Sunday, May 3, 2015

人工知能(AI: Artificial Intelligence)についての考察

最近、シリコンバレーで開催された東京大学の松尾先生の人工知能のセミナーに参加しました。
人工知能の研究開発の歴史及び最近のディープラーニングにおけるブレークスルーについて説明されましたが、特にフレーム問題が従来の人によるエントリーから、ニューラルネットワークを利用しデータを元に特徴量を作る事で、機械学習から表現学習が可能になり、現在の第三次AIブームがこの数年で始まった事を学びました。昨今の半導体(GPU)やメモリー(コスト)の進歩により、100個ものGPUを並列に使った演算が可能となり、人工知能による自動的な表現学習が可能となったわけです。

人工知能は、特に人間が前頭野大脳皮質で行う、学習や選択判断などの機能に向いており、人の能力を簡単に超えてしまう事ができます。人が進化の過程で淘汰圧によって獲得してきた脳のさまざまな機能(例えば大脳辺縁系)や感情については、自己学習はできないものの、人が行動特性を人工知能にプログラムする事で、機械だとはわからないほどのレスポンスをさせる事が可能になると考えられます。

今後、人工知能がビックデータを利用して、マルチモーダルな認識、行動とプランニング機能、言語理解などの機能を獲得し、さまざまな産業の自動化(自動運転、ロボット)から人との対話までを含め、社会への進出がものすごい勢いで進んで行くと推測できます。現在の人間の仕事はどんどん人工知能にとってかわり、人間の仕事はよりクリエイティブなもの、感情が大事なもの(接客や営業)などに限られて行くかも知れません。

問題は技術進化のスピードが速すぎて社会がついていけない状況になりつつある事です。一昔前までの人の仕事や役割の変化は、ジェネレーション毎に入れ替わったのが(例えば産業革命によって農業から工業に仕事が変化)、今後は5年10年のスパンで変化するため、社会構造、富の分配、権力構造、政治などさまざまな分野に多大な影響が出てくると思われます。例えば人工知能を使う企業や一部のエリートに富と権力が一極集中するのは容易に想像ができます。技術の進化に合わせて、社会の仕組みをうまく変化させることにより、人工知能の効果を最大限化するとともに、弊害を防止する努力が必要になってきます。

人工知能の研究は過去に日本が政府主導で数百億円の投資をして進めた経緯もあり、世界に比べて圧倒的に(世界の10分の1以上の)多くの人工知能のエキスパートや人材が日本には存在するという事ですが、日本の文化や社会資本主義的な特徴を利用して、人工知能の平等利用などに取り組み世界に先駆けてリーダーシップをとるチャンスが来ているとも考えられます。政府主導で人工知能の技術をさまざまな社会インフラやバーチカルに活用し、ここの産業で進めるより効率的に活用できる強みもあります。

ただし、やはりシリコンバレーの多産多死の起業文化やエコシステムには、いわゆる意のベータズジレンマを超越する強みがあり、虫が蛹になって変態によって成虫になるように、人材を適材適所に、可能性の高い分野にすばやく再配置して行く仕組みは、技術利用による新たな産業作りには圧倒的な優位性があると考えます。

そこで重要になってくるのは、シリコンバレーの企業と連携して高速な進化の取り込みをし、人工知能における日本のリーダーシップを維持して行く事、人類の未来について強い使命感を持って平和的、平等的な人工知能の社会への導入を推進して行く事ではないでしょうか。

最近私が入会したJABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIの今後のシリコンバレーの状況について各専門分野からの意見もお聞きして発信しいければと思います。次回は昨今話題のIoTについてシリコンバレー視点からお話させていただきたいと思います。

岡田朋之

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