JABIのブログを読まれる方はとてもお忙しい人が多いので手短にしたためます。
日本から企業訪問で来られる方々のお世話をする機会がありますが、訪問先にお持ちになられるお土産には残念ながら不人気なものもあります。例えば、富士山 の横でお相撲さんが四股を踏んでいる絵柄の扇子とか、五重塔とやけに派手な舞妓さんの絵柄が交互に入っているコースターセットなど。このあたりは時間がな く、大急ぎで空港で買うしかなかったというアイテム達でしょう。近年に入り、だいぶこれらのアイテムが企業訪問の際のお土産になることは少なくなってはい ますが、時折、企業訪問先の帰り際で登場します。中には、あちらこちらで配る為に買ってきたものがあまってしまい日本に持ち帰るにはかさ張るし、そうなる と私どもが丁重に引き取ることになるのですが、さてさて、どこにも流用できず戸棚の中に溜まっています。
たまたま訪問される方の中に、お土産として何か持っていきたいが、何がいいかわからないという方がいたので、上記のような話しをすると、結局お土産もセン スの問題ということに。外国人に渡すので日本文化を象徴するものがいいかとなりますが、日本人だったら買わないし、差上げないなと思うものは避けたいもの です。
さて、企業訪問先で貰って喜ばれて、それなりに先方のデスクの上で使われているものでは、USBメモリー、付箋セットやノートなど。以前日本からお土産で いただいたノートをアメリカ現地のエンジニアが使い易いと言って愛用していましたが、電話を片手で持ち、もう片方でメモをとっていても、そのノートはきち んと開いたままで、押さえておく必要がないと言っていました。こちらでよくあるメモ用ノートは表紙と縫い目のところが固くて押さえてないとパタンと閉じて しまいます。日本の文房具は使いやすく、デザインもユニークなものがあるので嬉しがる方が多いです。それと持っていく側もかさ張らないというのも助かりま す。あと月並みですが、クッキーなどのお菓子なども人気があります。
しかしながら、必ず何か持っていかなくてはいけないというものでもなく、それでなくても忙しい中、お土産で心を悩ますことは無いです。ただ、日本人の文化 的もしくは、慣習的な感覚では、ちょっとした心遣いを手渡したら取り合えず安心ということもあるでしょうか。その際はどうせなら貰って嬉しい、センスのあ るものを選びたいものです。
まだまだアイデアはあると思いますが、“ちょっとお土産”で気の利いたものなどがありましたらブログにご投稿下さい。 それでは今日も良い日でありますように。
Akiko Sharp
IncuBee, Inc.
Tuesday, May 24, 2011
Tuesday, May 17, 2011
タイ・ロングステイプランの動機を訊かれて
初めに文章の伝達力について一言ブチたい。E-mailが普及して電話連絡を省いても連絡出来る便利な世の中になったのですが、最近E-mailは一方通 行だと感じるようになった。文章には意思の疎通が目的の一つにあるがが、自分の思い入れがある為、相手にこちらの意向(趣旨)を伝えたつもりが伝わらない 時がある。相手は相手で思い入れがあるからだろう。やはり肉声を聞き、顔と顔を突き合わして話した方が意思伝達には都合がよいが、昨今のグローバル時代に は時間が無さ過ぎる。それでは本題に入りましょう。
*どうしてその考えに至ったのか?
結論から答えますと、わたしの場合は性格と年齢的人生観からです。性格は面倒臭がり屋で怠け者。それ故、何か問題があると逃げてしまう。逃げの天才で す。問題が生じると逃げて過ごしていました。ですから60歳を迎えるにあたって、残りの人生もあくせくと働かずのんびりした暮らしをしたいと願った訳で す。一昔前の親父の時代には一般的に55歳~60歳が定年で、リタイヤメント生活が始められたような記憶があります。かつて日本社会では55歳を働ける限 界基準としていました。ところが現在は55歳では年金は支給されず、(その代り、皮肉な事に早期退職制度が普及している)アメリカでもいつの間にか62歳 からしか年金を受け取れなくなったばかりか、66歳の受給額まで待たないと経済的にリタイヤ生活は出来ません。おまけに夫婦二人の年金を足しても危うい暮 ししかできない現実の壁にぶちあたりました。(資産があれば別でしょうが)チョイスは2つです。甘んじてぎりぎりの老後生活に耐えるか、暮らしに必要な費 用をどこからか捻出するか、です。わたしの場合、いまの状況ではどちらも無理です。
ではどうすればよいのか?・・・・そこで発想の転換(逃げの極地)です。マルチハビテーション(またはマルチビジテーション)を考え出しました。
アメリカに未練はないのですが本拠地をサンフランシスコ近郊として、物価の安い国へ何ヶ月か滞在すればリビングコストが浮きます。タダ物価の安い国であれ ばどこでも良い訳ではありません。最初に考慮しなければならないのは治安の問題と気候条件です。アメリカの隣国メキシコは気候も好いし、物価も安いのです が、治安が心配。治安の良い、日本やヨーロッパの先進国は物価が高いのでパス、この二つの条件を満たす場所として、物価の安いアジア圏に焦点を合わせた。
次に海外居住生活で心配なのが医療水準(技術)。物価の安さではラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、チャイナ(上海、北京を除く)などだが、治 安や医療水準に問題があるので没。医療技術の高いマレーシアかタイに絞った。マレーシアはアジア圏では日本人に一番人気のあるロングステイ国であるが、わ たしはここ数年、大小企業が目白押しに進出しているタイを敢えてチョイスした。その理由は単純だ。マレーシアの人口の80%以上がイスラム教信者の国と比 べ、タイは90%が仏教信者である。宗教差別をするわけではないが、日本人のわたしは仏教徒の方が馴染みやすいからだった。
また食生活もロングステイには重要な条件の一つだ。いくら安くて美味しくても毎日タイ料理ばかり食べているわけにはいかない。日本人はやはり日本食を好 む。幸い、タイでは日本食品が日本にいるのと遜色が無いほど手に入る。
決定打は高齢者介護施設が充実している事だ。いまのところいつでも入居可能だし、人件費が安いので介護人が十分に足りている。わたし達夫婦も体の自由が 利かなくなったらお世話になろうと考えている。アメリカも日本も低額所得者の高齢者施設は2~3年の空き待ちのようだ。それもギャランティーではない。戦 後のベビーブーマー達が今年で65歳を迎えるにあたって、今後十年間は高齢者人口の増加は免れないのに日米では低所得者層高齢者施設が不足している。その 事を両国の行政機関も熟知しているが、財政赤字を抱えていて手付かづの状態である。
インターネットでロングステイを検索すると、わたしと同じ考えのマルチハビテーションを斡旋する会社があった。近年の元気な高齢者に相応しいライフスタ イルを推奨している。元気なうちは海外生活も楽しむべきであり、いざ介護が必要な時はタイへ移住すればいい、なんと気楽な人生だろう。(もちろん、アメリ カでも日本でも生活にゆとりのある人はタイへ移住する必要もないのだが)
そんな折、あの東北地震、津波、原発災害が起きた。死者や行方不明者を合わせると3万人とも4万人とも言われる。幸い助かった人達も家を失くし、仮設住 宅が割り当てられるまで他に行き場所がなく、避難所生活を余儀なくせねばならない。そんな中でリタイヤ生活を送っている高齢者には精神的に追い詰められて いる人も出ているのではないだろうか?選択の余地がなければさらに精神的負担は加速する。わたしは精神科医ではないがこんな時、選択の自由があれば救われ るのでは?逃げ場所があるということは選択の自由があるということではないだろうか。
話は飛躍するがアメリカの豊かさとは何か、といつも考えている。わたしが渡米した37年前、驚愕といってもけっして大袈裟ではないカルチャーショックに あった。いまの日本の若者には想像もつかない程、日米間では生活水準にギャップがあった。唯一、日本がアメリカより優れていたのは食文化だけだった。では 豊かさとは何か?それは選択の豊富さと自由な選択ではないだろうか・・・・
電子辞書で“リタイヤメント”を引くと、隠遁、隠居、退職、引退とある。社会人を辞めて余生をのんびり暮らすと言う事だ。わたしもリタイヤメント生活を 間近にして心の準備をしている。
5月17日(雨)2011年
今井 (イマイ企画)
JABI MEMBER
*どうしてその考えに至ったのか?
結論から答えますと、わたしの場合は性格と年齢的人生観からです。性格は面倒臭がり屋で怠け者。それ故、何か問題があると逃げてしまう。逃げの天才で す。問題が生じると逃げて過ごしていました。ですから60歳を迎えるにあたって、残りの人生もあくせくと働かずのんびりした暮らしをしたいと願った訳で す。一昔前の親父の時代には一般的に55歳~60歳が定年で、リタイヤメント生活が始められたような記憶があります。かつて日本社会では55歳を働ける限 界基準としていました。ところが現在は55歳では年金は支給されず、(その代り、皮肉な事に早期退職制度が普及している)アメリカでもいつの間にか62歳 からしか年金を受け取れなくなったばかりか、66歳の受給額まで待たないと経済的にリタイヤ生活は出来ません。おまけに夫婦二人の年金を足しても危うい暮 ししかできない現実の壁にぶちあたりました。(資産があれば別でしょうが)チョイスは2つです。甘んじてぎりぎりの老後生活に耐えるか、暮らしに必要な費 用をどこからか捻出するか、です。わたしの場合、いまの状況ではどちらも無理です。
ではどうすればよいのか?・・・・そこで発想の転換(逃げの極地)です。マルチハビテーション(またはマルチビジテーション)を考え出しました。
アメリカに未練はないのですが本拠地をサンフランシスコ近郊として、物価の安い国へ何ヶ月か滞在すればリビングコストが浮きます。タダ物価の安い国であれ ばどこでも良い訳ではありません。最初に考慮しなければならないのは治安の問題と気候条件です。アメリカの隣国メキシコは気候も好いし、物価も安いのです が、治安が心配。治安の良い、日本やヨーロッパの先進国は物価が高いのでパス、この二つの条件を満たす場所として、物価の安いアジア圏に焦点を合わせた。
次に海外居住生活で心配なのが医療水準(技術)。物価の安さではラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、チャイナ(上海、北京を除く)などだが、治 安や医療水準に問題があるので没。医療技術の高いマレーシアかタイに絞った。マレーシアはアジア圏では日本人に一番人気のあるロングステイ国であるが、わ たしはここ数年、大小企業が目白押しに進出しているタイを敢えてチョイスした。その理由は単純だ。マレーシアの人口の80%以上がイスラム教信者の国と比 べ、タイは90%が仏教信者である。宗教差別をするわけではないが、日本人のわたしは仏教徒の方が馴染みやすいからだった。
また食生活もロングステイには重要な条件の一つだ。いくら安くて美味しくても毎日タイ料理ばかり食べているわけにはいかない。日本人はやはり日本食を好 む。幸い、タイでは日本食品が日本にいるのと遜色が無いほど手に入る。
決定打は高齢者介護施設が充実している事だ。いまのところいつでも入居可能だし、人件費が安いので介護人が十分に足りている。わたし達夫婦も体の自由が 利かなくなったらお世話になろうと考えている。アメリカも日本も低額所得者の高齢者施設は2~3年の空き待ちのようだ。それもギャランティーではない。戦 後のベビーブーマー達が今年で65歳を迎えるにあたって、今後十年間は高齢者人口の増加は免れないのに日米では低所得者層高齢者施設が不足している。その 事を両国の行政機関も熟知しているが、財政赤字を抱えていて手付かづの状態である。
インターネットでロングステイを検索すると、わたしと同じ考えのマルチハビテーションを斡旋する会社があった。近年の元気な高齢者に相応しいライフスタ イルを推奨している。元気なうちは海外生活も楽しむべきであり、いざ介護が必要な時はタイへ移住すればいい、なんと気楽な人生だろう。(もちろん、アメリ カでも日本でも生活にゆとりのある人はタイへ移住する必要もないのだが)
そんな折、あの東北地震、津波、原発災害が起きた。死者や行方不明者を合わせると3万人とも4万人とも言われる。幸い助かった人達も家を失くし、仮設住 宅が割り当てられるまで他に行き場所がなく、避難所生活を余儀なくせねばならない。そんな中でリタイヤ生活を送っている高齢者には精神的に追い詰められて いる人も出ているのではないだろうか?選択の余地がなければさらに精神的負担は加速する。わたしは精神科医ではないがこんな時、選択の自由があれば救われ るのでは?逃げ場所があるということは選択の自由があるということではないだろうか。
話は飛躍するがアメリカの豊かさとは何か、といつも考えている。わたしが渡米した37年前、驚愕といってもけっして大袈裟ではないカルチャーショックに あった。いまの日本の若者には想像もつかない程、日米間では生活水準にギャップがあった。唯一、日本がアメリカより優れていたのは食文化だけだった。では 豊かさとは何か?それは選択の豊富さと自由な選択ではないだろうか・・・・
電子辞書で“リタイヤメント”を引くと、隠遁、隠居、退職、引退とある。社会人を辞めて余生をのんびり暮らすと言う事だ。わたしもリタイヤメント生活を 間近にして心の準備をしている。
5月17日(雨)2011年
今井 (イマイ企画)
JABI MEMBER
Sunday, May 8, 2011
誰も語らない起業家に必要な能力
まず前置きとして。以前にオバマ減税の効果について、滔々とブログを書いてみた。会計・経理関係の顧客からはかなり評判が良かったのだが、一般人にはさっ ぱりだったようだ。矢張り、専門の議題と言うのはブログに向かないようである。会計士として働いて、携わった企業は軽く100社を超えた。シリコンバレー での米国ベンチャー会社も30社以上は担当した物だ。人は、起業して成功するタイプの人間として、良く才能、人徳、努力等を挙げて礼賛する。確かにその通 りだ。類稀なる才能。人を惹き付ける魅力。寝食をも惜しまぬ努力。どの本を手に取っても、苦労話が美談として並んでいる。然し、起業家に必要な能力とは果 たしてそれだけなのだろうか。今回、私自身の経験と、今まで触れ合ってきた起業家達を観察した上で、私の独断と偏見を以って、誰も触れない、起業家に必要 な能力を記してみた。
1.嫌われ力。どの本を読んでも、人を惹き付ける魅力が必要、と書いてある物だ。だが、私は敢えて嫌われ力を提示する。何故か。それは成功する起業家とは、必 ず嫌われる存在だからである。起業家に秀逸した才能があると仮定して、その能力を皆が理解出来る訳では無い。スタートアップ時は激務になる事も、凡人には 行く先が見えない事も多い。奇人変人と言われる事もあるだろう。優秀な起業家は、部下に対しても必然的に仕事のハードルが高くなる。起業家のビジョンを理 解出来ない人達は、彼をほら吹き呼ばわりして辞めていく事だろう。米国ではスティーブ・ジョブス、日本では孫正義と言った名だたる起業家ですら、理解され ない時代を過ごした。起業家は八方美人で務まる物では無い。理解出来ない者に嫌われる事を厭わぬ力。だから嫌われ力が必要なのである。
2.孤独耐力。何と言っても起業家が一番悩むのが孤独感。こればかりは起業をしてみた人間にしか分からないだろうが、組織の頂点に立つ人間という物は、周りの 理解を得られない事に苦しむ。組織の下の人間であれば、お互いつるんで上司の愚痴を言いながら一杯、等とやる物だが、社長ともなると社内の者に愚痴をこぼ し回る訳にはいかないし、社外の者と話しても、真に理解してくれる訳では無い。前述の通り、優秀な起業家であったとしても、周りが理解してくれるとは限ら ない。起業家は、ただ黙って孤独に耐える能力を要求されるのである。
3.睡眠力。起業家に掛かるプレッシャーと言うのは、並大抵な物では無い。資金繰り、企画・開発、納期、人事、顧客対応等々重大な問題が目白押しである。起業 家とは、常に課題の山の上に寝ている存在なのである。しかも、その山とは、成功すれば益々大きくなり、失敗すれば剣山となる。この重圧に、並の人間であれ ば眠れぬ日々を過ごすだろう。睡眠不足の頭で仕事に望み、効率の悪い仕事をして、作業時間が延び、また睡眠時間が減る。この負のスパイラルに陥る起業家も いる事だろう。重圧の下にあったとしても、強かに眠れる力。これは起業家にとって、かなり重要な資質である。
4.思い込み力。信念、と言えば聞こえはいいが、未来の予想等、誰に出来る訳も無い。経済学者の予想は大概外れるものだ。開発する商品・サービスが売れる、と 言うのは例え各界のスペシャリストを招聘し、侃々愕々の議論をした所で、分かる物では無い。AppleのiPadも、元々は大して売れる見込みが無い商品 だった物を、ジョブスの鶴の一声で開発に至ったと言う。商品の開発・売込みを成功させる力と言うのは、哲学的な信念と言うより、思い込みに近いのでは無か ろうか。「俺が作ったこの製品を、消費者は便利に(或いは楽しく、等々)思い、買ってくれるに違いない」。この重大な思い込みこそが、起業家を動かす力に なる。よって、私は起業家には思い込み力が必要だと思うのである。
5.インターバル走力。起業に際し、大変な労力が必要となる事は言う間でも無い。それには全速力で膨大な量の仕事をこなす、短距離走の力が要求される。特に新 しい分野の仕事を開拓しようとしている場合、アイデアを競合他社に負けないスピードで実現する事が、競争力を生む。が、それだけでは会社の運営を続ける事 は出来ない。全速力で起業を成功させた後は、次のフェーズに向けて休息を取りつつプランを練り、また次のプロジェクトを全速力で成功させる。この繰り返し が出来る事が、スタートアップ企業が本当に成功するか否かの分かれ道になる。だから、インターバル走力が、起業家にとって不可欠な訳である。
以上、立派な本では見掛けない、起業家に必要な能力と言うものをつらつらと書いてみた。勿論、起業家に関する本で、彼が偏屈であり、嫌われる事もある、と は書いてある事はあるが、実はそれを厭わない事こそが、能力の真髄である、と断じてある本は少ないと思う。(個人的には見た事が無い。)最近、日本で起業 がある程度ブームになって来ているようだが、起業家になる為には、後天性の努力だけで無く、その人が育った環境、先天性の性格等が必要だとは、誰も言わな い。努力だけで成功する物では無く、ある程度の素質と言う物も、起業家になるには必要な要素だと感じるのである。
私の独断と偏見のみで、書いてみたブログ記事である訳だが、起業家の皆さんがどう思われるか、感想を聞いてみたいものだ。どこまで、私の見立てに賛同して 貰えるのだろうか。
高野大輔
米国公認会計士
1.嫌われ力。どの本を読んでも、人を惹き付ける魅力が必要、と書いてある物だ。だが、私は敢えて嫌われ力を提示する。何故か。それは成功する起業家とは、必 ず嫌われる存在だからである。起業家に秀逸した才能があると仮定して、その能力を皆が理解出来る訳では無い。スタートアップ時は激務になる事も、凡人には 行く先が見えない事も多い。奇人変人と言われる事もあるだろう。優秀な起業家は、部下に対しても必然的に仕事のハードルが高くなる。起業家のビジョンを理 解出来ない人達は、彼をほら吹き呼ばわりして辞めていく事だろう。米国ではスティーブ・ジョブス、日本では孫正義と言った名だたる起業家ですら、理解され ない時代を過ごした。起業家は八方美人で務まる物では無い。理解出来ない者に嫌われる事を厭わぬ力。だから嫌われ力が必要なのである。
2.孤独耐力。何と言っても起業家が一番悩むのが孤独感。こればかりは起業をしてみた人間にしか分からないだろうが、組織の頂点に立つ人間という物は、周りの 理解を得られない事に苦しむ。組織の下の人間であれば、お互いつるんで上司の愚痴を言いながら一杯、等とやる物だが、社長ともなると社内の者に愚痴をこぼ し回る訳にはいかないし、社外の者と話しても、真に理解してくれる訳では無い。前述の通り、優秀な起業家であったとしても、周りが理解してくれるとは限ら ない。起業家は、ただ黙って孤独に耐える能力を要求されるのである。
3.睡眠力。起業家に掛かるプレッシャーと言うのは、並大抵な物では無い。資金繰り、企画・開発、納期、人事、顧客対応等々重大な問題が目白押しである。起業 家とは、常に課題の山の上に寝ている存在なのである。しかも、その山とは、成功すれば益々大きくなり、失敗すれば剣山となる。この重圧に、並の人間であれ ば眠れぬ日々を過ごすだろう。睡眠不足の頭で仕事に望み、効率の悪い仕事をして、作業時間が延び、また睡眠時間が減る。この負のスパイラルに陥る起業家も いる事だろう。重圧の下にあったとしても、強かに眠れる力。これは起業家にとって、かなり重要な資質である。
4.思い込み力。信念、と言えば聞こえはいいが、未来の予想等、誰に出来る訳も無い。経済学者の予想は大概外れるものだ。開発する商品・サービスが売れる、と 言うのは例え各界のスペシャリストを招聘し、侃々愕々の議論をした所で、分かる物では無い。AppleのiPadも、元々は大して売れる見込みが無い商品 だった物を、ジョブスの鶴の一声で開発に至ったと言う。商品の開発・売込みを成功させる力と言うのは、哲学的な信念と言うより、思い込みに近いのでは無か ろうか。「俺が作ったこの製品を、消費者は便利に(或いは楽しく、等々)思い、買ってくれるに違いない」。この重大な思い込みこそが、起業家を動かす力に なる。よって、私は起業家には思い込み力が必要だと思うのである。
5.インターバル走力。起業に際し、大変な労力が必要となる事は言う間でも無い。それには全速力で膨大な量の仕事をこなす、短距離走の力が要求される。特に新 しい分野の仕事を開拓しようとしている場合、アイデアを競合他社に負けないスピードで実現する事が、競争力を生む。が、それだけでは会社の運営を続ける事 は出来ない。全速力で起業を成功させた後は、次のフェーズに向けて休息を取りつつプランを練り、また次のプロジェクトを全速力で成功させる。この繰り返し が出来る事が、スタートアップ企業が本当に成功するか否かの分かれ道になる。だから、インターバル走力が、起業家にとって不可欠な訳である。
以上、立派な本では見掛けない、起業家に必要な能力と言うものをつらつらと書いてみた。勿論、起業家に関する本で、彼が偏屈であり、嫌われる事もある、と は書いてある事はあるが、実はそれを厭わない事こそが、能力の真髄である、と断じてある本は少ないと思う。(個人的には見た事が無い。)最近、日本で起業 がある程度ブームになって来ているようだが、起業家になる為には、後天性の努力だけで無く、その人が育った環境、先天性の性格等が必要だとは、誰も言わな い。努力だけで成功する物では無く、ある程度の素質と言う物も、起業家になるには必要な要素だと感じるのである。
私の独断と偏見のみで、書いてみたブログ記事である訳だが、起業家の皆さんがどう思われるか、感想を聞いてみたいものだ。どこまで、私の見立てに賛同して 貰えるのだろうか。
高野大輔
米国公認会計士
Subscribe to:
Posts (Atom)