定藤 繁樹 関西学院大学教授 (プロフィールはこちら)
今回のJABIサロンは、JABIの共同創始者、大永氏と、高校時代の同級生である定藤教授との半世紀ぶりとなる再会がきっかけで開催されました。定藤教授は、関西学院大学大学院経営戦略研究科にて、学生たちに起業家精神(アントレプレナーシップ)、国際競争力(グローバリゼーション)、産官学連携(ビジネスエコシステム)を研究、指導されています。講演序盤は定藤教授の略歴説明、アメリカ留学~会社員~教授就任まで数々の破天荒な経歴を面白おかしく話してくださいました。通常の講演に比べ余談が多く入っていましたが、大永氏との50年ぶりの再会、溢れる思いがひしひしと伝わり、私を含めゲストの心を温める素敵な時間となりました。気が付けば公演予定時間の半分を略歴紹介に費やすという、これまた破天荒な展開となりました。また、15年にわたる関西学院大学との関わりをアンバサダーとして紹介され、私自身、若い頃に戻れるのであれば是非とも学びたい、自分たちの子どもがいれば是非とも行かせたいと思わせる内容で、教授と言う事を忘れて、営業部長さんが話されているのかと勘違いしてしまいました。
【以下、定藤氏による講演の概要】
グローバルな視点から見ると、アメリカ109社に対して唯一対抗できる国家、中国が59社、欧州はEU全体で28社、インドが10社となっており、日本の出遅れ感が顕著に表れている。ユニコーン企業が国際競争の未来予想図になるとは断言できないが、現地点での勢力図としては間違いなく無視できないものになっている。 1990年代以降のPCの普及・発展と共に情報技術や人工知能は目まぐるしいスピードで進化している。アナログ時代を振り返ってみても世界は常に効率化や利便性向上など、日々イノベーションが繰り返され、これからも繰り返されるであろう。ではこれからの未来はどうなるのか。
アメリカ・中国を中心に、国家や大企業はコンピュータサイエンスを通じて、AI(人工知能)、産業ロボット、医療科学などへ巨額の投資を行っている。少なくとも10~20年先までの事業計画が確定していると言うことだ。私見ではあるが、私の学生時代、約20年前はと言うと「ポケベル」と言う数字10桁のみを受信できる機械が時代の最先端であった。相手の電話番号10桁を少なくとも2,30件は記憶していたものである。それが10年ほど前から月額同程度の金額でスマートフォンをWi-fiで使いこなし、PCで世界中の人々と常に連絡が取れるようになっている。同じスピード感で向こう10年のイノベーションを想像してみた時、SF映画の世界が現実となっているだろう。その時に「日本」という国家は世界の勢力図で先進国に入っているのだろうか?
【筆者の感想】
私は、日本にいた時からよく大風呂敷を広げる癖があります。会社員の時には「出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打たれない」と言い聞かされることが多かったと記憶しています。アメリカ、ベイエリアでも同じ大風呂敷を広げてしまっていますが、関わった方々の反応が全く違いました。ネガティブな反応を見せる日本人と違い、アメリカで出会った多くの人々は、すぐさま「5W1H」の質問と共に「YOU CAN DO IT」と言います。やらない事には始まらない、動かないことが最大のリスクである、失敗し続けても成功するまで諦めなかったらそれはただのプロセスだ。とにかくポジティブです。関西学院大学の事例によると、資金援助付きのビジネスプランコンテストの参加申し込みがそれほど無いと言います。Silicon Valleyではどうでしょう。中心的大学のスタンフォード大学で同じような資金投入コンテストなら数日中に満席となり、競争原理のもとハイレベルな論文が出てきます。ビジネスエコシステムの循環における、未来への原資である優秀な人材=学生の意識が、ここまで違うという現実を受け入れ、関西学院大学はいち早く文科省からスーパーグローバルユニバーシティの認定を受けました。需要と供給のバランスが崩れたバブル時代の就職活動の様に、現在の進学活動も少子化問題と共にバランスが崩れています。大学も経営していかなければならない以上、教育のクオリティとビジネス面でのバランス維持が大きな問題となっています。ビジネスエコシステムの輪を保つだけではなく、この輪をどんどん広げて行く事が「日本」と言う誇り高き国家が国際社会で生きていくための使命だと感じました。
2018年3月26日 室住 康仁