Thursday, December 23, 2021

関西ベンチャー学会との第1回連携ファーラムを振り返って

関西ベンチャー学会とJABIとのコラボレーション 

今年になって、関西ベンチャー学会 とベンチャービジネス、イノベーションなどに関する情報交換をすることで、相互の組織を活性化し、お互いの社会貢献を高めるという関係を9月に結びました。この関係を結んでからは、相互が主催するイベントにも、相互乗り入れできるという仕組みになりました。

 そして、JABIJapan America Business Initiatives)と関西ベンチャー学会の連携を記念して、1回連携ファーラムをアメリカ時間1023日に開催いたしました。両組織のメンバーのみ(プラス、行政関係と報道期間のゲスト)のフォーラムですので、人数的には計30+名のZoomによるビデオフォーラムでした。

 関西VB学会の定藤会長の挨拶の後、JABIのナディア会長の挨拶があり、その後、私からシリコンバレーのエコシステムを簡単に説明いたしました。その後、今回のフォーラムにおけるJABIメンバーからのトークとして、「コロナ禍のベンチャービジネス、VCの動向変化」を海部美知氏より、二村晶子氏より「シリコンバレーのバイオ産業の動向」、岡田朋之(トム)氏より「世界・シリコンバレーのEV動向」、私から「ロボット産業の近況」について語りました。そして、関西ベンチャーの特徴・現状、コロナ禍と経済回復についての話を関西ベンチャー学会よりいただきました。

 シリコンバレーの動向については、「アメリカでのコロナによる死亡者が多いのに比べて、日本は非常に少ないその中で経済がどう変わったか。アメリカのGAFAの価値、25兆円が日本の全ての企業の総額以上である。」という話でオープンしました。

  • 低金利となったせいで一回に出資する金額が大きく変わり、2020年のシリコンバレー投資は過去最高となり、前年のアメリカ全ての額の2倍となった。
  • 件数は多くないものの、金額が増えた。バイオテックに限らず、100ミリオンドル以上の投資の件数が増えている。ある意味で、それはバブルである。
  • アメリカのVC投資が多かったのがEVではあるが、同時に自動車産業も長時間のスパンでDisruptの状況である。
  • VCからのEVへの投資は増えているが、もう投資サイクルは完了のようである。
  • バイオテクノロジーの投資はマサチューセッツ州が多い。その一つの理由はシリコンバレーではGAFAIT人材を確保しているので、シリコンバレーでは人を雇えない状態になっているという背景がある。(そういう意味では今後、シリコンバレーからマサチューセッツにイノベーションの中心が移動するかもしれないと個人的には懸念しています。)
  • バイオに関しては、コロナのせいで投資および産業自体が伸びている。件数は増えていないものの追加投資が増えているそうだ。ガンの治療薬の開発が盛んである。また、IPOも早いタイミングで可能となってきた。
  • サイバーセキュリティーもランサムのせいで2倍に増えている。(私のいるロボット産業では、RaaS (Robot as a Service)とサブスク・モデルのロボットビジネスをいうが、最近のRaaSRansomware as a Serviceの意味らしい。涙)
  • 中国依存を減らす動きもで始めている。
  • Society 5.0というSmart City + 社会のConnected Industryも投資が増加している。 

このように多くの情報を共有でき、両団体にとって第1回連携フォーラムは大盛況に終わりました。今後は年2回行っても良いなと思うほど盛り上がりました。

 参加されたJABIのメンバー、そして関西ベンチャー学会の皆様、ありがとうございました。関西ベンチャー学会と連携を組めて良かったと心底思ったイベントでした。

(文責:大永英明 JABI理事 2021/12/23) 

Tuesday, October 5, 2021

2050年カーボンニュートラルを実現するグリーン成長戦略 - 2

1.国策として発表されるまでの経緯

2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました、その実現を目指して、経産省主導で産業界の意向や計画も取り込んだ「グリーン成長戦略」が作成され、「成長戦略会議」の議論を経て2021年6月18日に「成長戦略実行計画」が閣議決定され国内外に発表されました。グリーン成長戦略の推進は若手Working Groupの活動も取り込んで継続中です。

2.国策として紹介してきた要約の出典は2021年6月18日に政府が公表した135頁の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」からの抜粋です。

3. この成長戦略が実行されれば、国民の当方が期待している恩恵は以下です。

  • 太陽光・洋上風力・地熱発電
    • 太陽光パネルが商業施設や家庭の壁面にも設置可能になれば電気料金が下がる。
  • 水素・燃料アンモニア産業
    • 技術の進展で発電コストが下がれば、家庭電力料金は8,600円/年相当を抑制(試算)できる。
  • 原子力産業
    • JAEAの試験研究炉から産出される放射性医薬品材料はガン治療薬に活用できる。
  • 電気自動車・蓄電池産業
    • 安全運転支援・自動走行技術の進展で移動の安全性・利便性・生産性が向上する。
  • 半導体・情報通信産業
    • グリーンなデータセンターの国内立地により、安全な自動走行や遠隔手術などが実現できる。
    • 次世代パワー半導体の実用化で家庭電化製品の電力消費を軽減できる。
  • 物流・人流・土木インフラ産業
    • 自動車を運転できない高齢者等に利便性の高い公共交通サービスを提供できる。
    • グリーンインフラによって、雨水貯留・浸透等の防災・減災、ヒートアイランド対策が可能。
  • 食料・農林水産業
    • 木材利用の拡大による睡眠効率の向上や、日本食の消費拡大による健康寿命の延伸に貢献。
  • 航空機産業
    • 低騒音の電動航空機の実現により、空港周辺住民や乗客にとって騒音許容性を向上できる。
  • カーボンリサイクル・マテリアル産業
    • 消費者の環境配慮や長寿命と云うニーズに合うコンクリート製品・建築物が提供可能になる。
  • 住宅・建築・次世代電力マネジメント産業
    • 住宅やビルのゼロエネルギー化によって、家庭やビルオーナーの光熱費を大幅に低減できる。
  • 資源循環関連産業
    • 廃棄物処理施設の強靭性を活かした安定的な電力・熱供給と避難所等の防災拠点として活用。

(文責:木村惇夫 JABI理事 2021/9/29) 

Wednesday, September 15, 2021

2050年カーボンニュートラルを実現するグリーン成長戦略

1 (1) 2050年カーボンニュートラルを実現するグリーン成長戦略

  • 2020年10月、日本政府は「2050年にカーボンニュートラルを実現する」と宣言した。
  • 温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入している。
    →従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長に繋がって行く。こうした「経済と環境の好循環」を作って行く産業政策がグリーン成長戦略である。

  • 「発想の転換」、「変革」と云う言葉を並べるのは簡単だが、実行するのは並大抵の努力ではできない。
    産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えて行く必要がある。
    新しい時代をリードして行くチャンスの中、大胆な投資をし、イノベーションを起こすと云った民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援=政府の役割。 
  • 国として、可能な限り具体的な見通しを示し、高い目標を掲げて、民間企業が挑戦し易い環境を作る必要がある。産業政策の観点から、成長が期待される分野・産業を見出すためにも、先ずは2050年カーボンニュートラルを実現するためのエネルギー政策及びエネルギー需要の絵姿を示すことが必要。こうして導き出された成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員する

1 (2) 2050年カーボンニュートラルを実現するグリーン成長戦略

  • 電力部門の脱炭素化が大前提
    現在の技術水準を前提とすれば、全ての電力需要を100%単一種類の電源で賄うことは一般的に困難である。従って、あらゆる選択肢を追求する必要がある。

    再生可能エネルギー …最大限導入。コスト低減、地域と共生適地の確保、蓄電池活用。洋上風力、太陽光、蓄電池、地熱産業を成長分野に。

    水素発電 …選択肢として最大限追及。供給量・需要量の拡大、インフラ整備、コスト低減
     水素産業・燃料アンモニア産業
    を創出。

    火力+CO2回収 …選択肢として最大限追及。技術確立、適地確保、コスト低減
     火力は必要最小限、使わざるを得ない (特にアジア)
     カーボンリサイクル産業の創出
     CO2の部門別排出割合
      電力由来:37%、産業:25%、運輸:17%、業務・家庭:10%、その他:11%

    原子力 …安全性向上、再稼働、次世代炉
     可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先での再稼働
     安全性等に優れた炉の追求

(JABI理事・ 木村惇夫)

Saturday, July 31, 2021

深刻な半導体不足

半導体不足が深刻化しています。

自動車、特に大量の電子部品を使用するEVや液晶テレビ等は部品不足で減産を余儀なくされ、一部では小売価格も上昇しています。原因はコロナ禍で大手半導体生産工場の生産が計画を下回り、日本ではルネサスエレクトロニクス工場の火災、トランプ前政権による中国半導体メーカーへの制裁で台湾や韓国勢に注文が殺到し、需要に応じきれていないことに因る。

半導体不足の解消は今年後半になるとの見方が有力だ。

こうした背景により、今年の半導体工場の設備投資は過去最高を大幅に上回る見込み。

半導体受託生産でナンバーワン、世界シェアの約半分を占める台湾積体電路製造(TSMC)は、今年の設備投資を前年比6割増の約3兆円とする見通しだ。バイデン米国政権の中国製品の締め出し、中国に依存しないサプライチェーンの構築に日本政府も呼応して、TSMCの最先端半導体の研究開発拠点のみならず生産工場の立地を日本へ誘致・歓迎している。

この流れによって、ビジネス機会が増え潤うのは日本の半導体設備・検査機器・材料メーカー、半導体部品商社、半導体技術者の雇用拡大である。

今後も、日本の電子産業の動向・情報を収集して、随時発信して行きます。


2021年7月3日木村惇夫JABI理事