シリコンバレーでは、この数年で “IoT物のインターネット“ という言葉が飛び交うようになりました。2000年代には、Web2.0でGoogle, Facebookなどのソーシャルメディアが台頭し、2010年以降からはビッグデータとAI解析を活用したアドテックや、メッセージング・サービスやUberなどの新たなサービスが出てきました。これらはストレージコストとインターネットの通信コストが極限的にFree (クリスアンダーソンのフリー参照) に近づく事で実現可能となったと思います。では、今、どうしてIoTなのでしょう?
これはMakers Faire などから始まったMakers Movementにも関連があります。Makers Movementのおかげで、過去数年の間に、安価な3DプリンターやArduinoなどが登場し、ハードウェアを作るコストが飛躍的に下がりました。そこにKickstarterやIndiegogoなどのソーシャル投資の仕組み、AngelListに見られるシード投資の仕組み、そして、TechShopやPlug and Playなどのインキュベーションセンターやさまざまなアクセレレータ(Y-combinator, 500 Startup, Techstars)が加わり、ハードウェアとクラウドを活用した新たな商品ビジネスが、竹の子のように出現している現実があります。
今までのIoTというと、いわゆるM2M(Machine to Machine)といわれる、モデムでデータを送る産業用のアプリケーションが主流でした。例えばトラックのフリートマネジメントや電気、ガスメータのモニタリングなど、携帯事業者と既存のインフラ事業での活用です。それがここにきて、一般消費者向けの商品や、医療や教育などさまざまな産業への活用が始まっています。
前回のブログで人工知能について書きましたが、人工知能がつながる神経が通信インフラ、記憶装置がデータセンターだとすると、感覚器官(目、耳、鼻、口、皮膚)にあたるのがIoTの端末で、将来はあらゆる物がネットワークにつながり、人工知能の特徴抽出機能によってデータの有効利用が可能になると考えられます。地球全体が感覚を持って覚醒するというイメージでしょうか。
IoTのエッジ(端末センサーなど)には、ありとあらゆるものが考えられ、どのセンサー・データをどう利用すれば付加価値が上がるのか、既存の方法をいかに効率化できるのか、データを活用して新たなビジネスを生み出せるのか等が、多くの試行錯誤と競争によって生み出されていくと考えられます。現在話題になっている分野には、ウェアラブルやスマートホーム、医療モニター機器、農業オートメーション機器、ドローンなどに代表されるロボット等がありますが、多くの新規事業や新製品がここ、シリコンバレーのエコシステムから生まれています。
また最近は、ハードウェアのスタートアップを見出し、消費者向けに大量生産をするインキュベータが多数出てきており、シリコンバレーではPCHのHighway1やAndroid OSの父Andy Rubinが始めたPlayground Globalなどがあります。これらのインキュベーションセンターを通して世の中に受け入れられる製品が見つかると、多数の企業が参入し世の中に製品が広がって行きます。またファブレスの半導体企業もASSPだけではなく、さまざまなセミカスタムチップをロングテールの各分野に対して、安価に高性能なものを提供する動きが出てきます。
こういった一見、無関係に消える様々な動きが有機的にIoTという未来の製品に不可欠となる要素の具体化を加速させているようにみえます。
JABI(Japan America Business Initiative http://www.jabi-sv.org/pg103.html)にはロボット、半導体、無線技術、バイオなどさまざまな分野のエキスパートがナビゲーター会員として在籍されておりますが、AIとIoTが社会に組み込まれていく際に、これらの専門家の知識や経験及びグローバルなビジネスネットワークが、皆様の新規事業開発に役立って行くと思います。
岡田朋之
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