Monday, August 26, 2019

次世代の自動車産業 - 初めてのモデレーター

先週の8月13日に6th JABI Open Innovation Forum「次世代の自動車産業」と題したパネル討論会のモデレーター(ファシリテーター)を人生で初めて行った。内容としては当地、シリコンバレーで自動車産業に従事されている3名による講演の後、パネルディスカッションを通して質問に答えていただくというものである。


下記のタイトルで登壇者3名に講演をしていただいた。
●「日本の製造業が取り組むデジタルトランスフォーメーション」 岩﨑 悠志様(株式会社ブリヂストン)
●「日本の製造業がシリコンバレーを活用した新規事業開発」大貫 悠太様 (Suzuki Motor of America Inc.  )
● Kodiakの事業内容について 塩野 皓士様(Kodiak Robotics)

同じ自動車産業のメーカーではあるが、それぞれ全く違うビジネスをされており、果たして、タイヤ、自動車メーカーによるシニア向けのパーソナルモビリティ開発、そしてトラックの無人自律運転サービスがディスカションでどう絡むのか頭を悩ます羽目になった。

私自身は、今、本業では自律物流ロボットの販売を行っているという事もあり、最新の自律制御の動向には興味があったので、モデレーターの役を買って出たのである。いつもは観客、もしくはパネリストの席に座るのだが、果たして新米モデレーターの行く末は。。。


さて、このイベントの約一ヶ月半前に「大谷由里子のチャリティー講演in SV」という吉本興業元マネージャーの大谷由里子氏によるシリコンバレーでの講演に参加した。さすが、お笑い業界出身だけあって、話がうまく、大変面白い。チャリティのお礼に著書を2冊いただいた。仕事上、講演をしたりすることがあるので、頂いた本の「講師を頼まれたら読む「台本づくり」の本」の「台本」という言葉に興味をもった。

仕事のプレゼンテーションや、大学やセミナーで講義をするとき、当然プレゼン内容のプロットは作成するわけではあるが、この本にあるようにエンタメ業界の人にとっては、それは「台本」と表現した方が正しいのかもしれない。台本を創り、何度も目を通して何度も練習して、その流れそのものを自分のものにする。喋りがプロの人たちとっては、そこにはすごく隠れた苦労があるのだ。
という事で、モデレーターとしての質問の台本創りが始まった。私は、技術の進化そして産業の進化を理解するには、その背景であるニーズを知る必要があると思っている。単に技術が進化したからどんどん破壊的新製品を開発していこうという風潮には少し閉口しているので、社会的要因や意義を質問の中に取り入れたかった。
あまり直接関係のない上記3社の大きい枠での「自動車産業」という縛りで潜るために人手不足や高齢化社会という背景を意識した質問の「台本」を作った。また、最近、話題になっている「デザイン思考」に関する日米での浸透の違いも新たな手法として議題にいれた。当然、登壇者には準備した返答は欲しくなかったので、質問内容は一切伝えず「本番」が始まった。

プロローグ:
「昔のアメリカのテレビ漫画に「宇宙家族ジェットソン」というのがあり、高層タワーのような居住地から空飛ぶ車で通勤し、家庭用ロボットがおり、料理も自動販売機のような機械がしてくれる世界がありました。それから60年ぐらい経ち、技術が進歩し、空飛ぶ車が出てきそうな時代になりました。

AIによる無人技術も発達しましたが、その背景には人手不足や少子高齢化があります。ということで、本日のパネルディスカションは次世代の自動車産業の変化を技術の進歩だけでなく、社会的意義と絡ませた議論にしたく思います。」

質問:

2004年に開催されたDARPAグランド・チャレンジというDARPAによるロボットカーのロボットカーレースによって、一気に無人カーの開発が進んでいます。グランドチャンレンジで常にトップ1、2を争うStanfordやCMUでの開発者たちが当地ではグーグルを始めとする多くの自律無人カーの開発会社に流れています。AI, SLAM, LiDARの進化によって、それらが現実になろうとしているわけですが、Kodiak Robotics にお尋ねします。トラックの運転手の人手不足を考えるとビジネスチャンスが大で、Kodiak Robotics以外にEmbark , Ottoなど、トラックに特化したベンチャー企業は何社ぐらいあるのでしょう?御社の他社と比べた優位性とは何でしょうか?



対談の詳細内容は、久保田華凛さんによるブログを参照



13. 最後の質問です。20年、50年後の自動車産業はどのようになっていると考えられますか?


対談の流れをコントロールできるという意味ではモデレーターの役割は非常に重要であると思った。また、それは楽しい事でもあると。

台本作成者としては、プロローグでの「宇宙家族ジェットソン」の空飛ぶ自動車という答えを聞きたかったのだが。。。


大永英明

Thursday, August 22, 2019

6th JABI Open Innovation Forum「次世代の自動車産業」

8月13日に「次世代の自動車産業」と題したオープンイノベーションフォーラムを開催いたしました。当地、シリコンバレーで自動車産業に従事されている3名をお招きし、講演・パネルディスカッションを執り行いました。

◆講演パート


「日本の製造業が取り組むデジタルトランスフォーメーション」 岩﨑 悠志様(株式会社ブリヂストン)

講演する岩﨑さん
近年、タイヤマーケット自体は世界的に伸長しているにもかかわらず、メーカーにおけるビッグ3(ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー)は、新興企業の台頭によりそのシェアを落としています。そこでブリヂストン社はタイヤの製造販売業から、ソリューションプロバイダーとして事業を拡大するべく、デジタルトランスフォーメーション(DX)を重要視されているそうです。特に「CAIS」というセンシング技術では、タイヤにセンサーを搭載することでデータを集積し、データからタイヤの摩耗状況・路面状態を検知することで、冬期の路面凍結に対応した高速道路管理の支援を行っています。将来的にはto C向けのソリューションも提供していきたいと考えていらっしゃるそうです。また、DXを扱う人材としてデータサイエンティストの需要が高くなっていますが、日本ではそもそもの人材の母数が少ない上にそういった人材はIT企業に行きがちなこと、データサイエンスにおいてはドメイン知識も重要であることなどから、ブリヂストン社では社内での人材育成を進めているそうです。質疑では空気圧センサーやインホイールモーターの開発の有無などがあがりましたが、ブリヂストン社では産学連携しながら共に取り組んでいらっしゃるとのことでした。


「日本の製造業がシリコンバレーを活用した新規事業開発」大貫 悠太様 (Suzuki Motor of America Inc.  )

講演する大貫さん
Suzuki社では2016年から次の100年に向けた土台作りを目的に、シリコンバレーを拠点とした企業変革の取り組みを開始しています。その一つとして、大貫さんは、デザイン思考を活用したセニアカーの次世代モデル開発に携わられています。開発はスタンフォード大学でのデザイン思考に関する講義の受講、ユーザーインタビューや車いす生活の体験などのプロセスを経て進められています。決まったオフィスやデスクでの作業はなく、またチームメンバー同士でシェアハウスを行っているなど、ビジネス環境が非常にユニークな点も特徴的でした。質疑応答では、コンセプトモデル立案の際にシリコンバレーだからこそできたことは?という質問に対して、社内からトップダウンで下った指示に従うのではなく、実際のユーザーや現場に多く触れることでお客様にとって本当に良いものを引き出す取り組みができている、と回答されていました。まさにそういった自由な気質を与えてくれるのが、シリコンバレーの良いところなのかもしれません。


Kodiakの事業内容について 塩野 皓士様(Kodiak Robotics)

塩野さんの講演を熱心に聴講する参加者
Kodiak Robotics社は、Mountain View, CAに本拠地を置く、自動運転トラックのスタートアップです。現在は高速道路区間の自動化に注力しており、この8月よりテキサスの高速道路での実用化が開始されました。対象を長距離トラックに限定した理由としては、走行場所が限られていることなど技術面での敷居が比較的低いこと、宅配運送業の産業規模が大きいこと(年間$800B)、長距離ドライバーの不足が社会的課題になっていることなどがあげられているそうです。特に最後の課題に関しては、トラックドライバーは長期で家を空けることが多く、現在の生活スタイルにそぐわないことから若者を中心に職業としての魅力が低下していると考えられています。自動運転技術を使えば、人力で運転する区間が限られるためドライバーの生活スタイルに支障をきたすことが少なくなります。そういったことも手伝って、自動運転技術と宅配運送業がシナジーを生んでいるとも考えられています。ただし完全な自動運転(Level5)を実現する難易度の高さ、州法の壁など、今後解決していかなければならない課題も存在しています。質疑応答においても、自動運転技術の実用化が遅れている最大の要因はなにか?という問いが出ました。それに対し塩野さんは、車体の周囲すべての物体を検知する技術、人間のドライバーがなすような微妙な場面での意思決定の判断基準を織り込む技術などの不足を理由としてあげられていらっしゃいました。


◆パネルディスカッションパート


講演者3名にファシリテーターの大永(JABI Co-founder, JABI理事, Innovation Matrix,inc., CEO) を加えた4名にて、パネルディスカッションを執り行いました。また、視聴者からも適宜質問が飛び交い、非常に活発なディスカッションとなりました。

パネルディスカッション

大永:現在トラックに特化したベンチャー企業は何社くらいあるのでしょうか?また、他社と比較した際のKodiak社さんの優位性はどんなところにありますか?

塩野:10社くらいだと思います。競合他社と異なり、運送業そのものをビジネスモデルとして採用しているところに特徴があります。あとはCOOがVCの出身なので、会社の運営に精通しています。

大永:スズキさんはセニアカーの開発に取り組まれていますが、ブリヂストンさんにおいても高齢者向け事業は行われていますか?

岩﨑:直接的ではないですが、スポーツ関連事業の一環として人工筋肉のサポート製品などを開発しています。

大永:ブリヂストンさんにおいて、センサーで読み取ったタイヤに関するデータの集積先は、車本体になるのでしょうか?それとも、クラウドになるのでしょうか?

岩﨑:現状、無線でデータをとばしてクラウドに保管しています。

大永:それからセンサーを取り付けたタイヤは通常のものよりもコストが上がると思いますが、どのように投資回収していくのでしょうか?

岩﨑:まさにそこが課題の一つです。先ほどご紹介したCAISに関しても、一般消費者がわざわざセンサー付きタイヤを買いたいかと言えばNOです。なので、特にto Cに関しては課題があります。to Bに関しては、センサーやメンテナンスも込みのサブスクモデルも検討しています。
満員御礼!たくさんの方が参加されました

大永:ブリヂストンさんのセンサー付きタイヤにおけるような、ユーザーに安心感を与える取り組みはとても素晴らしいと思います。他2社さんにおいてはこのような取り組みはされていますか?

大貫:スズキでは走行データをクラウドに集積しようとしています。そのデータを基に、ユーザーに安全性を警鐘するような取り組みを現在行っています。

塩野:Kodiakでは、自動運転トラックが人間より安全と確証されるまでバックアップドライバーを設置し続ける方針です。

視聴者:そのバックアップドライバーを置かない、と決定するための明確な判断基準はあるのでしょうか?

塩野:現時点で明確な規定はありませんが、統計的に安全が保障された後に無人化の議論も始まると思います。

視聴者:無人運転は法的には許可されているのでしょうか?

塩野:州によって異なりますが、例えばテキサスでは許可されております。

視聴者:自動運転の車が事故を起こした場合メーカー側の責任が問われることが予測されますが、そのことに関してKodiakさんはどのようにお考えになっていますか?

塩野:まさにそれがKodiakでも安全性をプライオリティの最上位においている理由となります。そして現在は、もしそのような事故が起こった場合の責任はすべて弊社にあるというのが会社としてのスタンスになります。

大永:ブリヂストンさんがタイヤから集積したデータは、将来的に他社とも共有できるようになるのでしょうか?

岩﨑:我々自身がデータを共有するためのプラットフォーマーになるのか、もしくはそこに乗っかる企業になるのかは現時点では確かではありません。収益化や社会的責任を考えると、あくまでブリヂストンは部品メーカーなので攻めづらい領域ではあります。

視聴者:データサイエンティストを社内育成されているとおっしゃっていましたが、そういった人材こそ社外リソースを使ったほうが効率的なのではないでしょうか?

岩﨑:データサイエンスの難易度は、ビジネス課題からデータに落とし込むところにあると考えています。そしてそれができるのは社内の人間のため、社内教育を進めています。おっしゃるように社外リソースを活用することで効率化は図れますが、少なくとも初期分析までは社内で続ける方針です。

大永:スズキさんのシリコンバレーでの取り組みに関して、社内の各レイヤーにおける評価の違いなどは出ているのでしょうか?また、全社での報告などはされていますか?

大貫:すでに全社報告も行っています。ブートキャンプ形式の実践なども行っているので、苦しいこと=仕事という考えが強い人からは反対意見も出ています。しかし経営の上位層などからはきちんと理解が得られているため、問題ないと考えています。

大永:デザイン思考という言葉は2005年から提唱され、アメリカでは既に新しいものとしての印象はなかったのですが、日本ではいつ頃から浸透していったのでしょうか?

岩﨑:私は2016年か17年に当時の上司から聞きました。それまで技術先行的な考え方の時代が続いていたので、真新しく感じたのかもしれません。

大貫:私も2017年の研修時に初めて聞きました。スズキの社内でも、この言葉について理解している人間はあまり多くはないかもしれません。ですが、本質的には日本人の文化・心情に根付く思想ではあると思います。

塩野:大学時代に知り、何度か実際に実験したこともありますが、デザイン思考を経て到達した解が自分たちの分野から離れたものになった場合に、それをやらないと判断するのはとても難しいことだと思います。

大永:デザイン思考とアジャイル開発との関連をどのようにお考えになりますか?各企業ではデザイン思考をどのように取り入れているのでしょうか?

岩﨑:日本人はアイディアをあたためて出すタイプだと思います。それに対して、海外ではとんでもないアイディアでもとりあえず出す文化です。そういった違いがある中で、デザイン思考をそのまま日本に適用できるかは少し疑問です。

大貫:相手への共感、日常業務など、ビジネスだけでなく様々な場面にデザイン思考は適用できると考えています。

大永:スズキではオートバイ、自動車、マリン、福祉車両などをビジネスとして設けていらっしゃいますが、将来的なセニアカーのビジネス比率はどの程度となる想定なのでしょうか?

大貫:現状では、4輪自動車が9割、またインドなどの新興国を中心に引き続き4輪が伸びる想定です。

大永:今各社で取り組まれている製品開発に、シリコンバレーが最も得意とするITの技術は必要なのでしょうか?

岩﨑:私が最も強く関連しているところでいうと、やはりデータサイエンティスト人材の育成が関連してくると思います。

大貫:セニアカーの技術、工場における検査などに活用したいと思います。

塩野:必須です。今取り組んでいることすべてが関連しています。

大永:最後の質問です。20年、50年後の自動車産業はどのようになっていると考えられますか?

岩﨑:タイヤがなくても人が移動できる時代にはなっていると思います。なのでタイヤメーカーとしては、危機感を感じています。

大貫:実現の難易度を考えると、まだ人は車を運転していると思います。

塩野:トラックは近未来中に自動化すると思います。そこから徐々に拡大してインドのような道路状況の場所(僕らは勝手にLevel6と呼んでいます(笑))でも実用されるはずです。あとは個人的に仮想現実が進んでいくと思います。人をどう動かすかではなく、人間をいかに動かさずに済むかという方向に考え方がシフトしていくのではないかと思います。

講演者に感謝状を授与!


◆筆者所感


たくさんの種類のピザが振舞われました!
今回JABIのOpen Innovation Forumにボランティアとして参加し、自動車産業というこれまではあまりご縁がなかった業界の皆様の先端技術に関するお話をお伺いすることができ、大変勉強になりました。自動車をはじめとして、日本を代表する産業はその技術の細やかさが世界で戦う大きな武器となっているように思います。そこにシリコンバレーの最先端のテクノロジーが融合すれば、JABIの理念でもある日米間のビジネス進出と飛躍が一気に期待できるのではないかと改めて感じた機会でもありました。また、日本から離れたシリコンバレーだからこそ、改めて日本の産業を広く見渡すことができるのも、この土地がもたらしてくれる大きな利点なのではないかと思います。ここで一つでも多くの日本発ビジネスが生まれ、またビジネス同士が繋がっていく場所づくりのお手伝いをJABIを通して私自身お役に立てたら嬉しいと思いました。

講演の内容に関して、3社とも次の時代の柱となる事業を生み出すために、シリコンバレーという地を選んで活動をされていることがわかりました。そしてその飛躍の重要な鍵となるのが、先端テクノロジーに強い人材、データの取り扱いに強い人材であることは間違いないと感じています。筆者はIT企業でビッグデータを扱う部門に所属していたこともあり、特にデータサイエンス人材の重要性に関しては身近に感じるところがありました。岩﨑さんがおっしゃっていたように、データサイエンティストは単にデータを引き出すだけではなく、ビジネス課題に対するソリューションを提供するところまでが期待される役割となります。また、集積するデータの内容を決定したり、膨大な情報を必要な形に変換したりするデザインスキルも必要となってきます。そのためデータサイエンティスト自身の事業に対する深い理解は必須となり、少なくとも一連の流れをきちんと理解したうえでディレクションができる人材の社内育成は、どの企業・どの業界でも必須となってくるのではないでしょうか。また、特に事業を多角的に展開している企業においては、データをデザインできる人材が社内にいて横軸で機能することによって、様々な負担が軽減されるなどメリットが大きいのではないかと思います。

筆者:久保田華凜(JABIボランティア)

Monday, August 5, 2019

JABIのインターンシップで学んだこと


今回は、この4週間のインターンシップを振り返り、JABIで学んだことについてお話していきたいと思います。私は、アメリカに交換留学生として今年の1月から滞在しているのですが、夏休み期間を利用して、新しい経験や自分が成長できる環境で生活してみたく思い、今回JABIでインターンシップすることを決めました。“日本とアメリカの架け橋になるような仕事がしたい“という私の将来の目的とJABIの理念が一致しているように思い、インターンシップをする前からとても楽しみにしていました。

JABIの一員になって、実際にアメリカで活躍している方々はどのように仕事をしているのか、どのような考え方を持たれているのかという点について多くの事を知ることが出来ました。一か月間、JABIのインターンシップ生として、働く上での基本事項から、より実践的な研修ではJAIBの方々と一緒にイベント企画や司会・進行を任せられるところまで、4週間の間に色々な経験をさせていただきました。JABIでは、日本であるようなピリピリとした環境で働く感じは一切なく、フレキシブルにまたアットホームな環境で働くことができました。そして出会う全ての方々が、右も左もわからない私に、親切にご指導をしてくださり、仕事のことだけではなく、私のキャリアについても熱心に相談にのっていただきました。

シリコンバレーで過ごしていく中で、ここは他のどんな地域よりも、年齢、性別、人種、関係なくすごくウェルカムな場所で、全員と対等に仕事ができ、且お互いを高めあえる特別で素敵な場所だなと感じることが出来ました。自分から”こんなことをやってみたいです!”と主張をすれば、自分のニーズにあわせて、色々なチャンスや機会を私にくださりました。日本だと、絶対に出来ない経験を毎日のようにすることが出来て感謝の気持ちでいっぱいです。私自身、不可能だと思っていた将来の設計図に、すこし光が射したような気もしました。ここシリコンバレーで暮らしているみなさんは、一人一人が自分というものをしっかり持っていて、毎日、解決したい問題や、やってみたいことに対して全力で向き合っている方ばかりでした。そんな方々と出会って、お話することで、私自身もとてもインスパイアされましたし、感銘を受けたことはこれからも忘れないことでしょう。今回この4週間を通して、人との繋がりを持てたことは貴重なこれからの財産になると感じましたし、またシリコンバレーに来る前よりも、一段とコミュニケーション能力また自分自身をアピールする力が身についたと思います!

最後に、将来戻って来たときは、色んなことを吸収する立場ではなく、今度は自分から発信できるそんな存在になって帰ってきたいと思いました。毎日が新しいことばかりの刺激的でとても濃い4週間を過ごすことが出来ました。JABIの方々をはじめ、私をあたたかく迎えてくださった皆さんありがとうございました!
                             
JABIインターン 任 美奈

Friday, August 2, 2019

JABIアワー「関西の成長スタートアップとミートアップ!勢いをます関西市場の今」に参加して

2019年7月25日に行われたJABIアワー「関西の成長スタートアップとミートアップ!勢いをます関西市場の今」に参加させていただきました。参加者は約30人で、関西の企業に働いていた方やこれから起業を考えている学生などみなさんそれぞれの立場から参加されていました。今回、このブログでは簡単なイベント概要説明と私自身が感じたことについて共有したく思います。

NPO法人生態会の西山裕子さんが、シリコンバレーツアーと題し関西のスタートアップの海外展開を支援する旅でアジャイルウエアの川端光義社長とマイスター・ギルドの見取英明社長と共にアメリカにいらっしゃっていました。その一環として、今回JABIで協力できることはないかということで、急遽イベントを開催することが出来ました!

NPO団体生態会についての説明
まず初めに、西山裕子さんから、「関西の企業や経済状況」について話していただきました。参加者の半分位の人が関西出身であったこともあり、みなさん熱心に聴かれていました。特に関西はインバウンド市場の伸びが大きく、飲食店の開業が増え、2016年度の大阪の開業率は東京よりも高かったそうです。また、トリップアドバイザーの日本のテーマパークランキングで、ユニバーサルスタジオジャパンが、三年連続一位をとり、東京ディズニーランドを抜いたという話には、みなさん驚愕されていました。ただ、まだまだ東京に比べると、関西は起業をしたいと思っている人達への手厚い支援は行き届いておらず、今後どのように起業をしたい学生などにどのようにサポートしていくかが鍵になりそうだと感じました。


MCに初挑戦しました!
その後、マイスター・ギルドの見取英明社長に「受託開発会社が海外に出てこられるのか」という題で登壇していただきました。マイスター・ギルドはシステム開発・Web制作会社であり、ARを使ったサービスを開発する為の情報収集や、請負開発もしくは共同開発できる会社を探す目的があるため、シリコンバレーの企業と協業を模索されているそうです。中でも見取さんがお話しされていた内容で印象に残ったのは、日本のエンジニアがコミュニケーションをとることを好まず、英語を話せる人が少ないということです。せっかく技術があるのに、語学面で悩まされているのはとても、もったいないと感じました。これからの世代は、日本国内のビジネスだけではやっていけない焦りと、またそのレベルに達していない日本国内の状況の危機感を感じました。


アプリツールの紹介!
最後にアジャイルウエアの川端光義社長が企業紹介及び技術説明についてお話していただきました。アジャイルウエアもマイスター・ギルドと同様、シリコンバレーの企業と協業やビジネスの可能性を模索している企業です。具体的には、プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」の海外進出に向け、他社ツール連携の強化を図りたいと考えているため、具体的な連携イメージをもとに今後の可能性を模索したいそうです。アジャイルウエアに関しての質問コーナーでは、アジャイルウエアが手がける議事録作成に特化したリアルタイムの共有ツールである“GIJI”についての質問が殺到しました。GIJIの機能性や便利性などについて鋭い質問をされる方も多く、品質向上のために良いディスカッションができたのではないかと思います。ワークライフがGIJIのようなアプリ誕生により、より効率的に仕事ができるようになる将来も近いですね!


 JABIから感謝状を受けとっている様子

 JABIアワーでは、ただ単に講演の時間を持つだけではなく、一人一人が自分のニーズにあわせてお話できるようにネットワーキングの時間をとっています。なので、みなさんがその時間に同じ思いを持った方々と意見交換ができ、また仕事のネクストステップとなる助けを少しでも出来たなら嬉しく思います。登壇者のお三方、貴重なお話をありがとうございます。参加者のみなさんもお疲れ様でした。また今回、はじめてイベント企画やMCをし、私自身もこのイベントを通して成長できる機会となりました!
ありがとうございました!


ありがとうございました!


















NPO法人生態会 → https://www.seitaikai.com/
アジャイルウェア → https://agileware.jp/
マイスター・ギルド → https://www.m-gild.com/


JABIインターン 任 美奈

Thursday, August 1, 2019

JABI スペシャル座談会「これからの時代のロボット、ヒューマンインターフェース、AIの可能性」

2019年3月22日、ロボットの専門家2名でスペシャル座談会が行われました。 登壇者は、工学院大学Human Interface Lab准教授の見崎 大悟先生と、JABI会員であり長くロボット業界でビジネスをしているInnovation Matrix, Inc., CEOの大永 英明氏です。 Stanford大学Center for Design Researchにおいて、d.schoolをもちいた工学教育やイノベーション創生に関しての研究をおこなっていた工学院大学見崎大悟准教授 (Human Interface Lab)と、日米ロボット業界一筋40年余りのシリコンバレー在住の大永英明氏(Innovation Matrix, Inc., CEO)による、これからの時代のロボット、ヒューマンインターフェイス、AIなどの話が盛り沢山で大いに白熱した座談会となりました。 登壇者略歴は以下の通りです。 ●見崎 大悟准教授(工学院大学Human Interface Lab准教授)(以下敬称略) 工学院大学工学部機械システム工学科准教授.東京都立大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。2015年~2016年に,Stanford University, Center for Design Research ,Visiting Associate Professor 研究テーマ:マイクロマニピュレータ,ロボット,設計支援,デザイン思考,工学教育など ロボットを研究するエンジニアとしてのベースは“問題発見と問題解決”である。現在はそれをどうやって他者に伝えるか、つまりデザイン思考について考えている。 ●大永 英明氏(Innovation Matrix, Inc., CEO)(以下敬称略) 米国ロボットメーカーに勤めたベテラン。現在、物流ロボットに力をいれているロボット一筋人間。現在は fetch robotics社のサービス用ロボットの販売に尽力している。(物流倉庫などにおいてロボットに地図などを記憶させ、人手不足の解消を試案) 今回のJABIブログはお二人と、会場のゲストたちの白熱した議論をお届けしたく、イベントで行われた座談会の書き起こしでお届けしたいと思います。


対談内容

ー 見崎:
ロボットには“産業用ロボット”と“それ以外のロボット”がある。産業用ロボットはニーズが明確である。ニーズがクリアな産業用ロボットなどは日本が強い。それはなぜ?

ー 大永:
アメリカ人は新しいことを開拓するのが好きであり、ないものを生み出す力が日本よりも優れている。日本人は最終製品だけでなく、基本技術から精度を高めようとする”モノづくり”に優れている。その反面、良いものを作ろうとし、新たなものを生み出すのが苦手。

ー 見崎:
モノづくりはそれぞれのコンテキストがあってこそ始まる。開発の上でさまざまな違いが影響し、その一つとして文化の違いがある。今後日本がロボット業界にて生き残っていくためには、この日本の良さを守るべき?それともアメリカのように変化したほうが良い?

ー 大永:
アメリカの学生はアグレッシブであり、日本とは異なり、自分から行動していく傾向がある。これが3Dプリンターの登場により、容易に形にすることが可能となったため、アメリカのスタートアップも、ハードウェアの分野への参入が可能となった。これにより、アメリカと日本の立場は同等となったが、業務委託をする際、日本は高コストであるため、中国など、他国が利用されることが多い傾向にある。この傾向によって、日本は今後の身の振り方について、考えなければいけない。

ー 見崎:
過去の日本を振り返った際に、80年代には様々なものが生み出されたが、90年代は…?
大きなポイント;マインドセットのチェンジ、良いものを作ることは大切であるが、効率化を行うような思考となり、楽しむといった感情に由来する研究がなくなる傾向となってしまった。
90年代に関して、何か記憶に残る大きな出来事はあったか?

ー 大永:
特にはない。
ただ、画像処理などアメリカでは当たり前のことが、日本では少し遅れて当たり前となっていく。日本が生き残っていくためには、固定概念を破り、新たなことに挑戦していけるかどうかも重要である。

ー 見崎:
ロボットには3つの要素がある。①アームなどのメカ、②物をつかんだり離したりする動作(エンドエフェクタ)、③認識がある。②について、物の形状により、その行動は多様となり、複雑化されてしまうため、吸着などの手法が用いられた。
エンドエフェクタについてどのように考えるか?

ー 大永:
問題点は、物流の場面では品数の多さである。この多種多様な形状について、1台のロボットでコントロールすることができないことが問題点である。別のアプローチとして、四角の箱に入れるなど、形状を同一化するという考えもある。目的がつかむことであれば、その方針でも問題ないのではないかと考えられる。困難な問題に対するチャレンジと問題を解決することのバランスが重要である。

ー 見崎:
開発をしていく上で重要になってくるのは、経験や専門性である。また、見方を変えることがとても重要である。ロボットと人間の役割分担において、ロボットは高速で認識が早い、人間は柔軟性があるなど、固定観念にとらわれるのは良くない。学生など、未経験者の視点に対し、それについて教えるのではなく、さまざまな分野の専門家らが学生にいろいろ教えたその知識による様々な視点を共有する姿勢が大切である。

ー 大永:
新たなものを作る際、日本企業は、きっちりしたクオリティーが保証されなければ、製品リリースできない。一方、アメリカはある程度できれば、見切り発車し、何かあれば修正するという楽観的な考え方がある。このバランスが大切である。クオリティーはもちろん大切であるが、マーケットへのスピードも重要である。

ー 見崎:
ソフトウェアに関しては、ある程度のクオリティーでもとりあえずやってみるという姿勢がとても大切。一方ハードはそれができないと思われがちだが、その概念を少し崩すことにより、次の新たなロボット設計において、進歩があるのではないかと考えられる。

質疑応答

● ロボット開発者はロボットを大好きという方が多く、その思いと他者が求めるものを作るというバランスはどのようにとっているのか。

 ー 見崎:
学生の間にロボットを好きだという気持ちだけではいけないということに気づくことが多い。ただ、その気持ちにいつ気付けるかということが大切である。世の中の役に立つこと、誰かのためになることを考えるように思考をシフトすることがポイントである。


● 誰かの役に立つかについて考える際に、どうやってそこにアプローチしていくのかについて、ロボットに基準があるのか。

ー 大永:
第一に安全基準である。スピード、衝突なども考えながら設計することが大切である。日本がアメリカより良いものを作るためには、ビジネスマインドの人と一緒に開発する必要がある。ビジネスを目的とした考えも必要である。

ー 見崎:
エンジニアにもビジネス志向が必要であると最近は言われている。しかし、エンジニアが好きなように開発する環境に慣れたらという意見もある。

ー Shirokuさん(参加者):
最近の課題として、どうやって“ロボットが好き”という気持ちを生かしてビジネスを行えるのかを試行中である。

● 日本の中で自動運転は必要か?

ー 参加者の多くが“必要”という意見であった。ただ自動運転だけでなく、それをUberなどと関連付け、生活の改善やいろいろな場面に生かすという考え方もある。

ー 大永:
若い方は車を買わない傾向にある。自動運転は、渋滞の改善や高齢者の生活の質の向上に生かせるのではないかと思う。

 最近では、ネットショッピングなど外出する必要性が減少している傾向にある。そのような状況下においても、自動運転は必要だろうか。

ー 参加者の中から、外に出て購入することも大切であるという声があった。

● ロボットには3種あると考えられる。I robot(物として管理する)、アイアムマン(自らが中に入り、ロボット化する)、さらにサロゲート(自分は動かず、代わりに動いてもらう)である。ロボット好きの方はどういうものが好きなのか。また、日本で描かれるロボットは平和思考であるのに対し、アメリカでは危険的な描かれ方が多い。そこの違いが幼少期に受けたロボットへの感情に関連し、ロボットの開発に影響している部分があるのではないか。

ー 大永:
3種のパターン、いずれも好きである。また、その幼少期の影響というものはあると考えられる。アメリカでは、軍事的な部分が一番金銭の動きがあるため、そのような場面に用いられる傾向がある。日本は逆にその部分にお金がないため、このように根本に違いが出る。ただ、NASAなど商業用への転用をうまくアメリカは行っていることにも違いがある。

● 近年ではロボットを好きな学生も増え、また共存しようという考え方を持つ方も増え、敵視するという傾向は減ってきたのではないか。

ー 見崎:
そのデザインという部分に戻り、自動運転について話すと、根底にあるのは“人はなぜ移動するのか”というものがある。人が生きていくには他者に会うということが重要であり、自動運転は必要である。自動運転の開発において、安全性やユーザーの安心感など何を享受するかというもの大きなポイントである。

ー 大永:
自動運転が導入されることにより、Uberやtaxi運転手など雇用に関わってくる。その労働者の時間についても改善が可能になるのではないかと考えられる。

● ロボットについて考えた際、なんでもできるロボットにするのか、単機能のほうがいいのか、どっちのほうがいいのか。

ー 大永:
単機能ではいけない、単機能であるとそれをしている時しか役に立たず、コストパフォーマンスが良くない。消費者の視点で考えた際に、多機能であるほうが良いと考える。

● 日本人には一つを極めるという性質がある。その一つを極めるのではなく、全体としてのシステムを構築するような発想になるよう、その概念を変えるようにロボットのデザインにおいて教育するにはどのようにすればよいのか。

ー 見崎:
日本人には職人志向の方が多い。その思考がそもそもどこから生まれるのか、知ることが大切。アメリカでは、アポロ計画により、視野が広がった。日本にいるだけでは、全体を見るような思考には至らないことが多い。他国へ行くなどし、行動範囲を広げることで、視野を広げることが大切。

● 感情を機械で表す開発を行う際、どのようにすればよいか。

ー 見崎:
知識の中で、言語化されているものとされていないものがあり、感情というのはされていないものである。そのため、経験やノウハウの蓄積しかないように考えられる。そもそもコミュニケーションとは何なのか、人間間の関係性なども考える必要がある。

終わりに

ー 大永:
私にとってのロボットの定義は、ロボットが人間の欲望を満たしてくれるというような意味で、世の中にあるすべての基礎技術のことである。

ー 見崎:
基本はロボットが好きな人は思う存分ロボット作ったらいいと思う。その環境づくりについて、シリコンバレーなどを見て、それを日本に生かせればと思う。