カリフォルニア州のイノベーション産業集積地であり、アメリカにおける起業の中心でもあるシリコンバレー。日本中小企業米国進出ビジネス支援非営利団体JABI (Japan America Business Initiatives) は、そんなシリコンバレーに住む日本人仲間が集まり2010年に発足した。地域の優秀な人材が集まることで、より効率良く相乗効果を持ち、エネルギッシュかつスピーディーにアメリカ進出希望企業の支援を行う事が可能となり、日本発のビジネスの活性化を図れると考えたわけである。
その後、アメリカ進出の勧めを日本各地でアピールして回ったが、当時の日本はITバブル崩壊の後遺症もあり、「世界の工場 - 中国」一色であった。「世界の動きに乗り遅れるな。」と言わんばかりに、中国やベトナムをはじめとするアジアへの進出が目立ち、自社製品を世界で通じる製品にするためのイノベーティブな開発やビジネスのしくみの創造よりも中国進出による生産コストの削減、そして即売り上げにつながる大きな中国市場での新規販売という短期戦略が多かった。
やがて、中国での人件の高騰、従業員維持の困難性の問題などが浮上し、インドやアフリカへの移行が始まった。加えて、アメリカも国を挙げてITに続く産業の構築の必要性に火が付き、日本からのアメリカ進出が増えようとしていた。その時、あの悲惨な地震・津波災害、そして、原発問題が発生した。その頃JABIと提携を結ぶ矢先であった東北某県との対話も頓挫してしまったのである。
しかし、被災地復興も進み、最近では日本からの学生、インターン、起業家のシリコンバレー訪問・進出の増加が顕著となってきている。そのような勢いを感じる中で、安倍首相のシリコンバレー視察があり、首相による「シリコンバレーと架け橋を」プロジェクトが発表された。今後5年間で日本の中小・ベンチャー企業200社の進出を促進するという内容である。「日本が企業や人をどんどんシリコンバレーに送り込む必要性を感じた。(以下省略)」と、記者団にコメントしている。
これらは、まさにJABIや当地で活躍されている経済界の方々が常に主張してきたことだ。一国の首相によるシリコンバレー視察が実現するまでこのような大きな決断がなされなかったのは残念であるが、シリコンバレーに住む日本人達にとっては、日本の活力の増大に繋がるのではないかと、大いに期待されるところである。
JABIの会員は各々異なった専門分野で仕事をしているが、それぞれの米国滞在経験を生かし、協力しあいながら、日本からの米国進出を考えている方々の為に支援を提供していきたいと考えている。今回の首相訪問や発言は、そんな我々の考えを一層強く深めたニュースであった。
大永英明
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