Kimberly Wiefling氏は15年以上の間、多くの日本(米国も)の大企業向けに数々のグローバルリーダーシップや組織強化プログラムを提供してきており、”不可能を可能にする” 成功の方程式についてお話いただきました。Wiefling氏の著書、“Scrappy Project Management: The 12 Predictable and Avoidable Pitfalls Every Project Faces”, 日本語では ”土壇場プロジェクト成功の方程式”(日経BP社)は多くの企業幹部やプロジェクトマネージャーに読まれており、米国に進出している日本企業のグローバル化経営にも役立つ方法が多数紹介されています。日本ではアルクの講師に登録されており http://www.alc-bbl.com/instructor.php?id=68 講座情報もウェブで見つけられます。http://www.alc-bbl.com/lecture.php?id=163
Florian Selch氏はオーストリア出身の若手CEOで、オーストリアでは150年の歴史を持つ年商500億円規模印刷会社の御曹司。NASAのマーズローバーのプロジェクトに参加後、スタートアップのCEOを経験、その後はシリコンバレーのイノベーション手法を取り入れて実家のビジネスの多角化を担っており、組織改革の生々しい実体験を話していただきました。
今回はシリコンバレー流のプロジェクトマネジメントの話になると思いきや、企業が成功するのに一番大切な元は何か、と言う観点の大変重要な話になりました。
さて、企業が成功するのに一番大切なものは何でしょうか?
それはやはり”人”です。人が企業を構成している以上、人のマインドセットやチームワークがまずありきで、企業の成功が決まっていく。まさに私が25年以上の企業経験を通して共感できるお話を聞くことができました。
下記はWiefling氏のセッションについての感想を書かせていただきます。
企業内での多くの問題が人と人との信頼の欠如を原因としていること。またリーダーはマネージャーと違い、率先して有言実行するのがリーダー。人は自分の優位性を保ちたい本能から、他人に批判的であり、“あなたはそういうが、でもXXXX”と言う論調では新しいアイデアは出てこない例など、参加者のエクササイズを通してわかりやすく説明されました。心理学や社会心理学を理解した上で組織の文化を変えていかないと、イノベーションやチームワークが生まれないのが良くわかりました。
エクササイズの例としては、二人のペアで顔を描くというもの。各自が交互に顔のパーツを書くことで、一人で書くより創造的な絵が書けると言う経験ができます。また相手の言うことを即否定するというエクササイズでは、いかに良いアイデアが批判的雰囲気で初期に消えるかがわかりした。その他には、リーダーがあごを触ってくださいと言いながら自分は頬をさわると、参加者は頬を触ってしまうという、行動と言動が異なるリーダーの問題点がわかりやすく示されました。
Wiefling氏のセミナーは講師が一方的に説明するという一般のセミナーとは異なり、ファシリテーターが実践や体験を通じて参加者の学習を促し、頭で理解するだけでなく、心で理解できるようになっています。学びが腑に落ちて内省化され、参加者が職場に戻ったあとも言動の変化が持続して組織が活性化されていくのではないかと思います。
このセッションを通して感じたことは、これらのリーダーシップやチームワーク、イノベーションを学んで活用できる会社(組織)と、無駄にする会社があるのではと言うことです。企業のトップがワンマンや独裁者の場合、またマイクロマネージメントの組織では、イノベーションの文化は早々に消されてしまう。社員がセミナー参加後会社に戻ると、会社を辞めたり、解雇されることがあると聞きました。また組織が大きすぎる場合も、せっかくの学びが組織の持つ文化に取り戻されてしまい、無駄になってしまいます。
イノベーション、リーダシップ、グローバル化を求めてWielfling氏のセミナーを開催する企業には、変わらなければ先はないと言う強い危機感や、変わることが許される、奨励される組織(たとえば新規事業部隊)、力のあるスポンサー(社長や役員の後押し)などが求められると感じました。このような素地のある組織に新たな考え方やイノベーションとチームワークの組み方を導入すれば、組織が活性化され、信頼関係やコミュニケーションが改善され、飛躍的な企業活動が可能ではと思います。 逆に無駄にすると思われる会社は、まずはトップの再教育かカウンセリングが必要な気がします。
米国にいる日本人駐在員の方から、本社に言っても理解されない、ただ情報を出しても何も起こらない、などという問題が聞こえてきます。本社の受け入れ先で上記のセミナーを開催することにより、風通しや変化が起こりやすくなるのではと考えられます。米国の社員もやる気が出ますし、アイデアが採用されて出世できればWin-Winですね。
大企業の組織の問題は、日本に限らずどこにでもあると思います。人間が進化する上で習得した本能が実はイノベーションや企業発展の大きな足かせになっていると理解すると、早くこの点に気づき社内の文化を改革した企業が、今後の変化を見方にして発展していけるのではないでしょうか。企業活動で現れる、人間の防衛本能やいわゆる欲と恐怖の感情をいかに克服するかが、今後のリーダーに求められている気がします。自分の保身より皆の幸せを考えて行動できるのか。私も自分の胸に手を当てて自省して行こうと思います。
岡田朋之
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