Tuesday, December 4, 2018

第2回JABI 5UP シリコンバレー研修プログラム トライアルイベント


「JABI 5UP」

2017年12月29日のブログにも書きましたように、本プログラムは、JABI が当地で著名な米国の日系教育支援団体、US-JAPAN FORUM (http://www.usjapanforum.org) の協賛を得て提供する中小企業向けの若手社会人教育、起業家育成プログラムです。

昨年のトライアルと比べ、今回は「日本の伝統的な考え方を突き破って、シリコンバレー風に破壊的なイノベーションやアイデアを創造できる人材育成」を念頭に学生の参加者も含めました。

他団体によるシリコンバレー研修プログラム同様、講義、メンタリング、企業訪問、ネットワーキング、ビジネスプラン発表などの要素が含まれていますが、決定的な違いは1)大きくスケールするビジネスプランを至上とせず、着実に利益を出し、中小企業に必然な世代交代を堅実なビジネスプランで実施し、その次の世代へ繋ぐビジネス理念を構築、そして、2)ピッチコンテストで勝つ(VCのスケール性を評価するという好み)ビジネスプランではなく、誰もが理解できる存続=繁栄といった観点を重視したプランの作成にあります。つまりは、中小企業の旧態依然の自社の文化・体質の改善目標を定めるマインドセットを持つことを目標としています。 

 

来年実施される6日間のフル・プログラムの前にまずはJABI会員、学生、駐在員の方々に参加いただき、本プログラムの理解およびフィードバックをいただこうと、去る11月10日に半日研修体験を目的としたトライアル・イベントをに行いました。

ナビゲーター会員でもあるKimberly Wiefling 女史が出張でオープニングのワークショップができなかったため、彼女のSilicon Valley Allianceのパートナー、Jeff Richardson  とその仲間であるMatt Schlegel氏による「チェンジ」に関するワークショップを兼ねたレクチャーをお願いしました。 







Richardson 氏は教育者として、スタンフォード大学の先進的なプロジェクトマネジメントプログラムのリードデザイナーの一人であり、企業や大学の環境のためのプロジェクトリーダーシッププログラムの設計/指導にも携わっており、いかに困難な問題に挑戦していくかをコーチングしている方です。本セッションのテーマは、いかに新しい考えに対して、習慣や過去の経験による固定概念から脱出して、オープンに受け入れるべきか、実際にワークショップで参加者が体験し、チェンジが難しい事ではないという理解をするというセッションでした。つまり、何かを変えたければ自分が変わらなくてはいけないという体験でした。



 
演習で頭と体をほぐしたあと、前回同様、US-Japan Forumの井手祐二先生による「資金繰り(ビジネススクールで教えない資金繰りのノウハウ)」英語名タイトルはCash Flow (Know-How of Cash Flow Not Taught in Business School)が始まりました。井手先生は、CCD監視カメラ、遠隔病理診断システムの開発販売に携わられていた方で、近年では鹿児島大学北米教育研究センター長兼特任教授、JUNBA(サンフランシスコベイエリア大学間連携ネットワーク)会長などを歴任されています。 

講義内容は(1)企業会計の基礎、(2)キャッシュフローと資金繰り(実践編)そして(3)資金繰りの秘訣(実践編)の三部構成で、彼の起業時のご苦労など、ご自身の体験をもとに解説される話には説得力がありました。今回の参加者は学生さんが多かったので、彼らにとって全てが新鮮であり、多くの質問で溢れました。

「すべては経営者とステークホルダーとの信頼関係です!」という締めの言葉で表されたように、会社の永続という事を考えると、単に株価をあげたり、利益を上げるだけでなく、ビジネスを一緒に行う、株主、投資家、顧客、社員、銀行、仕入先、販売代理店、コーポレートパートナー全員で構築される社会の中で、日頃から良い関係を構築し維持する努力が大事であると、改めて感じました。

その次のセッションは「ワークショップI :ビジネスアイデアの作成演習」でした。ここでは井手先生が提案するビジネス・アイデアメモ用紙を使ってアイデアを整理し、有意義なアイデアに高めるという技能の訓練の仕方を学びました。起業を考えている学生さんたちもいましたが、初めての方が多く、戸惑っている様子でしたが、ビジネスのアイデアをどう構築していくのか体験できたかと思います。


そしてピザ・ランチをしながら、私が講師となり「ワークショップII : JABI風サプライズ演習」を行いました。



参加者を2グループに分け、各グループ内で各自がワークションップIで考えたアイデアのビジネスプランの概略を説明し、グループでアイデアを一本化するという作業を行いました。

アメリカ、特にシリコンバレーにおいては自分の意見を主張する事が非常に重要です。日本の減点方式文化と違い、何も意見を出さず、失点しないのは「セーフ」でなく、「アウト」です。そして、技術およびマーケットの発展・進化の激しい今日、コラボレーションが当たり前というのがシリコンバレーです。当地では、アイデアを持っている人たちでいっぱいです。起業家精神を持っている人たちは我が強く、自分のアイデアの方が優れていると考える傾向があります。ここでは相手を尊重し、自分のアイデアとグループメンバーのアイデアとの相違をニュートラルに議論します。そして、グループの中の一番優れたアイデアに従うのではなく、その採決で選んだアイデアを軸とし、各自のオリジナルのアイデアの部分を足すことによって相乗効果を得る、つまり、コラボレーションを通して、ビジネスプランのレベルを高める事を体験するというのが、このセッションの意図です。イノベーションを起こすには、冒頭のRichardson 氏がいうオープンマインド、そして、コラボレーションを自然に行うといった風土・習慣が必須であると私は考えています。

「マーケットで買えるワインの試飲会」

勉強するには遊びも必要です。今回のエンタメも恒例の「マーケットで買えるワインの試飲会」という名目で、お寿司の松竹梅といった感じで手頃な三階級の値段のワインをブラインドテイスティングをして、どのボトルを飲んだかを当てるというゲームです。今回の3本とはGeorgo’s Mykonos ($23), Line 39 Cabernet Sauvignon ($9.99),  Quail Greek Merlot ($4.99)でした。ワイン通の人もいればあまりワインを飲まない人達もいましたが、試飲参加者6名のうち、なんと正解者はたったの一名、井出先生!さすが、ワイン通、お見事!(しかし、よく考えればランクだけでなく、種類の違うワインが混じっていたので、ワイン通はわかったのかも。。。。)ここでの実験は、いかに人間の舌があいまいで、ワインの能書きや銘柄による先入観に惑わされるいい加減なものであるかと。。。ワインは嗜好品ですので、人の意見に惑わされず、自分の意見を持とうという主旨でした。



 
「雑談会」

さて、最後はワインを飲みながら、私による「食、音楽とテクノロジー」というタイトルの雑談でした。その昔、私が最初にシリコンバレーに訪れた70年後半は、まだまだ果樹園の多い場所でした。その頃から半導体やコンピューターの産業で有名ではありましたが「テクノロジー」一色ではなかったのです。


また、1960年代後半のベイエリアロサンゼルスは、ベトナム戦争に対する反戦活動がUCバークレー校を中心にひろがり、反体制的なカルチャーの発信基地となり、ヒッピー的思想、マリファナLSDなどのドラッグ・カルチャーにより、全米に新時代の若者文化の中心地として広く知られるようになりました。そのカルチャーの一部として欠かせなかったのが音楽であり、当時のサンフランシスコにライヴ・ハウスフィルモアができ、フィルモア・ウェストと呼ばれ、その後、NYにフィルモア・イーストができるほど、アメリカのロック音楽の発展に貢献したのが当地です。当時、サンフランシスコで活躍していたのが、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、ママス&パパスドアーズなどでした。1967年にはシリコンバレーの南に位置する観光地で有名なモントレーでこの時代を象徴する歴史的音楽イベントのひとつ、モントレー・ポップ・フェスティバル開催され、西海岸で活動する多くのミュージシャンが出演しました。当時、私はまだ日本で高校生でしたが、劇場の大きなスクリーンでその映像を観て感激したのを覚えています。1969には、私の大好きなラテン音楽をベースとしたラテン・ロックのサンタナがデビューしたのです。

今、私は、趣味で家で採れるオレンジやレモンでオーガニック・レモネードを作成して友人達に配っています。そして、好きな音楽においてもこれから親父バンドを結成しようと考えています。ハイテク・ベンチャー至上主義のようなシリコンバレーの文化にブレーキをかけ、もう少し、自然、感性、技術、ビジネスのバランスのとれた良き昔に戻したいという思いを伝えたく、今回の雑談テーマに選んだわけです。

今回は学生が多かったですが、アンケートでは良い評価をいただき、講師全員非常に喜んでおります。
いただいたコメントの幾つかをここに紹介いたします。
  • ビジネスモデルの具体的な考え方を学んだ。
  • 色々な発想があり、ディスカションがとても楽しかった。
  •  アイデアは無制限だと感じた。
  • 新しいアイデアが出てきた時の楽しさ、忘れません!

来春にも再度トライアルを開催し、6月からはフルバージョンを年2回ほど実施したく思っています。是非、ご参加ください!そして、皆様、良いお年をお迎えください。

大永英明
Co-Founder, JABI





Monday, September 3, 2018

第23回JABIサロン「Career in a global world」に参加して

先日、米国CCE認定グローバルキャリアカウンセラーとして、グローバル人材の育成やグループリーダーのマネジメント・スタイルの国際化などを行われている金子厚志さんを講師にお招きしてキャリア支援セミナーが第23回JABIサロンとして開催されました。今回はJABIの理事である友永さんが、私の大学で専攻している学問がキャリアデザインであることから、同じくJABIのメンバーである金子さんを紹介してくださるということでこの企画が生まれ、サンフランシスコに来ている学生も参加してくださり、合計14人でこのセミナーは行われました。


今回のセミナーは金子さんの自己紹介から始まり、講義が進められていく中で私たち参加者が疑問に思った点を質問していくというスタイルで進められていきました。
講義はグローバルキャリアの形成の仕組みを考えていく中で、カルチャーとは一体何なのかを学ぶところから始まりました。講義の主な内容がグローバルキャリアということで日本のカルチャーとアメリカのカルチャーの違い、日本は階層組織で管理しやすいものであるのに対してアメリカではこのカルチャーが一般的ではないということを学びました。これらは各地域において社会規範となっているということもあって一概にどちらが正しいと決めることは出来ないでしょう。しかし私個人の意見としては、日本のカルチャーは元々用意された道を進んでいくことが正しいことだとされているような気がして、人それぞれの個性を消してしまうことになりかねないのではないかと考えているので、これからの創造性がさらに求められる社会において、日本のこのカルチャーはあまりふさわしくないのではないかと思っています。

次に日本とアメリカのカルチャーの差が生み出すキャリアの見方の違いについて金子さんから説明がありました。日本にはCompany is your asset という考え方があるのに対し、アメリカではYourself is your asset という考え方があるというものでした。これは日本では会社を中心としてキャリアを組み立てるのが一般的であるのに対して、アメリカでは個人を中心としてキャリアを組み立てていくのが一般的であるということです。
つまり、アメリカでは一つの企業に長く所属し昇進していくことによって自身のキャリアを積み重ねていくという、日本で多くみられるキャリア形成が主流ではないのです。ここでは文化の違いによって生まれるキャリア形成に対する考え方の違いを知って、アメリカの人は個人個人が自分のスキルを上げることによって、自分のキャリアを伸ばしていこうと考えているからこそ、アメリカはずっと世界の経済を引っ張っていく存在であり続けることができているのではないかと思いました。



次に取り上げられた話題はプロティアンキャリアについての話題でした。プロティアンキャリアとはアメリカの心理学者であるダグラス・ホールが提唱したキャリア理論で、キャリアの主体が組織ではなく個人だとするものです。
キャリアに対する姿勢や尺度も従来のキャリア理論とは異なっており、プロティアンキャリアでは、給料や地位など他の人と比べられるものではなく、仕事満足度や心理的成功など自分自身から見た主観的なキャリアを重要視しています。
私はこの理論の説明を聞いていて給料ではなく、仕事満足度が重要視されるというのがあまり納得できなかったため質問しました。ある一定以上の給料を超えた場合において給料は仕事に対するモチベーションとしてあまり効果を持たなくなり、アメリカでは約8万ドルがそれにあたる金額だということを教えて頂きました。結局キャリアとは他人と比較するものではなく、自己表現をする部分であるということも同時に教えて頂きました。


 最後に私達学生がこれからキャリアを形成していくにあたって重要になってくる【Vision】について、金子さんの方からお話がありました。【Vision】を持つことが大切だというのは誰もがすでに知っている事かもしれません。しかし金子さんは【Vision】を持つとき、その目標に対する自己意識としてWhy?の精神を持ち、考え続けることが重要なことだと話されていました。目標を持っている人はたくさんいるが、その目標を達成するためには何が必要なのかを考えて行動している人は案外少ないのかもしれないと感じました。

今回のセミナーでは、キャリア形成のことや文化の違いによって生じる価値観など様々な内容に触れて、参加者それぞれが多くのことを学び、私達のこれからのキャリア形成について考えさせられる、とても有意義なセミナーとなりました。


以下参加者の感想です。

昨日は大変貴重なセミナーにご紹介いただき、本当にありがとうございました。サンフランシスコで活動できる残り1ヶ月半という期間のモチベーションに繋げ、自分が始めたい新しいビジネスの参考にすることが出来ました。

本日はありがとうございました!楽しかったです。

日本式のキャリアパスか、アメリカ式のキャリアパスかということは、今年就活を終えた同期たちが悩んでいたポイントでもありました。また、自分自身アメリカ式の場合、圧倒的に新卒の大学生には(自分も含め)自分自身のAssetとなるものがないというのが大きな課題だということも感じております。

JABI インターンシップ 法政大学 江藤壮俊

Wednesday, August 29, 2018

人生をどう楽しむか

先日JABIの理事である大永さんが、大学生や高校生を対象にシリコンバレーで長く生きてきた経験を活かして自身の生き方に対する考え方を話される会が開催されました。
会はまず大永さんが自己紹介の形で自身の経歴を語り、それに対して参加した学生たちが質問をしていくというスタイルで進められていきました。
大永さんの話で「働くために生きているのではなく、生きるために働く。」というのが、一見当たり前のことのようですが、私たち学生にとってはとても重みのある一言でした。私は、人は生まれてきて学校を卒業したら働くのが当たり前で、その仕事によって身についたスキルやポジションが人のパーソナリティーを構成していくと考えていたし、一人の人間として生きた証を示すものだと思っていました。その考えが180度変わったわけではありませんが、生きることと働くということは、少なからずしもイコールで表すことはできないものだと、認識を改めるきっかけになりました。
これは、実際に長く生きてこられて、たくさんの経験をされてきた人の言葉だからこそ、私にとっては大きな意味を持つものでした。

私はこれから大学を出て社会で働いていく人間なのですが、仕事以外の目標や楽しみを持つ、という考え自体が今まではありませんでした。大きな企業に入って昇進をしていくことが、自分の人生を豊かで楽しいものにしてくれると考えていたからです。しかし働いている間も私たちは生きているということで、働いている時さえも自分自身が楽しいと思えるような職に就くことができたら、それはきっと私にとって一番幸せなことなのではないかと思いました。

また、大永さんはこれからの楽しみとして友達とご飯を食べたり、一緒に音楽をされたりすることを挙げられていました。私も生涯を通して付き合っていきたい友達にたくさん出会い、ずっと楽しいと思える趣味を探していきたいと思いました。

JABI インターンシップ 法政大学 江藤 壮俊

Tuesday, August 28, 2018

独自の色を持ち、点を繋ぐ。社会全体と個人生活の質を高めるにはー第22回JABIサロンに参加してー

2018年8月4日、私はJABIサロンで行われた大永さんの講演に参加させていただきました。その講演内容は私達それぞれが人生で深く考えるべき要素についてのお話であり、振り返ることの多いものでした。このブログ記事でその内容と私自身の考えを少しでも共有できればと思います。

講演の最初は大永さんにとってこれまでの人生はどのようなものであったのかというお話でした。大永さんはこれまでの人生を音楽、ロボット、そして起業という風につないできました。日本でマルチメディアショーを開催され自分で作曲した音楽を披露し、アメリカでロボットの会社に就職。その後シリコンバレーという地で長年培ってきたロボット技術を駆使して起業しました。まだロボティクスというワードがあまり一般の人に馴染みがないであろうときから、50年にもわたってロボット産業に関わり続けてきたのです。私は大永さんが起業という選択肢に踏み切れた一つの理由は、その分野を続けてきたという自負、技術に関しては負けないという強みがあったからなのではないかなと思います。
さらにそこに独自の色をつける際、自分ならではの”点をつなげる”ということが大切になります。この”点“は人それぞれに違いますが意識しなければいけないことは“つながる”と信じることでしょう。
つまり私たちは情熱を傾けられることを見つけそれを継続し、独自の色をつけることで個性を活かした生き方をすることができるのだと思います。


話の後半では、どうすれば自分の生活の質を上げることができるのかという話になりました。これを考えるには社会全体と個人の生活という二つの軸があると思います。
社会全体で生活の質を上げるには大きな改革が必要になります。実際日本では今イノベーションが多くの場面で叫ばれています。ここシリコンバレーにはイノベーションの聖地というイメージで毎年多くの人々が訪れます。しかし案外表面上のビジネスプランや流行りのテクノロジーを見るだけでその土地の文化や歴史、背景を見過ごしているのではないでしょうか。日本でイノベーションを起こす環境を考えるのであればここでイノベーションが起きる要因つまりエコシステムがどう働き、なぜここで発生したのかの本当の理由を知らなければいけないように思います。その上で私たちはどうすれば社会全体の生活の質が上がるのか考えなければなりません。
個人の生活で質を高めるとはどういうことでしょうか。「人生における生活の質を高める」これは人生には終わりがあるという考えがあるから発生するものです。
自分の人生において死を考えることはなかなかないと思います。しかしどんなに健康な人でもいずれ死ぬ時は来ます。そしてそれがいつなのかは誰にもわかりません。つまり生きる質を高める上で大事な問いは、「自分の物差しで価値のあると思える時間が今この瞬間過ごせているのか」なのではないかと思います。このような言い方をすると時間を作ってビジネス本を読むことやお金につながるセミナーに行くなどとと思われがちですが、そうではありません。何に価値を感じるかは人それぞれに違います。またひょっとしたらこの時間の価値を決める“自分の物差し”はその人の経験や年代で変わってくるのかもしれません。個人それぞれがみな自分自身で考えなければならないものだと思います。

今回、このように人生について深く考えるきっかけをくれた大永さんに感謝しつつ、これからも自分自身や社会に対しての”問い”を深めていけたらと思います。またこの記事が皆さんの考えるきっかけとなれば幸いです。

鹿児島大学 坂田 蒼

Friday, August 24, 2018

社会の変化と技術革新が生み出す新たな問題

先日、JABIの理事である大永さんのロボット事業の方の会議に参加させていただきました。

会議の中では主にロボットやAIについての話題が取り上げられて話が進められていきました。文系の学生である私にとって、専門用語などが飛び交うこの会議の内容全てを理解することはできなかったのですが、実際の社会で行われている会議に参加させてもらったことで、会議の構成や雰囲気を知ることができました。これから私が会議を通して感じたことをここに書いていこうと思います。

まず、会議の内容の中で興味深かったのが、大永さんの専門であるロボットが、これからの物流業界においてどのように利用されていくのかというものです。情報化や少子高齢化などが進んだことによって、社会の在り方が大きく変化しているということは私自身も知っていましたが、今回具体的な事例として、それがどのような影響を与えているのかを知って、改めて社会の変化についてより詳しく知るべきだと痛感しました。今回の会議では物流業界における変化と、それによって生じた新たな問題を解決する一つの方法としてロボットが登場しました。高齢化などによって労働人口が減っていくと考えられる分野では、今までとは違うシステムを取り入れ、事業を進めていくしかないのかもしれません。
労働人口が減っているのにも関わらず、新しい雇用の需要が生まれているということで、どこに新しいビジネスチャンスがあるのかを見極める力が、今後は今まで以上に重要になってくるのではないかと感じました。

昨今、ロボットやAIが人間のしていた仕事を代わってするようになるという話題をよく耳にします。ロボットやAIが増えることよって、人間の仕事、特に単純作業や肉体労働などが少なくなるため、今まで以上に人間には新しいモノやサービスを生み出すクリエイティブ能力が必要になってくるだろうと思っていて、それを持たない人ともっている人の間の格差がさらに広がっていくのではないかと考えています。
つまりロボットやAIの技術が進歩するにしたがって、教育を受けてきて専門分野を持つ人間は、新しい製品を生み出すことを今まで以上に効率的に行えるようになるかもしれないが、まともに教育を受けられていない人間は、仕事がどんどん無くなっていくのではないかということです。大永さんはこのようなロボット/AI化が進んだ未来に対して、人間がロボットやAIと共存していくためには人間にしかできないことと、ロボットやAIにもできることを明確にし、人間が創造力を養っていかなければならないと述べています。

このような問題を解決するためには、やはり世界中の人が十分な教育を受けられるような社会を作っていかなくてはなりません。簡単な問題ではないですが必ず解決しなければならないことだと、私は今回、仕事のロボット/AI化の話を聞いていて改めてそう感じました。

JABI インターシップ 法政大学  江藤 壮俊

Thursday, August 16, 2018

第22回 JABI Salonに参加して

先日は2年ぶりにJABIの総会が行われました。予定していた会議室がロックアウトされるというアクシデントに見舞われながらも、新しい会長が決まり、これから新たに動き出していくJABI。この日はJABIの理事で創始者でもある大永英明さんが「夢、希望、挑戦、そして次に繋げ 日本の中小企業のグローバル化をシリコンバレー流に考える」という若者に向けた講演をしてくださりました。

最近では起業する学生も増えてきていますが、実際に彼らに起業する目的を聞いてみると、「お金持ちになりたい」「皆がしているから」「面白そうだから」と明確な意義を持って行っている人が少ない様に思われます。これらの目的で起業を行っているのであれば、VC等から資金を集めることも難しいでしょう。起業するということは社会的意義が必要です。そうでなければ、資金集めも会社経営も難しいでしょう。起業はあくまでも手段であって、目的となってはダメなのです。自分が行いたいことが何であるのかを明確にした上で、それを実行するための手段として起業という選択肢はあるべきものなのです。ですから学生の皆さんは、早く自分達が将来何を行いたいかという夢を見つけることがとても重要になってきます。夢を早く見つけることができれば、動き出しも早く行えるからです。これは、かの有名なAppleの創設者でもあるスティーブ・ジョブズの言う「好きな仕事を見つける」ということに当てはめることができます。

 大永さん自身も若い時からロボット産業に携わり、現在に至るまで、その業界で活躍されていらっしゃいます。先駆者の言葉や大永さんの経験からも、若い時から自分が興味のある物、何を行いたいかを明確にすることが如何に大切かということがわかるでしょう。
また、そのような目的を見出す時には、まわりの環境も重要になってきます。シリコンバレーではスタートアップが盛んな場所であることは皆さんご存知かとは思われますが、ここでは、それだけ起業しやすいような環境が整っています。カリフォルニアならではの暖かな気候がイノベーションを生み出しやすくし、オープンマインドな人々を生み出すので、同じ意志や考えを持った人同士が起業に踏み切りやすい環境になっています。同じ意志や考えを持った人同士が集まることによって、そこから革新的なアイディア等が創造されていきます。

今回の講演のタイトルでもあるシリコンバレー流に当てはめて言うのであれば、自分がもし起業案を持っていたら、他の人に打ち明ける、自分の起業案を恥ずかしがらずに他の人に共有してみるということが重要になってきます。起業は一人ではできないので、誰かと協力して行わなければなりません。まずは他の人に話してみることで、AppleやFacebookの様な革新的なアイディアを持った会社を立ち上げることができるかもしれません。また、他の人に自分の考え、アイディアを話すということは多くの人に出会わなければなりません。出会ったその時々では、何の発展もないかもしれませんが、それが後々になって、起業や会社の成長のために重要な繋がりとなってくるかもしれません。これはコネクティングドットと言われるもので、関連性はないかもしれないけれども一つ一つのドット(人との繋がり)を作っていくことで、後にそれが非常に意味を持ったものになる可能性を含んでいます。このドット(人との繋がり)作りがとても大切で、若い人達は我武者羅に動く必要があります。

若い人達、特に学生の皆さんは起業をするにおいても、将来行いたいことを見つけるにしても、とにかく動いてみて多くの人達と出会い、話合いをしてみてはいかがでしょうか。


三浦修平(JABIインターン・立教大学)

Sunday, July 29, 2018

「夢、希望、挑戦、そして次に繋げる ~ 日本中小企業のグローバル化をシリコンバレー流に考える」を講演して

私の会社が鹿児島大学生の海外研修の一環としてインターンシップを受け入れているという事もあり、鹿児島大学「進取の精神グローバル人材育成プログラム(P-SEG)」の学生たちを主とした授業の中で、社会貢献、地域貢献をテーマにいれ、いかに日本を離れて長くビジネスを行なった中で、どのような形で自身の力を社会に還元しようとしているのか、を語って欲しいとJABIのイベントにも何度か参加された事のある鹿児島大学Global Initiatives Centerの中谷純江先生より依頼があった。

テーマに悩んだ結果、「夢、希望、挑戦、そして次に繋げる ~ 日本の中小企業のグローバル化をシリコンバレー流に考える~」 をタイトルとした。

私が18歳の時に留学で渡米してから約半世紀が経ち、昨年12月には年金を貰うような年になってしまった。また、数ヶ月前に長年の連れ合いを亡くし、これから先の自分の生き方を考えようとしている矢先に、このテーマで話をできるというのは、偶然ではなく、私に与えられた使命のように感じたわけである。それは、自分の人生を振り返る、丁度良い機会であった。そして、それを次世代に「繋げたい」と思ったわけである。シリコンバレー居住の日本から海外へ出たひとりの人生の先輩として話をした。

渡米してニューヨーク州のシラキュース大学へ留学し、コネチカット州にあった世界初の産業用ロボットメーカー(ユニメーション社)に就職し、会社買収でペンシルバニア州のピッツバーグ市へ移転、日本逆駐在を経て、シリコンバレーに居住。いろんな地域、人種やカルチャーに出会った。高校時代の世界史の先生が「日本を知るには、日本の外へ出なさい。」と言われていたのが良く分かるほど、日本の良さ、悪さが見えるようになった。

ベンチャービジネスで活発な当地に住み始めて既に20年経つ。ここシリコンバレーでの話題はベンチャー、ベンチャー、そしてベンチャーである。また、特に安倍首相が当地を訪問してからは、日本からの起業志向の人間の研修ツアーが多くなった。起業する事は大変素晴らしい事であると思う。しかし、ベンチャーを起こす事が流行りとなり、それが手段でなく目的となっている今日、私は今の日本でのベンチャー至上といった考えに大きく危惧を覚えるのである。

講演の中では、ベンチャーを起こすのは手段であって目的であってはいけないと語った。今まで数多くの起業志望の学生達と会って話をしてきた。私はいつも「何のための起業?」と尋ねる事にしている。するといろんな答えが返ってくる。流行りだから、起業が面白そうだから、経営に興味があるから、自分の持っているアイデアを具現化したいから、大金持ちになりたいから、社会を変えたいから等。ベンチャー会社を興すとは投資家を募りそのアイデアをサポートしてくれる応援団(投資家、取引先、顧客など)を構築するわけであるので、大義名分的な社会的意義が必要である。でなければ、応援団はできない。逆に言うと、もっと自分が何をしたいのか、起業への興味有無に関係なく自分がこの社会の中で何をしたいのかをしっかりと知る必要があるという事だ。それを知った上で自分の人生の幸福度を高める人生を送るというのが私の強い考えである。(私は幸福度が高いほど、良い仕事ができると思っている。)

人は、皆、夢を描き希望をもって将来の職業につく。しかし、現実の忙しさによって初心を見失うことが多いにある。永い人生の中で寄り道をしたり、進路、目的を変更する事は当然あり得るが、本質は変わらなく、直感的な生き方というベクトルは変わらず、その原点は夢を見出した時点にある。よって、迷った時、その原点を思い出せば、迷いは吹っ切れ最善の判断をする事ができる。つまり、早く夢を見つけるという事は早く目的を達成でき、人生の幸福度をより高める事ができるという私なりの結論である。

小学校6年生の卒業文集の中で、私は渡米留学し自動車会社を興すと書いたが、何の理由と目的でそう書いたのか覚えていない。しかし、その時なんとなくではあるが夢を見つけたのだろう。それから半世紀以上経った今、私の人生ベクトルは、スケールこそ違うが大半合っているのには自分でも驚いている。多分、そんな自分はラッキーであると思う。

そんな私の原点は20歳の時にプロデュースしたマルチメディア・ショー「What’s Love」(愛とは何?)である。総勢14人のアマチュア・ミュージシャンによる音楽 + ナレーション +スライドショー + ライトショー + ダンスといったマルチメディア・ショーであり、「マルチメディア」という言葉を1972年に使ったのも私であろう。20歳の若者が神戸新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞による前評記事を書いてもらうように奔走し、ラジオ関西が中継車でリハーサルのインタビューをしてくれるという結果を引き出した好奇心に満ちた、怖い物知らずの20歳の若者だった。あの時の事を思い出すと、どんなハードルが高い事でもチャレンジできるという自信がある。

講演会のあとの懇親会での教授から「シリコンバレーからの話は通常、やたらポジティブでアグレッシブなイメージ、大風呂敷に夢を語る感じだけど、大永さんの夢や挑戦のお話は、すべてを包みこむような『仏さまのよう』な感じだった。シリコンバレーには、ベンチャーばかりではなく、普通に商売している人もたくさんいて、それぞれのチャレンジ、目的、貢献が次の時代を作って行くのですよ、というそういう感じです。」とコメントを頂いた。

嬉しい限りだ。そう、私は講義の前に単なる人生の先輩として伝えたい事を語ると前置きをしたので、目的達成したわけだ。そんな機会を与えてくれた中谷先生に感謝!

私のこれからの人生については、小学校の卒業文集には書かれていない。また原点に戻って考えなくては。

大永英明/Eimei Onaga

鹿児島大学の当日のレポートはこちら!→ https://pseg.knit.kagoshima-u.ac.jp/?p=1240(鹿児島大学ホームページへ移動)

Monday, April 9, 2018

大学・大学院におけるアントレ教育ー関西学院大学の事例を中心にー

第21回  JABI サロン  2018年3月22日 特別講演  
定藤 繁樹 関西学院大学教授  (プロフィールはこちら)


今回のJABIサロンは、JABIの共同創始者、大永氏と、高校時代の同級生である定藤教授との半世紀ぶりとなる再会がきっかけで開催されました。定藤教授は、関西学院大学大学院経営戦略研究科にて、学生たちに起業家精神(アントレプレナーシップ)、国際競争力(グローバリゼーション)、産官学連携(ビジネスエコシステム)を研究、指導されています。講演序盤は定藤教授の略歴説明、アメリカ留学~会社員~教授就任まで数々の破天荒な経歴を面白おかしく話してくださいました。通常の講演に比べ余談が多く入っていましたが、大永氏との50年ぶりの再会、溢れる思いがひしひしと伝わり、私を含めゲストの心を温める素敵な時間となりました。気が付けば公演予定時間の半分を略歴紹介に費やすという、これまた破天荒な展開となりました。また、15年にわたる関西学院大学との関わりをアンバサダーとして紹介され、私自身、若い頃に戻れるのであれば是非とも学びたい、自分たちの子どもがいれば是非とも行かせたいと思わせる内容で、教授と言う事を忘れて、営業部長さんが話されているのかと勘違いしてしまいました。  

【以下、定藤氏による講演の概要】 

産官学連携の基礎となるビジネスエコシステム、(優秀な大学>優秀な人材>起業成功者>エンジェル投資家>ベンチャーキャピタル>企業>優秀な大学)特に世界の最先端を走るSilicon Valleyの循環に比べ、日本は遅れをとっている。そこで、大学としての重要課題は、アントレプレナーシップ(起業家精神)の養成であり、その為に資金を集め、現場である大学や学生、研究生に投資する事、Silicon Valleyに人材を送り込む事である。IMD国際競争力比較(2015年度版)によると、1位アメリカに対して日本は27位、都市別ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場ベンチャー企業)の数では、Silicon Valleyが断トツ1位の69社、2位はニューヨークの16社(2015年度版)に対して日本は全国で1社(2017年調べ)と言う事実が現状である。
グローバルな視点から見ると、アメリカ109社に対して唯一対抗できる国家、中国が59社、欧州はEU全体で28社、インドが10社となっており、日本の出遅れ感が顕著に表れている。ユニコーン企業が国際競争の未来予想図になるとは断言できないが、現地点での勢力図としては間違いなく無視できないものになっている。 1990年代以降のPCの普及・発展と共に情報技術や人工知能は目まぐるしいスピードで進化している。アナログ時代を振り返ってみても世界は常に効率化や利便性向上など、日々イノベーションが繰り返され、これからも繰り返されるであろう。ではこれからの未来はどうなるのか。
アメリカ・中国を中心に、国家や大企業はコンピュータサイエンスを通じて、AI(人工知能)、産業ロボット、医療科学などへ巨額の投資を行っている。少なくとも10~20年先までの事業計画が確定していると言うことだ。私見ではあるが、私の学生時代、約20年前はと言うと「ポケベル」と言う数字10桁のみを受信できる機械が時代の最先端であった。相手の電話番号10桁を少なくとも2,30件は記憶していたものである。それが10年ほど前から月額同程度の金額でスマートフォンをWi-fiで使いこなし、PCで世界中の人々と常に連絡が取れるようになっている。同じスピード感で向こう10年のイノベーションを想像してみた時、SF映画の世界が現実となっているだろう。その時に「日本」という国家は世界の勢力図で先進国に入っているのだろうか? 

【筆者の感想】 
私は、日本にいた時からよく大風呂敷を広げる癖があります。会社員の時には「出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打たれない」と言い聞かされることが多かったと記憶しています。アメリカ、ベイエリアでも同じ大風呂敷を広げてしまっていますが、関わった方々の反応が全く違いました。ネガティブな反応を見せる日本人と違い、アメリカで出会った多くの人々は、すぐさま「5W1H」の質問と共に「YOU CAN DO IT」と言います。やらない事には始まらない、動かないことが最大のリスクである、失敗し続けても成功するまで諦めなかったらそれはただのプロセスだ。とにかくポジティブです。関西学院大学の事例によると、資金援助付きのビジネスプランコンテストの参加申し込みがそれほど無いと言います。Silicon Valleyではどうでしょう。中心的大学のスタンフォード大学で同じような資金投入コンテストなら数日中に満席となり、競争原理のもとハイレベルな論文が出てきます。ビジネスエコシステムの循環における、未来への原資である優秀な人材=学生の意識が、ここまで違うという現実を受け入れ、関西学院大学はいち早く文科省からスーパーグローバルユニバーシティの認定を受けました。需要と供給のバランスが崩れたバブル時代の就職活動の様に、現在の進学活動も少子化問題と共にバランスが崩れています。大学も経営していかなければならない以上、教育のクオリティとビジネス面でのバランス維持が大きな問題となっています。ビジネスエコシステムの輪を保つだけではなく、この輪をどんどん広げて行く事が「日本」と言う誇り高き国家が国際社会で生きていくための使命だと感じました。
 



 2018年3月26日 室住 康仁

Saturday, March 10, 2018

3月6日JABI夕食会報告 「自分の値段」を知るということ ー転職社会アメリカで“働く”とはー

鹿児島大学 法文学部人文学科2年 横田帆南
研修期間 2月26日~3月9日

3月6日に催された、JABIの夕食会に参加させて頂き、シリコンバレーで活躍されている様々な職種の方々からお話を伺った。多くの議題が挙がったが、その中で印象的だったものをまとめる。
はじめに、日米の転職に対する考え方の違いについてである。日本では「定年まで働けそうな会社」を探すのに対し、アメリカは「次も転職すること前提」で会社を探すという。就職し、その会社でノウハウを得て、転職することでキャリアを積んでいく。転職が当たり前の世界であるからこそ各々が「自分の値段」を持っているということであった。自分がどの程度企業、社会に必要とされているのか、今の自分には何が足りないのか、どんなノウハウを身に着けたら自分の価値が上がるのか。アメリカの転職社会は、このようなことがはっきりと自分に突きつけられるシビアな世界であると感じた。また、転職の際、一社に長く勤めている人は、日本では「転職後も当社で長く働いてくれるのでは」というプラス印象を持たれるが、アメリカでは「転職先が見つからない仕事ができない人」というマイナスの印象をもたれるということが驚きだった。日本と違い、年齢や性別に左右されない点からも、「自由な働き方」を感じた。アメリカで転職するためにはブラッシュアップが欠かせない。このように常に自分を磨き高みを目指すという環境、社会の仕組みがシリコンバレーのように常に成長し、世界をリードしていくことにつながっているのだと感じた。
また、今回特に印象的だったのは、日本人の「恩」についての話題である。日本人の持つ「恩」は、アメリカには存在しない概念であるというものだ。文系の私にとってはとても興味深い話題であった。「恩師」、「恩人」、「恩恵」など「恩」は日本人の周りにありふれているものであり、日本人が大切にしているものである。英語で似たニュアンスをもつものとして“favor”や“indebted”が挙がったがこれらの語彙では、日本人にとっては腑に落ちない。「借り」でもなく「負債」でもない「恩」。その大きさや価値は計ることができないものであり、なくなることもない。宗教とは違うが、一種の信仰心のようなものなのか。日本人として当たり前に感じていた「恩」を別の土地に来て改めて考えると独特な感性であると実感したと同時に、「恩」を感じることができることに誇りを感じた。
今回の食事会で共通していたテーマは「外から見た日本」であったと考える。日本の良いところ、悪いところ、単に良し悪しでははかれない様々なものについて、日本人として長年日本を「外」から見てきた方々だからこその視点を感じることができた。様々な切り口からの話題が挙がり、シリコンバレーで活躍されている方々の好奇心の幅広さと、博識さに圧倒され、また感心させられた夕食会であった。