Thursday, May 28, 2015

ロボット投資家フォーラム

去る5月6日、パロアルトのSRIインターナショナルで開催されたシリコンバレーロボティックス(SVR )主催のロボット投資家フォーラムに参加してきました。

シリコンバレーロボティックスは、5年ほど前に設立された非営利団体。SRIインターナショナルでロボット研究開発を主導しているDr. Rich Mahoney氏がプレジデント、Andra Keay氏をマネージングディレクターとして、シリコンバレーでの様々なロボット啓蒙活動を行っています。最近も、パロアルトで毎年恒例のロボットブロックパーティーを主催、ロボット関連の色々なスタートアップ企業や学生が成果を展示するなど、多くの子供連れが訪れて賑わいました。その他にも、スタンフォード大学やサンフランシスコではセミナーやパネルセッションを開いたり、Willow Garageに代表されるシリコンバレーのロボット起業家達が情報を共有したり、協業を模索したりする機会を提供しています。

今回のロボット投資家フォーラムでは、冒頭、植毛治療で活躍するロボット企業Restoration Roboticsに投資をしているベンチャーキャピタル、Clarus Venturesのパートナーの一人Emmet Cunningham 医学博士が、医療用ロボットの投資環境について語り、その他ベンチャー企業やスタートアップの起業家達がベンチャーキャピタルやコンサルタントの方々に向けてプレゼンテーションを行いました。

Restoration Roboticsは起業して12年、4年前から投資を開始したClarus Ventures によると、今後2年間で黒字化できるだろうと言う事です。この分野の投資というのは、医療機器認可に時間がかかることもあり、まさに腰を据えての投資になります。医療ロボットは、認可や特許の取得により競合他社に対して参入障壁を築くことができ、また “かみそりの刃を売るビジネスモデル”で展開できるので、後のリターンが大きいと説明していました。これに比べてコンシューマ向けの製品やロボット(例えば、ドローンなど)は、技術がこなれており誰でも比較的簡単に起業が可能で、初期投資も少なくて良い。その代わりに、参入障壁の低さから起業後に過当競争に巻き込まれるリスクがあると、両ロボット分野の比較をしていました。

また、今まで産業用が主流であったロボットの技術が、ビッグデータ、センサー、人工知能の技術などを融合して、サービスロボットに展開されてきていること。これまでの産業用ロボットが累積で数百万台しか作られてきていないのに対して、サービスロボットはその何十倍、何百倍のマーケットサイズになるだろうと語っていました。さらに、人間型ゼネラルロボットの登場はまだまだ数十年以上先の話なので、当面は様々なアプリケーションに特化したロボットが、医療やサービスの世界に登場してくると考えているそうです。

人のできない、もしくは不得意なことをさせるという観点から、サービスロボットにはマーケットのニーズを優先に考え、技術ありきではなく、いかに人の生活を向上できるかということが求められます。それらを最低限のコストで製品やサービスとして提供することが重要であり、また自社の強みを明確にする必要もあると考えます。一方で、ロボットの定義がIoTのデバイスと重複したり、境界があいまいになってきたりしています。日本では、特に私の世代では、ロボットというと鉄腕アトムやガンダムが頭に浮かびますが、ニーズありきで柔軟に考えて行くことが重要だと感じました。

今回のフォーラム後半では、複数の起業家のプレゼンテーションがありましたが、一部を下記に紹介します。

Savioke (www.savioke.com) ホテルの巡回サービスロボット。元Willow GarageのSteve Cousinsが起業。Series Aの投資を受ける準備中。
Rational Robotics (http://rationalrobotics.azurewebsites.net/) 車修理用塗装ロボット。カナダの会社で一台。
Wall-e Vineyard Pruning Robot:フランスで開発された、ワイナリー用、ブドウ摘みロボット。
Flutter Wireless (http://www.flutterwireless.com/): 1キロメートル離れても通信可能なArduino的モジュール
Dash Robot (http://dashrobotics.com/):教育用ロボット製作キット
Krtkl (http://krtkl.com/): ロボット、IoT機器開発用モジュール
ロボットやIoTのマーケットが広がるにつれて、最終製品を作る会社だけではなく、ツールや部品を作る会社も多く出てきており、 また、日本政府がNEDOなどを通じてロボット技術の活用に重きを置いているということから、ロボットとIoTというキーワードを中心に、今後のこういったスタートアップ企業の活躍が期待されます。

最近私が入会した非営利団体JABI(Japan America Business Initiative )は、ロボット業界の聡明期からロボット開発に取り組み、当業界には大変詳しい大永氏が創立しました。私自身、IoTやロボットが次の大きな産業の波となる予感を感じており、今後はシリコンバレーと日本を繋ぐビジネス展開が増えてくると考え、関連イベントに出席してはブログという形による情報の共有を行っています。これからもシリコンバレーと日本の架け橋として発信していきます。

岡田朋之

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