◆講演パート
講演する岩﨑さん |
講演する大貫さん |
塩野さんの講演を熱心に聴講する参加者 |
◆パネルディスカッションパート
パネルディスカッション |
大永:現在トラックに特化したベンチャー企業は何社くらいあるのでしょうか?また、他社と比較した際のKodiak社さんの優位性はどんなところにありますか?
塩野:10社くらいだと思います。競合他社と異なり、運送業そのものをビジネスモデルとして採用しているところに特徴があります。あとはCOOがVCの出身なので、会社の運営に精通しています。
大永:スズキさんはセニアカーの開発に取り組まれていますが、ブリヂストンさんにおいても高齢者向け事業は行われていますか?
岩﨑:直接的ではないですが、スポーツ関連事業の一環として人工筋肉のサポート製品などを開発しています。
大永:ブリヂストンさんにおいて、センサーで読み取ったタイヤに関するデータの集積先は、車本体になるのでしょうか?それとも、クラウドになるのでしょうか?
岩﨑:現状、無線でデータをとばしてクラウドに保管しています。
大永:それからセンサーを取り付けたタイヤは通常のものよりもコストが上がると思いますが、どのように投資回収していくのでしょうか?
岩﨑:まさにそこが課題の一つです。先ほどご紹介したCAISに関しても、一般消費者がわざわざセンサー付きタイヤを買いたいかと言えばNOです。なので、特にto Cに関しては課題があります。to Bに関しては、センサーやメンテナンスも込みのサブスクモデルも検討しています。
満員御礼!たくさんの方が参加されました |
大永:ブリヂストンさんのセンサー付きタイヤにおけるような、ユーザーに安心感を与える取り組みはとても素晴らしいと思います。他2社さんにおいてはこのような取り組みはされていますか?
大貫:スズキでは走行データをクラウドに集積しようとしています。そのデータを基に、ユーザーに安全性を警鐘するような取り組みを現在行っています。
塩野:Kodiakでは、自動運転トラックが人間より安全と確証されるまでバックアップドライバーを設置し続ける方針です。
視聴者:そのバックアップドライバーを置かない、と決定するための明確な判断基準はあるのでしょうか?
塩野:現時点で明確な規定はありませんが、統計的に安全が保障された後に無人化の議論も始まると思います。
視聴者:無人運転は法的には許可されているのでしょうか?
塩野:州によって異なりますが、例えばテキサスでは許可されております。
視聴者:自動運転の車が事故を起こした場合メーカー側の責任が問われることが予測されますが、そのことに関してKodiakさんはどのようにお考えになっていますか?
塩野:まさにそれがKodiakでも安全性をプライオリティの最上位においている理由となります。そして現在は、もしそのような事故が起こった場合の責任はすべて弊社にあるというのが会社としてのスタンスになります。
大永:ブリヂストンさんがタイヤから集積したデータは、将来的に他社とも共有できるようになるのでしょうか?
岩﨑:我々自身がデータを共有するためのプラットフォーマーになるのか、もしくはそこに乗っかる企業になるのかは現時点では確かではありません。収益化や社会的責任を考えると、あくまでブリヂストンは部品メーカーなので攻めづらい領域ではあります。
視聴者:データサイエンティストを社内育成されているとおっしゃっていましたが、そういった人材こそ社外リソースを使ったほうが効率的なのではないでしょうか?
岩﨑:データサイエンスの難易度は、ビジネス課題からデータに落とし込むところにあると考えています。そしてそれができるのは社内の人間のため、社内教育を進めています。おっしゃるように社外リソースを活用することで効率化は図れますが、少なくとも初期分析までは社内で続ける方針です。
大貫:すでに全社報告も行っています。ブートキャンプ形式の実践なども行っているので、苦しいこと=仕事という考えが強い人からは反対意見も出ています。しかし経営の上位層などからはきちんと理解が得られているため、問題ないと考えています。
大永:デザイン思考という言葉は2005年から提唱され、アメリカでは既に新しいものとしての印象はなかったのですが、日本ではいつ頃から浸透していったのでしょうか?
岩﨑:私は2016年か17年に当時の上司から聞きました。それまで技術先行的な考え方の時代が続いていたので、真新しく感じたのかもしれません。
大貫:私も2017年の研修時に初めて聞きました。スズキの社内でも、この言葉について理解している人間はあまり多くはないかもしれません。ですが、本質的には日本人の文化・心情に根付く思想ではあると思います。
塩野:大学時代に知り、何度か実際に実験したこともありますが、デザイン思考を経て到達した解が自分たちの分野から離れたものになった場合に、それをやらないと判断するのはとても難しいことだと思います。
大永:デザイン思考とアジャイル開発との関連をどのようにお考えになりますか?各企業ではデザイン思考をどのように取り入れているのでしょうか?
岩﨑:日本人はアイディアをあたためて出すタイプだと思います。それに対して、海外ではとんでもないアイディアでもとりあえず出す文化です。そういった違いがある中で、デザイン思考をそのまま日本に適用できるかは少し疑問です。
大貫:相手への共感、日常業務など、ビジネスだけでなく様々な場面にデザイン思考は適用できると考えています。
大永:スズキではオートバイ、自動車、マリン、福祉車両などをビジネスとして設けていらっしゃいますが、将来的なセニアカーのビジネス比率はどの程度となる想定なのでしょうか?
大貫:現状では、4輪自動車が9割、またインドなどの新興国を中心に引き続き4輪が伸びる想定です。
大永:今各社で取り組まれている製品開発に、シリコンバレーが最も得意とするITの技術は必要なのでしょうか?
岩﨑:私が最も強く関連しているところでいうと、やはりデータサイエンティスト人材の育成が関連してくると思います。
大貫:セニアカーの技術、工場における検査などに活用したいと思います。
塩野:必須です。今取り組んでいることすべてが関連しています。
大永:最後の質問です。20年、50年後の自動車産業はどのようになっていると考えられますか?
岩﨑:タイヤがなくても人が移動できる時代にはなっていると思います。なのでタイヤメーカーとしては、危機感を感じています。
大貫:実現の難易度を考えると、まだ人は車を運転していると思います。
塩野:トラックは近未来中に自動化すると思います。そこから徐々に拡大してインドのような道路状況の場所(僕らは勝手にLevel6と呼んでいます(笑))でも実用されるはずです。あとは個人的に仮想現実が進んでいくと思います。人をどう動かすかではなく、人間をいかに動かさずに済むかという方向に考え方がシフトしていくのではないかと思います。
講演者に感謝状を授与! |
◆筆者所感
たくさんの種類のピザが振舞われました! |
講演の内容に関して、3社とも次の時代の柱となる事業を生み出すために、シリコンバレーという地を選んで活動をされていることがわかりました。そしてその飛躍の重要な鍵となるのが、先端テクノロジーに強い人材、データの取り扱いに強い人材であることは間違いないと感じています。筆者はIT企業でビッグデータを扱う部門に所属していたこともあり、特にデータサイエンス人材の重要性に関しては身近に感じるところがありました。岩﨑さんがおっしゃっていたように、データサイエンティストは単にデータを引き出すだけではなく、ビジネス課題に対するソリューションを提供するところまでが期待される役割となります。また、集積するデータの内容を決定したり、膨大な情報を必要な形に変換したりするデザインスキルも必要となってきます。そのためデータサイエンティスト自身の事業に対する深い理解は必須となり、少なくとも一連の流れをきちんと理解したうえでディレクションができる人材の社内育成は、どの企業・どの業界でも必須となってくるのではないでしょうか。また、特に事業を多角的に展開している企業においては、データをデザインできる人材が社内にいて横軸で機能することによって、様々な負担が軽減されるなどメリットが大きいのではないかと思います。
筆者:久保田華凜(JABIボランティア)
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