで産業用が主流であったロボットの技術が、ビッグデータ、センサー、人工知能の技術などを融合して、サービスロボットに展開されてきていること。これまでの産業用ロボットが累積で数百万台しか作られてきていないのに対して、サービスロボットはその何十倍、何百倍のマーケットサイズになるだろうと語っていました。さらに、人間型ゼネラルロボットの登場はまだまだ数十年以上先の話なので、当面は様々なアプリケーションに特化したロボットが、医療やサービスの世界に登場してくると考えているそうです。
人のできない、もしくは不得意なことをさせるという観点から、サービスロボットにはマーケットのニーズを優先に考え、技術ありきではなく、いかに人の生活を向上できるかということが求められます。それらを最低限のコストで製品やサービスとして提供することが重要であり、また自社の強みを明確にする必要もあると考えます。一方で、ロボットの定義がIoTのデバイスと重複したり、境界があいまいになってきたりしています。日本では、特に私の世代では、ロボットというと鉄腕アトムやガンダムが頭に浮かびますが、ニーズありきで柔軟に考えて行くことが重要だと感じました。
今回のフォーラム後半では、複数の起業家のプレゼンテーションがありましたが、一部を下記に紹介します。
Savioke (www.savioke.com) ホテルの巡回サービスロボット。元Willow GarageのSteve Cousinsが起業。Series Aの投資を受ける準備中。
Rational Robotics (http://rationalrobotics.azurewebsites.net/) 車修理用塗装ロボット。カナダの会社で一台。
Wall-e Vineyard Pruning Robot:フランスで開発された、ワイナリー用、ブドウ摘みロボット。
Flutter Wireless (http://www.flutterwireless.com/): 1キロメートル離れても通信可能なArduino的モジュール
Dash Robot (http://dashrobotics.com/):教育用ロボット製作キット
Krtkl (http://krtkl.com/): ロボット、IoT機器開発用モジュールロボットやIoTのマーケットが広がるにつれて、最終製品を作る会社だけではなく、ツールや部品を作る会社も多く出てきており、 また、日本政府がNEDOなどを通じてロボット技術の活用に重きを置いているということから、ロボットとIoTというキーワードを中心に、今後のこういったスタートアップ企業の活躍が期待されます。
最近私が入会した非営利団体JABI(Japan America Business Initiative
岡田朋之
Tuesday, May 26, 2015
IoT: Internet of Thingsについて
シリコンバレーでは、この数年で “IoT物のインターネット“ という言葉が飛び交うようになりました。2000年代には、Web2.0でGoogle, Facebookなどのソーシャルメディアが台頭し、2010年以降からはビッグデータとAI解析を活用したアドテックや、メッセージング・サービスやUberなどの新たなサービスが出てきました。これらはストレージコストとインターネットの通信コストが極限的にFree (クリスアンダーソンのフリー参照) に近づく事で実現可能となったと思います。では、今、どうしてIoTなのでしょう?
これはMakers Faire などから始まったMakers Movementにも関連があります。Makers Movementのおかげで、過去数年の間に、安価な3DプリンターやArduinoなどが登場し、ハードウェアを作るコストが飛躍的に下がりました。そこにKickstarterやIndiegogoなどのソーシャル投資の仕組み、AngelListに見られるシード投資の仕組み、そして、TechShopやPlug and Playなどのインキュベーションセンターやさまざまなアクセレレータ(Y-combinator, 500 Startup, Techstars)が加わり、ハードウェアとクラウドを活用した新たな商品ビジネスが、竹の子のように出現している現実があります。
今までのIoTというと、いわゆるM2M(Machine to Machine)といわれる、モデムでデータを送る産業用のアプリケーションが主流でした。例えばトラックのフリートマネジメントや電気、ガスメータのモニタリングなど、携帯事業者と既存のインフラ事業での活用です。それがここにきて、一般消費者向けの商品や、医療や教育などさまざまな産業への活用が始まっています。
前回のブログで人工知能について書きましたが、人工知能がつながる神経が通信インフラ、記憶装置がデータセンターだとすると、感覚器官(目、耳、鼻、口、皮膚)にあたるのがIoTの端末で、将来はあらゆる物がネットワークにつながり、人工知能の特徴抽出機能によってデータの有効利用が可能になると考えられます。地球全体が感覚を持って覚醒するというイメージでしょうか。
IoTのエッジ(端末センサーなど)には、ありとあらゆるものが考えられ、どのセンサー・データをどう利用すれば付加価値が上がるのか、既存の方法をいかに効率化できるのか、データを活用して新たなビジネスを生み出せるのか等が、多くの試行錯誤と競争によって生み出されていくと考えられます。現在話題になっている分野には、ウェアラブルやスマートホーム、医療モニター機器、農業オートメーション機器、ドローンなどに代表されるロボット等がありますが、多くの新規事業や新製品がここ、シリコンバレーのエコシステムから生まれています。
また最近は、ハードウェアのスタートアップを見出し、消費者向けに大量生産をするインキュベータが多数出てきており、シリコンバレーではPCHのHighway1やAndroid OSの父Andy Rubinが始めたPlayground Globalなどがあります。これらのインキュベーションセンターを通して世の中に受け入れられる製品が見つかると、多数の企業が参入し世の中に製品が広がって行きます。またファブレスの半導体企業もASSPだけではなく、さまざまなセミカスタムチップをロングテールの各分野に対して、安価に高性能なものを提供する動きが出てきます。 こういった一見、無関係に消える様々な動きが有機的にIoTという未来の製品に不可欠となる要素の具体化を加速させているようにみえます。
JABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIとIoTが社会に組み込まれていく際に、これらの専門家の知識や経験及びグローバルなビジネスネットワークが、皆様の新規事業開発に役立って行くと思います。
岡田朋之
これはMakers Faire などから始まったMakers Movementにも関連があります。Makers Movementのおかげで、過去数年の間に、安価な3DプリンターやArduinoなどが登場し、ハードウェアを作るコストが飛躍的に下がりました。そこにKickstarterやIndiegogoなどのソーシャル投資の仕組み、AngelListに見られるシード投資の仕組み、そして、TechShopやPlug and Playなどのインキュベーションセンターやさまざまなアクセレレータ(Y-combinator, 500 Startup, Techstars)が加わり、ハードウェアとクラウドを活用した新たな商品ビジネスが、竹の子のように出現している現実があります。
今までのIoTというと、いわゆるM2M(Machine to Machine)といわれる、モデムでデータを送る産業用のアプリケーションが主流でした。例えばトラックのフリートマネジメントや電気、ガスメータのモニタリングなど、携帯事業者と既存のインフラ事業での活用です。それがここにきて、一般消費者向けの商品や、医療や教育などさまざまな産業への活用が始まっています。
前回のブログで人工知能について書きましたが、人工知能がつながる神経が通信インフラ、記憶装置がデータセンターだとすると、感覚器官(目、耳、鼻、口、皮膚)にあたるのがIoTの端末で、将来はあらゆる物がネットワークにつながり、人工知能の特徴抽出機能によってデータの有効利用が可能になると考えられます。地球全体が感覚を持って覚醒するというイメージでしょうか。
IoTのエッジ(端末センサーなど)には、ありとあらゆるものが考えられ、どのセンサー・データをどう利用すれば付加価値が上がるのか、既存の方法をいかに効率化できるのか、データを活用して新たなビジネスを生み出せるのか等が、多くの試行錯誤と競争によって生み出されていくと考えられます。現在話題になっている分野には、ウェアラブルやスマートホーム、医療モニター機器、農業オートメーション機器、ドローンなどに代表されるロボット等がありますが、多くの新規事業や新製品がここ、シリコンバレーのエコシステムから生まれています。
また最近は、ハードウェアのスタートアップを見出し、消費者向けに大量生産をするインキュベータが多数出てきており、シリコンバレーではPCHのHighway1やAndroid OSの父Andy Rubinが始めたPlayground Globalなどがあります。これらのインキュベーションセンターを通して世の中に受け入れられる製品が見つかると、多数の企業が参入し世の中に製品が広がって行きます。またファブレスの半導体企業もASSPだけではなく、さまざまなセミカスタムチップをロングテールの各分野に対して、安価に高性能なものを提供する動きが出てきます。 こういった一見、無関係に消える様々な動きが有機的にIoTという未来の製品に不可欠となる要素の具体化を加速させているようにみえます。
JABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIとIoTが社会に組み込まれていく際に、これらの専門家の知識や経験及びグローバルなビジネスネットワークが、皆様の新規事業開発に役立って行くと思います。
岡田朋之
Tuesday, May 5, 2015
「シリコンバレーと架け橋を」について
カリフォルニア州のイノベーション産業集積地であり、アメリカにおける起業の中心でもあるシリコンバレー。日本中小企業米国進出ビジネス支援非営利団体JABI (Japan America Business Initiatives) は、そんなシリコンバレーに住む日本人仲間が集まり2010年に発足した。地域の優秀な人材が集まることで、より効率良く相乗効果を持ち、エネルギッシュかつスピーディーにアメリカ進出希望企業の支援を行う事が可能となり、日本発のビジネスの活性化を図れると考えたわけである。
その後、アメリカ進出の勧めを日本各地でアピールして回ったが、当時の日本はITバブル崩壊の後遺症もあり、「世界の工場 - 中国」一色であった。「世界の動きに乗り遅れるな。」と言わんばかりに、中国やベトナムをはじめとするアジアへの進出が目立ち、自社製品を世界で通じる製品にするためのイノベーティブな開発やビジネスのしくみの創造よりも中国進出による生産コストの削減、そして即売り上げにつながる大きな中国市場での新規販売という短期戦略が多かった。
やがて、中国での人件の高騰、従業員維持の困難性の問題などが浮上し、インドやアフリカへの移行が始まった。加えて、アメリカも国を挙げてITに続く産業の構築の必要性に火が付き、日本からのアメリカ進出が増えようとしていた。その時、あの悲惨な地震・津波災害、そして、原発問題が発生した。その頃JABIと提携を結ぶ矢先であった東北某県との対話も頓挫してしまったのである。
しかし、被災地復興も進み、最近では日本からの学生、インターン、起業家のシリコンバレー訪問・進出の増加が顕著となってきている。そのような勢いを感じる中で、安倍首相のシリコンバレー視察があり、首相による「シリコンバレーと架け橋を」プロジェクトが発表された。今後5年間で日本の中小・ベンチャー企業200社の進出を促進するという内容である。「日本が企業や人をどんどんシリコンバレーに送り込む必要性を感じた。(以下省略)」と、記者団にコメントしている。
これらは、まさにJABIや当地で活躍されている経済界の方々が常に主張してきたことだ。一国の首相によるシリコンバレー視察が実現するまでこのような大きな決断がなされなかったのは残念であるが、シリコンバレーに住む日本人達にとっては、日本の活力の増大に繋がるのではないかと、大いに期待されるところである。
JABIの会員は各々異なった専門分野で仕事をしているが、それぞれの米国滞在経験を生かし、協力しあいながら、日本からの米国進出を考えている方々の為に支援を提供していきたいと考えている。今回の首相訪問や発言は、そんな我々の考えを一層強く深めたニュースであった。
大永英明
その後、アメリカ進出の勧めを日本各地でアピールして回ったが、当時の日本はITバブル崩壊の後遺症もあり、「世界の工場 - 中国」一色であった。「世界の動きに乗り遅れるな。」と言わんばかりに、中国やベトナムをはじめとするアジアへの進出が目立ち、自社製品を世界で通じる製品にするためのイノベーティブな開発やビジネスのしくみの創造よりも中国進出による生産コストの削減、そして即売り上げにつながる大きな中国市場での新規販売という短期戦略が多かった。
やがて、中国での人件の高騰、従業員維持の困難性の問題などが浮上し、インドやアフリカへの移行が始まった。加えて、アメリカも国を挙げてITに続く産業の構築の必要性に火が付き、日本からのアメリカ進出が増えようとしていた。その時、あの悲惨な地震・津波災害、そして、原発問題が発生した。その頃JABIと提携を結ぶ矢先であった東北某県との対話も頓挫してしまったのである。
しかし、被災地復興も進み、最近では日本からの学生、インターン、起業家のシリコンバレー訪問・進出の増加が顕著となってきている。そのような勢いを感じる中で、安倍首相のシリコンバレー視察があり、首相による「シリコンバレーと架け橋を」プロジェクトが発表された。今後5年間で日本の中小・ベンチャー企業200社の進出を促進するという内容である。「日本が企業や人をどんどんシリコンバレーに送り込む必要性を感じた。(以下省略)」と、記者団にコメントしている。
これらは、まさにJABIや当地で活躍されている経済界の方々が常に主張してきたことだ。一国の首相によるシリコンバレー視察が実現するまでこのような大きな決断がなされなかったのは残念であるが、シリコンバレーに住む日本人達にとっては、日本の活力の増大に繋がるのではないかと、大いに期待されるところである。
JABIの会員は各々異なった専門分野で仕事をしているが、それぞれの米国滞在経験を生かし、協力しあいながら、日本からの米国進出を考えている方々の為に支援を提供していきたいと考えている。今回の首相訪問や発言は、そんな我々の考えを一層強く深めたニュースであった。
大永英明
Sunday, May 3, 2015
人工知能(AI: Artificial Intelligence)についての考察
最近、シリコンバレーで開催された東京大学の松尾先生の人工知能のセミナーに参加しました。
人工知能の研究開発の歴史及び最近のディープラーニングにおけるブレークスルーについて説明されましたが、特にフレーム問題が従来の人によるエントリーから、ニューラルネットワークを利用しデータを元に特徴量を作る事で、機械学習から表現学習が可能になり、現在の第三次AIブームがこの数年で始まった事を学びました。昨今の半導体(GPU)やメモリー(コスト)の進歩により、100個ものGPUを並列に使った演算が可能となり、人工知能による自動的な表現学習が可能となったわけです。
人工知能は、特に人間が前頭野大脳皮質で行う、学習や選択判断などの機能に向いており、人の能力を簡単に超えてしまう事ができます。人が進化の過程で淘汰圧によって獲得してきた脳のさまざまな機能(例えば大脳辺縁系)や感情については、自己学習はできないものの、人が行動特性を人工知能にプログラムする事で、機械だとはわからないほどのレスポンスをさせる事が可能になると考えられます。
今後、人工知能がビックデータを利用して、マルチモーダルな認識、行動とプランニング機能、言語理解などの機能を獲得し、さまざまな産業の自動化(自動運転、ロボット)から人との対話までを含め、社会への進出がものすごい勢いで進んで行くと推測できます。現在の人間の仕事はどんどん人工知能にとってかわり、人間の仕事はよりクリエイティブなもの、感情が大事なもの(接客や営業)などに限られて行くかも知れません。
問題は技術進化のスピードが速すぎて社会がついていけない状況になりつつある事です。一昔前までの人の仕事や役割の変化は、ジェネレーション毎に入れ替わったのが(例えば産業革命によって農業から工業に仕事が変化)、今後は5年10年のスパンで変化するため、社会構造、富の分配、権力構造、政治などさまざまな分野に多大な影響が出てくると思われます。例えば人工知能を使う企業や一部のエリートに富と権力が一極集中するのは容易に想像ができます。技術の進化に合わせて、社会の仕組みをうまく変化させることにより、人工知能の効果を最大限化するとともに、弊害を防止する努力が必要になってきます。
人工知能の研究は過去に日本が政府主導で数百億円の投資をして進めた経緯もあり、世界に比べて圧倒的に(世界の10分の1以上の)多くの人工知能のエキスパートや人材が日本には存在するという事ですが、日本の文化や社会資本主義的な特徴を利用して、人工知能の平等利用などに取り組み世界に先駆けてリーダーシップをとるチャンスが来ているとも考えられます。政府主導で人工知能の技術をさまざまな社会インフラやバーチカルに活用し、ここの産業で進めるより効率的に活用できる強みもあります。
ただし、やはりシリコンバレーの多産多死の起業文化やエコシステムには、いわゆる意のベータズジレンマを超越する強みがあり、虫が蛹になって変態によって成虫になるように、人材を適材適所に、可能性の高い分野にすばやく再配置して行く仕組みは、技術利用による新たな産業作りには圧倒的な優位性があると考えます。
そこで重要になってくるのは、シリコンバレーの企業と連携して高速な進化の取り込みをし、人工知能における日本のリーダーシップを維持して行く事、人類の未来について強い使命感を持って平和的、平等的な人工知能の社会への導入を推進して行く事ではないでしょうか。
最近私が入会したJABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIの今後のシリコンバレーの状況について各専門分野からの意見もお聞きして発信しいければと思います。次回は昨今話題のIoTについてシリコンバレー視点からお話させていただきたいと思います。
岡田朋之
人工知能の研究開発の歴史及び最近のディープラーニングにおけるブレークスルーについて説明されましたが、特にフレーム問題が従来の人によるエントリーから、ニューラルネットワークを利用しデータを元に特徴量を作る事で、機械学習から表現学習が可能になり、現在の第三次AIブームがこの数年で始まった事を学びました。昨今の半導体(GPU)やメモリー(コスト)の進歩により、100個ものGPUを並列に使った演算が可能となり、人工知能による自動的な表現学習が可能となったわけです。
人工知能は、特に人間が前頭野大脳皮質で行う、学習や選択判断などの機能に向いており、人の能力を簡単に超えてしまう事ができます。人が進化の過程で淘汰圧によって獲得してきた脳のさまざまな機能(例えば大脳辺縁系)や感情については、自己学習はできないものの、人が行動特性を人工知能にプログラムする事で、機械だとはわからないほどのレスポンスをさせる事が可能になると考えられます。
今後、人工知能がビックデータを利用して、マルチモーダルな認識、行動とプランニング機能、言語理解などの機能を獲得し、さまざまな産業の自動化(自動運転、ロボット)から人との対話までを含め、社会への進出がものすごい勢いで進んで行くと推測できます。現在の人間の仕事はどんどん人工知能にとってかわり、人間の仕事はよりクリエイティブなもの、感情が大事なもの(接客や営業)などに限られて行くかも知れません。
問題は技術進化のスピードが速すぎて社会がついていけない状況になりつつある事です。一昔前までの人の仕事や役割の変化は、ジェネレーション毎に入れ替わったのが(例えば産業革命によって農業から工業に仕事が変化)、今後は5年10年のスパンで変化するため、社会構造、富の分配、権力構造、政治などさまざまな分野に多大な影響が出てくると思われます。例えば人工知能を使う企業や一部のエリートに富と権力が一極集中するのは容易に想像ができます。技術の進化に合わせて、社会の仕組みをうまく変化させることにより、人工知能の効果を最大限化するとともに、弊害を防止する努力が必要になってきます。
人工知能の研究は過去に日本が政府主導で数百億円の投資をして進めた経緯もあり、世界に比べて圧倒的に(世界の10分の1以上の)多くの人工知能のエキスパートや人材が日本には存在するという事ですが、日本の文化や社会資本主義的な特徴を利用して、人工知能の平等利用などに取り組み世界に先駆けてリーダーシップをとるチャンスが来ているとも考えられます。政府主導で人工知能の技術をさまざまな社会インフラやバーチカルに活用し、ここの産業で進めるより効率的に活用できる強みもあります。
ただし、やはりシリコンバレーの多産多死の起業文化やエコシステムには、いわゆる意のベータズジレンマを超越する強みがあり、虫が蛹になって変態によって成虫になるように、人材を適材適所に、可能性の高い分野にすばやく再配置して行く仕組みは、技術利用による新たな産業作りには圧倒的な優位性があると考えます。
そこで重要になってくるのは、シリコンバレーの企業と連携して高速な進化の取り込みをし、人工知能における日本のリーダーシップを維持して行く事、人類の未来について強い使命感を持って平和的、平等的な人工知能の社会への導入を推進して行く事ではないでしょうか。
最近私が入会したJABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIの今後のシリコンバレーの状況について各専門分野からの意見もお聞きして発信しいければと思います。次回は昨今話題のIoTについてシリコンバレー視点からお話させていただきたいと思います。
岡田朋之
Saturday, April 25, 2015
第12回JABI Salon 講演会報告
第12回 JABI Salonが (本年)4月10日に開催された。アメリカ出張中であったマッスル社(大阪)のエンジニア、一ノ瀬大志郎氏、岡部有棋氏により「介護ロボットの必要性」の演題にて講演が行われた。
日本では、2010年から2025年までの15年間で65歳以上の高齢者は約709万人増加し、総人口に占める高齢者の割合が23%から30%に大幅上昇すると予測されているらしい。そのため、介護職員の数は2010年の150万人から2025年には240万人が必要とされ、また、現在でも介護職員の7割が腰痛を抱えているという現場の負担を軽減する必要がある。このような必要性から、介護ロボット「サスケ」は開発された。
経産省と厚労省によって重点的に開発支援する分野として特定されたのは、移乗介助、移動支援、排泄支援、認知症の見守り、入浴支援がある。マッスル社では、その中でも移乗介助と排泄支援を主としたロボット事業を展開している。
世界の中でも日本が高齢化社会突入の先頭を走っており、2060年には世界に先駆けて人口の40%が高齢者になると「高齢者白書2012年」で推測されている。世界に先駆けて高齢化社会問題に突入する日本であるからこそ、その解決法のハードとソフトの開発が世界の注目を浴びる課題であることを身近に感じる講演であった。かくいう筆者も高齢者の範疇に近くなってきたので、多少なりともシリアスで興味深いテーマであった。
資料


大永英明
日本では、2010年から2025年までの15年間で65歳以上の高齢者は約709万人増加し、総人口に占める高齢者の割合が23%から30%に大幅上昇すると予測されているらしい。そのため、介護職員の数は2010年の150万人から2025年には240万人が必要とされ、また、現在でも介護職員の7割が腰痛を抱えているという現場の負担を軽減する必要がある。このような必要性から、介護ロボット「サスケ」は開発された。
経産省と厚労省によって重点的に開発支援する分野として特定されたのは、移乗介助、移動支援、排泄支援、認知症の見守り、入浴支援がある。マッスル社では、その中でも移乗介助と排泄支援を主としたロボット事業を展開している。
世界の中でも日本が高齢化社会突入の先頭を走っており、2060年には世界に先駆けて人口の40%が高齢者になると「高齢者白書2012年」で推測されている。世界に先駆けて高齢化社会問題に突入する日本であるからこそ、その解決法のハードとソフトの開発が世界の注目を浴びる課題であることを身近に感じる講演であった。かくいう筆者も高齢者の範疇に近くなってきたので、多少なりともシリアスで興味深いテーマであった。
資料



大永英明
Subscribe to:
Posts (Atom)