Monday, February 11, 2019

第24回JABIサロン「日本の農業とテクノロジー」

開会のあいさつ
去る2月1日に本年初のJABI サロンが開催されました。テーマは「日本の農業とテクノロジー」と題して、豊橋技術科学大学 環境・生命工学課程の吉渡匠汰さんに、彼の研究について話をしていただきました。また、講演第2部としては、豊橋技術科学大学環境・生命工学系講師である東海林孝之先生に「CFD(数値流体力学)による植物工場内環境評価」という演題の話をしていただきました。





ロボット業界で仕事をしている私にとっては、高齢化が進んでいる中、製造や物流以外では医療福祉ロボットや農業ロボットが重要な課題であると日頃から思っているので、本テーマは個人的にも非常に興味のあるものでした。


講演する吉渡さん
年々農業従事者の減少・高齢化が進んでいます。農業離れで従業者が減っていくなか、65歳以上の従業者の割合が68%以上を占めています。農林水産省によるデータでは5年以内に離農する40歳未満の就農者は30%にもなるとの説明がありました。このままでは、農業に携わる人たちがいなくなり、日本の食が危うくなるのは簡単に想像できるのではないでしょうか?
よって、日本の農業では、農作業の効率化や自動化が求められており、その内容としては、個人農家が統計学の知識を用いて、効率のよい栽培を行うものから、LED光や人工の二酸化炭素を用いて建物の中で野菜を育てる完全人工光型植物工場まで様々であるとの説明がありました。


スライド
農業において、日照り、温度、湿度、土壌、天候などの環境地が植物の光合成、蒸散、呼吸、発芽などに影響を与えます。農家たちは過去の経験からノウハウとしてそれらを持っています。現状では、それらをデータ化し、植物工場で利用するとか、深層学習で青果物の等級判別を行う等の努力がされていると説明がありました。
農業離れのなか、異業種企業の参入は昔から行われています。しかし、2012年の日本政策金融公庫の調査によると、農業参入企業のうち黒字化した企業は30%でしかないという説明には驚きました。

日本施設園芸協会の調査によると、人工光型植物工業197箇所(2017年2月)のうち、80%は赤字、そして農林水産省の調査によれば2003〜2009年に参入した企業の24%が撤退というデータ結果が出ており、その結果には正直、悲観的な感じがします。

講演に耳を傾ける聴講者
こういった状況のなか、より効率の良い成果が得られるプロセスノウハウが研究されており、シミュレーションによる設備の最適化からIoTの活用による環境モニターを通して将来的には自動化が可能になるかもしれません。

吉渡さんによると、農業の技術で有名なオランダでは農家・企業・大学が連携し、施設園芸や農法に関して研究や実用化が行われているそうです。日本でも農業に参入する企業が増えてきており、ますます農業の工業化による農業の発展を期待したいと思いました。


近年、植物工場にはセンサーを始めとした様々な技術が導入され、農業従事者の経験と勘に頼っていた環境制御を、データに基づいたものに移行する流れが大きくなっています。環境制御の目的は植物工場内の環境(気温、湿度、気流、CO2濃度等)を均一に保ち、作物の安定生産および品質を維持することであるが、植物工場内の環境要素の詳細分布を知ることは一般的には困難であるらしいとのコメントで東海林先生の講演が始まりました。
講演する東海林先生

そこで東海林先生の研究では上記環境要素の詳細な分布をCFDにより予測し、均一化するための方法を調べることをテーマとしており、発表では強制換気型ハウスの気流・熱環境解析のシミュレーションが論じられました。

スライド
地域気象モデル、数値流体力学モデル、植生モデルをもとに構築した植物工場モデルに対して、IoTでモニターしたデータを農学、生物学、化学、電気、コンピューター技術など、様々な分野の知識で環境制御するというのが自動化の最終形態であるという説明でした。








講演して頂いたお二人に感謝状を授与!
しかし、製造業の自動化とは違い、管理できない多くの要素がある農業では、自動化に向けての第一歩が始まったところかなと感じました。人間が生きていく上で一番大事な「食」に関する農業の自動化の話であり、「日本の食」の将来を考えさせられる非常に有意義な講演会でした。

吉渡さん、東海林先生、ありがとうございました。




ナディア会長からのあいさつ
JABI新年会の一コマ

講演の後、JABI新年交流会に転じ、中華料理のテイクアウトやワインを堪能しながら、講演者の二人を囲んで会話が弾んだ金曜日の夕方でした。Happy New Year!

大永英明
Co-Founder, JABI

Tuesday, December 4, 2018

第2回JABI 5UP シリコンバレー研修プログラム トライアルイベント


「JABI 5UP」

2017年12月29日のブログにも書きましたように、本プログラムは、JABI が当地で著名な米国の日系教育支援団体、US-JAPAN FORUM (http://www.usjapanforum.org) の協賛を得て提供する中小企業向けの若手社会人教育、起業家育成プログラムです。

昨年のトライアルと比べ、今回は「日本の伝統的な考え方を突き破って、シリコンバレー風に破壊的なイノベーションやアイデアを創造できる人材育成」を念頭に学生の参加者も含めました。

他団体によるシリコンバレー研修プログラム同様、講義、メンタリング、企業訪問、ネットワーキング、ビジネスプラン発表などの要素が含まれていますが、決定的な違いは1)大きくスケールするビジネスプランを至上とせず、着実に利益を出し、中小企業に必然な世代交代を堅実なビジネスプランで実施し、その次の世代へ繋ぐビジネス理念を構築、そして、2)ピッチコンテストで勝つ(VCのスケール性を評価するという好み)ビジネスプランではなく、誰もが理解できる存続=繁栄といった観点を重視したプランの作成にあります。つまりは、中小企業の旧態依然の自社の文化・体質の改善目標を定めるマインドセットを持つことを目標としています。 

 

来年実施される6日間のフル・プログラムの前にまずはJABI会員、学生、駐在員の方々に参加いただき、本プログラムの理解およびフィードバックをいただこうと、去る11月10日に半日研修体験を目的としたトライアル・イベントをに行いました。

ナビゲーター会員でもあるKimberly Wiefling 女史が出張でオープニングのワークショップができなかったため、彼女のSilicon Valley Allianceのパートナー、Jeff Richardson  とその仲間であるMatt Schlegel氏による「チェンジ」に関するワークショップを兼ねたレクチャーをお願いしました。 







Richardson 氏は教育者として、スタンフォード大学の先進的なプロジェクトマネジメントプログラムのリードデザイナーの一人であり、企業や大学の環境のためのプロジェクトリーダーシッププログラムの設計/指導にも携わっており、いかに困難な問題に挑戦していくかをコーチングしている方です。本セッションのテーマは、いかに新しい考えに対して、習慣や過去の経験による固定概念から脱出して、オープンに受け入れるべきか、実際にワークショップで参加者が体験し、チェンジが難しい事ではないという理解をするというセッションでした。つまり、何かを変えたければ自分が変わらなくてはいけないという体験でした。



 
演習で頭と体をほぐしたあと、前回同様、US-Japan Forumの井手祐二先生による「資金繰り(ビジネススクールで教えない資金繰りのノウハウ)」英語名タイトルはCash Flow (Know-How of Cash Flow Not Taught in Business School)が始まりました。井手先生は、CCD監視カメラ、遠隔病理診断システムの開発販売に携わられていた方で、近年では鹿児島大学北米教育研究センター長兼特任教授、JUNBA(サンフランシスコベイエリア大学間連携ネットワーク)会長などを歴任されています。 

講義内容は(1)企業会計の基礎、(2)キャッシュフローと資金繰り(実践編)そして(3)資金繰りの秘訣(実践編)の三部構成で、彼の起業時のご苦労など、ご自身の体験をもとに解説される話には説得力がありました。今回の参加者は学生さんが多かったので、彼らにとって全てが新鮮であり、多くの質問で溢れました。

「すべては経営者とステークホルダーとの信頼関係です!」という締めの言葉で表されたように、会社の永続という事を考えると、単に株価をあげたり、利益を上げるだけでなく、ビジネスを一緒に行う、株主、投資家、顧客、社員、銀行、仕入先、販売代理店、コーポレートパートナー全員で構築される社会の中で、日頃から良い関係を構築し維持する努力が大事であると、改めて感じました。

その次のセッションは「ワークショップI :ビジネスアイデアの作成演習」でした。ここでは井手先生が提案するビジネス・アイデアメモ用紙を使ってアイデアを整理し、有意義なアイデアに高めるという技能の訓練の仕方を学びました。起業を考えている学生さんたちもいましたが、初めての方が多く、戸惑っている様子でしたが、ビジネスのアイデアをどう構築していくのか体験できたかと思います。


そしてピザ・ランチをしながら、私が講師となり「ワークショップII : JABI風サプライズ演習」を行いました。



参加者を2グループに分け、各グループ内で各自がワークションップIで考えたアイデアのビジネスプランの概略を説明し、グループでアイデアを一本化するという作業を行いました。

アメリカ、特にシリコンバレーにおいては自分の意見を主張する事が非常に重要です。日本の減点方式文化と違い、何も意見を出さず、失点しないのは「セーフ」でなく、「アウト」です。そして、技術およびマーケットの発展・進化の激しい今日、コラボレーションが当たり前というのがシリコンバレーです。当地では、アイデアを持っている人たちでいっぱいです。起業家精神を持っている人たちは我が強く、自分のアイデアの方が優れていると考える傾向があります。ここでは相手を尊重し、自分のアイデアとグループメンバーのアイデアとの相違をニュートラルに議論します。そして、グループの中の一番優れたアイデアに従うのではなく、その採決で選んだアイデアを軸とし、各自のオリジナルのアイデアの部分を足すことによって相乗効果を得る、つまり、コラボレーションを通して、ビジネスプランのレベルを高める事を体験するというのが、このセッションの意図です。イノベーションを起こすには、冒頭のRichardson 氏がいうオープンマインド、そして、コラボレーションを自然に行うといった風土・習慣が必須であると私は考えています。

「マーケットで買えるワインの試飲会」

勉強するには遊びも必要です。今回のエンタメも恒例の「マーケットで買えるワインの試飲会」という名目で、お寿司の松竹梅といった感じで手頃な三階級の値段のワインをブラインドテイスティングをして、どのボトルを飲んだかを当てるというゲームです。今回の3本とはGeorgo’s Mykonos ($23), Line 39 Cabernet Sauvignon ($9.99),  Quail Greek Merlot ($4.99)でした。ワイン通の人もいればあまりワインを飲まない人達もいましたが、試飲参加者6名のうち、なんと正解者はたったの一名、井出先生!さすが、ワイン通、お見事!(しかし、よく考えればランクだけでなく、種類の違うワインが混じっていたので、ワイン通はわかったのかも。。。。)ここでの実験は、いかに人間の舌があいまいで、ワインの能書きや銘柄による先入観に惑わされるいい加減なものであるかと。。。ワインは嗜好品ですので、人の意見に惑わされず、自分の意見を持とうという主旨でした。



 
「雑談会」

さて、最後はワインを飲みながら、私による「食、音楽とテクノロジー」というタイトルの雑談でした。その昔、私が最初にシリコンバレーに訪れた70年後半は、まだまだ果樹園の多い場所でした。その頃から半導体やコンピューターの産業で有名ではありましたが「テクノロジー」一色ではなかったのです。


また、1960年代後半のベイエリアロサンゼルスは、ベトナム戦争に対する反戦活動がUCバークレー校を中心にひろがり、反体制的なカルチャーの発信基地となり、ヒッピー的思想、マリファナLSDなどのドラッグ・カルチャーにより、全米に新時代の若者文化の中心地として広く知られるようになりました。そのカルチャーの一部として欠かせなかったのが音楽であり、当時のサンフランシスコにライヴ・ハウスフィルモアができ、フィルモア・ウェストと呼ばれ、その後、NYにフィルモア・イーストができるほど、アメリカのロック音楽の発展に貢献したのが当地です。当時、サンフランシスコで活躍していたのが、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、ママス&パパスドアーズなどでした。1967年にはシリコンバレーの南に位置する観光地で有名なモントレーでこの時代を象徴する歴史的音楽イベントのひとつ、モントレー・ポップ・フェスティバル開催され、西海岸で活動する多くのミュージシャンが出演しました。当時、私はまだ日本で高校生でしたが、劇場の大きなスクリーンでその映像を観て感激したのを覚えています。1969には、私の大好きなラテン音楽をベースとしたラテン・ロックのサンタナがデビューしたのです。

今、私は、趣味で家で採れるオレンジやレモンでオーガニック・レモネードを作成して友人達に配っています。そして、好きな音楽においてもこれから親父バンドを結成しようと考えています。ハイテク・ベンチャー至上主義のようなシリコンバレーの文化にブレーキをかけ、もう少し、自然、感性、技術、ビジネスのバランスのとれた良き昔に戻したいという思いを伝えたく、今回の雑談テーマに選んだわけです。

今回は学生が多かったですが、アンケートでは良い評価をいただき、講師全員非常に喜んでおります。
いただいたコメントの幾つかをここに紹介いたします。
  • ビジネスモデルの具体的な考え方を学んだ。
  • 色々な発想があり、ディスカションがとても楽しかった。
  •  アイデアは無制限だと感じた。
  • 新しいアイデアが出てきた時の楽しさ、忘れません!

来春にも再度トライアルを開催し、6月からはフルバージョンを年2回ほど実施したく思っています。是非、ご参加ください!そして、皆様、良いお年をお迎えください。

大永英明
Co-Founder, JABI





Monday, September 3, 2018

第23回JABIサロン「Career in a global world」に参加して

先日、米国CCE認定グローバルキャリアカウンセラーとして、グローバル人材の育成やグループリーダーのマネジメント・スタイルの国際化などを行われている金子厚志さんを講師にお招きしてキャリア支援セミナーが第23回JABIサロンとして開催されました。今回はJABIの理事である友永さんが、私の大学で専攻している学問がキャリアデザインであることから、同じくJABIのメンバーである金子さんを紹介してくださるということでこの企画が生まれ、サンフランシスコに来ている学生も参加してくださり、合計14人でこのセミナーは行われました。


今回のセミナーは金子さんの自己紹介から始まり、講義が進められていく中で私たち参加者が疑問に思った点を質問していくというスタイルで進められていきました。
講義はグローバルキャリアの形成の仕組みを考えていく中で、カルチャーとは一体何なのかを学ぶところから始まりました。講義の主な内容がグローバルキャリアということで日本のカルチャーとアメリカのカルチャーの違い、日本は階層組織で管理しやすいものであるのに対してアメリカではこのカルチャーが一般的ではないということを学びました。これらは各地域において社会規範となっているということもあって一概にどちらが正しいと決めることは出来ないでしょう。しかし私個人の意見としては、日本のカルチャーは元々用意された道を進んでいくことが正しいことだとされているような気がして、人それぞれの個性を消してしまうことになりかねないのではないかと考えているので、これからの創造性がさらに求められる社会において、日本のこのカルチャーはあまりふさわしくないのではないかと思っています。

次に日本とアメリカのカルチャーの差が生み出すキャリアの見方の違いについて金子さんから説明がありました。日本にはCompany is your asset という考え方があるのに対し、アメリカではYourself is your asset という考え方があるというものでした。これは日本では会社を中心としてキャリアを組み立てるのが一般的であるのに対して、アメリカでは個人を中心としてキャリアを組み立てていくのが一般的であるということです。
つまり、アメリカでは一つの企業に長く所属し昇進していくことによって自身のキャリアを積み重ねていくという、日本で多くみられるキャリア形成が主流ではないのです。ここでは文化の違いによって生まれるキャリア形成に対する考え方の違いを知って、アメリカの人は個人個人が自分のスキルを上げることによって、自分のキャリアを伸ばしていこうと考えているからこそ、アメリカはずっと世界の経済を引っ張っていく存在であり続けることができているのではないかと思いました。



次に取り上げられた話題はプロティアンキャリアについての話題でした。プロティアンキャリアとはアメリカの心理学者であるダグラス・ホールが提唱したキャリア理論で、キャリアの主体が組織ではなく個人だとするものです。
キャリアに対する姿勢や尺度も従来のキャリア理論とは異なっており、プロティアンキャリアでは、給料や地位など他の人と比べられるものではなく、仕事満足度や心理的成功など自分自身から見た主観的なキャリアを重要視しています。
私はこの理論の説明を聞いていて給料ではなく、仕事満足度が重要視されるというのがあまり納得できなかったため質問しました。ある一定以上の給料を超えた場合において給料は仕事に対するモチベーションとしてあまり効果を持たなくなり、アメリカでは約8万ドルがそれにあたる金額だということを教えて頂きました。結局キャリアとは他人と比較するものではなく、自己表現をする部分であるということも同時に教えて頂きました。


 最後に私達学生がこれからキャリアを形成していくにあたって重要になってくる【Vision】について、金子さんの方からお話がありました。【Vision】を持つことが大切だというのは誰もがすでに知っている事かもしれません。しかし金子さんは【Vision】を持つとき、その目標に対する自己意識としてWhy?の精神を持ち、考え続けることが重要なことだと話されていました。目標を持っている人はたくさんいるが、その目標を達成するためには何が必要なのかを考えて行動している人は案外少ないのかもしれないと感じました。

今回のセミナーでは、キャリア形成のことや文化の違いによって生じる価値観など様々な内容に触れて、参加者それぞれが多くのことを学び、私達のこれからのキャリア形成について考えさせられる、とても有意義なセミナーとなりました。


以下参加者の感想です。

昨日は大変貴重なセミナーにご紹介いただき、本当にありがとうございました。サンフランシスコで活動できる残り1ヶ月半という期間のモチベーションに繋げ、自分が始めたい新しいビジネスの参考にすることが出来ました。

本日はありがとうございました!楽しかったです。

日本式のキャリアパスか、アメリカ式のキャリアパスかということは、今年就活を終えた同期たちが悩んでいたポイントでもありました。また、自分自身アメリカ式の場合、圧倒的に新卒の大学生には(自分も含め)自分自身のAssetとなるものがないというのが大きな課題だということも感じております。

JABI インターンシップ 法政大学 江藤壮俊

Wednesday, August 29, 2018

人生をどう楽しむか

先日JABIの理事である大永さんが、大学生や高校生を対象にシリコンバレーで長く生きてきた経験を活かして自身の生き方に対する考え方を話される会が開催されました。
会はまず大永さんが自己紹介の形で自身の経歴を語り、それに対して参加した学生たちが質問をしていくというスタイルで進められていきました。
大永さんの話で「働くために生きているのではなく、生きるために働く。」というのが、一見当たり前のことのようですが、私たち学生にとってはとても重みのある一言でした。私は、人は生まれてきて学校を卒業したら働くのが当たり前で、その仕事によって身についたスキルやポジションが人のパーソナリティーを構成していくと考えていたし、一人の人間として生きた証を示すものだと思っていました。その考えが180度変わったわけではありませんが、生きることと働くということは、少なからずしもイコールで表すことはできないものだと、認識を改めるきっかけになりました。
これは、実際に長く生きてこられて、たくさんの経験をされてきた人の言葉だからこそ、私にとっては大きな意味を持つものでした。

私はこれから大学を出て社会で働いていく人間なのですが、仕事以外の目標や楽しみを持つ、という考え自体が今まではありませんでした。大きな企業に入って昇進をしていくことが、自分の人生を豊かで楽しいものにしてくれると考えていたからです。しかし働いている間も私たちは生きているということで、働いている時さえも自分自身が楽しいと思えるような職に就くことができたら、それはきっと私にとって一番幸せなことなのではないかと思いました。

また、大永さんはこれからの楽しみとして友達とご飯を食べたり、一緒に音楽をされたりすることを挙げられていました。私も生涯を通して付き合っていきたい友達にたくさん出会い、ずっと楽しいと思える趣味を探していきたいと思いました。

JABI インターンシップ 法政大学 江藤 壮俊

Tuesday, August 28, 2018

独自の色を持ち、点を繋ぐ。社会全体と個人生活の質を高めるにはー第22回JABIサロンに参加してー

2018年8月4日、私はJABIサロンで行われた大永さんの講演に参加させていただきました。その講演内容は私達それぞれが人生で深く考えるべき要素についてのお話であり、振り返ることの多いものでした。このブログ記事でその内容と私自身の考えを少しでも共有できればと思います。

講演の最初は大永さんにとってこれまでの人生はどのようなものであったのかというお話でした。大永さんはこれまでの人生を音楽、ロボット、そして起業という風につないできました。日本でマルチメディアショーを開催され自分で作曲した音楽を披露し、アメリカでロボットの会社に就職。その後シリコンバレーという地で長年培ってきたロボット技術を駆使して起業しました。まだロボティクスというワードがあまり一般の人に馴染みがないであろうときから、50年にもわたってロボット産業に関わり続けてきたのです。私は大永さんが起業という選択肢に踏み切れた一つの理由は、その分野を続けてきたという自負、技術に関しては負けないという強みがあったからなのではないかなと思います。
さらにそこに独自の色をつける際、自分ならではの”点をつなげる”ということが大切になります。この”点“は人それぞれに違いますが意識しなければいけないことは“つながる”と信じることでしょう。
つまり私たちは情熱を傾けられることを見つけそれを継続し、独自の色をつけることで個性を活かした生き方をすることができるのだと思います。


話の後半では、どうすれば自分の生活の質を上げることができるのかという話になりました。これを考えるには社会全体と個人の生活という二つの軸があると思います。
社会全体で生活の質を上げるには大きな改革が必要になります。実際日本では今イノベーションが多くの場面で叫ばれています。ここシリコンバレーにはイノベーションの聖地というイメージで毎年多くの人々が訪れます。しかし案外表面上のビジネスプランや流行りのテクノロジーを見るだけでその土地の文化や歴史、背景を見過ごしているのではないでしょうか。日本でイノベーションを起こす環境を考えるのであればここでイノベーションが起きる要因つまりエコシステムがどう働き、なぜここで発生したのかの本当の理由を知らなければいけないように思います。その上で私たちはどうすれば社会全体の生活の質が上がるのか考えなければなりません。
個人の生活で質を高めるとはどういうことでしょうか。「人生における生活の質を高める」これは人生には終わりがあるという考えがあるから発生するものです。
自分の人生において死を考えることはなかなかないと思います。しかしどんなに健康な人でもいずれ死ぬ時は来ます。そしてそれがいつなのかは誰にもわかりません。つまり生きる質を高める上で大事な問いは、「自分の物差しで価値のあると思える時間が今この瞬間過ごせているのか」なのではないかと思います。このような言い方をすると時間を作ってビジネス本を読むことやお金につながるセミナーに行くなどとと思われがちですが、そうではありません。何に価値を感じるかは人それぞれに違います。またひょっとしたらこの時間の価値を決める“自分の物差し”はその人の経験や年代で変わってくるのかもしれません。個人それぞれがみな自分自身で考えなければならないものだと思います。

今回、このように人生について深く考えるきっかけをくれた大永さんに感謝しつつ、これからも自分自身や社会に対しての”問い”を深めていけたらと思います。またこの記事が皆さんの考えるきっかけとなれば幸いです。

鹿児島大学 坂田 蒼

Friday, August 24, 2018

社会の変化と技術革新が生み出す新たな問題

先日、JABIの理事である大永さんのロボット事業の方の会議に参加させていただきました。

会議の中では主にロボットやAIについての話題が取り上げられて話が進められていきました。文系の学生である私にとって、専門用語などが飛び交うこの会議の内容全てを理解することはできなかったのですが、実際の社会で行われている会議に参加させてもらったことで、会議の構成や雰囲気を知ることができました。これから私が会議を通して感じたことをここに書いていこうと思います。

まず、会議の内容の中で興味深かったのが、大永さんの専門であるロボットが、これからの物流業界においてどのように利用されていくのかというものです。情報化や少子高齢化などが進んだことによって、社会の在り方が大きく変化しているということは私自身も知っていましたが、今回具体的な事例として、それがどのような影響を与えているのかを知って、改めて社会の変化についてより詳しく知るべきだと痛感しました。今回の会議では物流業界における変化と、それによって生じた新たな問題を解決する一つの方法としてロボットが登場しました。高齢化などによって労働人口が減っていくと考えられる分野では、今までとは違うシステムを取り入れ、事業を進めていくしかないのかもしれません。
労働人口が減っているのにも関わらず、新しい雇用の需要が生まれているということで、どこに新しいビジネスチャンスがあるのかを見極める力が、今後は今まで以上に重要になってくるのではないかと感じました。

昨今、ロボットやAIが人間のしていた仕事を代わってするようになるという話題をよく耳にします。ロボットやAIが増えることよって、人間の仕事、特に単純作業や肉体労働などが少なくなるため、今まで以上に人間には新しいモノやサービスを生み出すクリエイティブ能力が必要になってくるだろうと思っていて、それを持たない人ともっている人の間の格差がさらに広がっていくのではないかと考えています。
つまりロボットやAIの技術が進歩するにしたがって、教育を受けてきて専門分野を持つ人間は、新しい製品を生み出すことを今まで以上に効率的に行えるようになるかもしれないが、まともに教育を受けられていない人間は、仕事がどんどん無くなっていくのではないかということです。大永さんはこのようなロボット/AI化が進んだ未来に対して、人間がロボットやAIと共存していくためには人間にしかできないことと、ロボットやAIにもできることを明確にし、人間が創造力を養っていかなければならないと述べています。

このような問題を解決するためには、やはり世界中の人が十分な教育を受けられるような社会を作っていかなくてはなりません。簡単な問題ではないですが必ず解決しなければならないことだと、私は今回、仕事のロボット/AI化の話を聞いていて改めてそう感じました。

JABI インターシップ 法政大学  江藤 壮俊

Thursday, August 16, 2018

第22回 JABI Salonに参加して

先日は2年ぶりにJABIの総会が行われました。予定していた会議室がロックアウトされるというアクシデントに見舞われながらも、新しい会長が決まり、これから新たに動き出していくJABI。この日はJABIの理事で創始者でもある大永英明さんが「夢、希望、挑戦、そして次に繋げ 日本の中小企業のグローバル化をシリコンバレー流に考える」という若者に向けた講演をしてくださりました。

最近では起業する学生も増えてきていますが、実際に彼らに起業する目的を聞いてみると、「お金持ちになりたい」「皆がしているから」「面白そうだから」と明確な意義を持って行っている人が少ない様に思われます。これらの目的で起業を行っているのであれば、VC等から資金を集めることも難しいでしょう。起業するということは社会的意義が必要です。そうでなければ、資金集めも会社経営も難しいでしょう。起業はあくまでも手段であって、目的となってはダメなのです。自分が行いたいことが何であるのかを明確にした上で、それを実行するための手段として起業という選択肢はあるべきものなのです。ですから学生の皆さんは、早く自分達が将来何を行いたいかという夢を見つけることがとても重要になってきます。夢を早く見つけることができれば、動き出しも早く行えるからです。これは、かの有名なAppleの創設者でもあるスティーブ・ジョブズの言う「好きな仕事を見つける」ということに当てはめることができます。

 大永さん自身も若い時からロボット産業に携わり、現在に至るまで、その業界で活躍されていらっしゃいます。先駆者の言葉や大永さんの経験からも、若い時から自分が興味のある物、何を行いたいかを明確にすることが如何に大切かということがわかるでしょう。
また、そのような目的を見出す時には、まわりの環境も重要になってきます。シリコンバレーではスタートアップが盛んな場所であることは皆さんご存知かとは思われますが、ここでは、それだけ起業しやすいような環境が整っています。カリフォルニアならではの暖かな気候がイノベーションを生み出しやすくし、オープンマインドな人々を生み出すので、同じ意志や考えを持った人同士が起業に踏み切りやすい環境になっています。同じ意志や考えを持った人同士が集まることによって、そこから革新的なアイディア等が創造されていきます。

今回の講演のタイトルでもあるシリコンバレー流に当てはめて言うのであれば、自分がもし起業案を持っていたら、他の人に打ち明ける、自分の起業案を恥ずかしがらずに他の人に共有してみるということが重要になってきます。起業は一人ではできないので、誰かと協力して行わなければなりません。まずは他の人に話してみることで、AppleやFacebookの様な革新的なアイディアを持った会社を立ち上げることができるかもしれません。また、他の人に自分の考え、アイディアを話すということは多くの人に出会わなければなりません。出会ったその時々では、何の発展もないかもしれませんが、それが後々になって、起業や会社の成長のために重要な繋がりとなってくるかもしれません。これはコネクティングドットと言われるもので、関連性はないかもしれないけれども一つ一つのドット(人との繋がり)を作っていくことで、後にそれが非常に意味を持ったものになる可能性を含んでいます。このドット(人との繋がり)作りがとても大切で、若い人達は我武者羅に動く必要があります。

若い人達、特に学生の皆さんは起業をするにおいても、将来行いたいことを見つけるにしても、とにかく動いてみて多くの人達と出会い、話合いをしてみてはいかがでしょうか。


三浦修平(JABIインターン・立教大学)