Wednesday, February 5, 2014

“氷山の一角”という言葉を覚えていられますか?

この言葉は存亡を賭けて国外に 進出しようとする日本企業にとって重要な意味をもっています。ご存じのように“氷山の一角”とは水面上に表れている部分、即ち我々の目に見える氷山全体の7分の1の部分の意味です。

日本は歴史上荒海が砦となって外敵の進入から守られてきた平和な島国です。しかし必要に応じ大陸文化を巧みに取り入れ文化の向上を推し進めてきた歴史も持っています。このような国に住む日本人に対し、正義を楯に必要上数百年に亘って外敵と戦かってきた大陸の民族とでは、その精神構造上で大きな差異があります 。

何故なら我々は大陸の人々とは異なり外敵との闘争経験に欠くところから、未知の敵に対する警戒感を遺伝子情報として体内に持っていないからです。その結果、日本人が国外で田舎者と呼ばれる事は致し方ない事でもあります。

さて、このような日本人と、比較例として取り上げた欧州系の人達を、大きさと形状がほぼ同じの二つの氷山として比べますと次の事が言えます。

まず水面上に姿を現している氷山の特徴を人の例で説明しますと、 日本人では虹彩が茶褐色で髪の色は黒、そして肌は淡い茶色がかっているのが通常です。それに対し例えば欧州系でも北方の人々の虹彩は青、緑色又は灰色、髪色は金髪、そして肌色は薄桃色と外観で我々とは異なります。しかし双方が人間であるという面では全く相違ありません。

これら我々が目にする事が出来る特徴、即ち黒髪に対する金髪を氷山の例に当てはめますと、それは水面上に現れている部分の氷山の事で、その部分は全体の7分の1に該当し、残り7分の6の氷山は水面下に隠れていて見ることができません。

一般的に言って、我々日本人はこの水面下の“隠れて見えない部分”(仮にこれをソフトとします)には関心を示さず、水面上に表れている氷山(ハードとします)を見て、“黒髪、又は金髪”であると判別するのが普通です。
そして、我々と北欧州系の人々では人種上外見の相違はある、しかし他も人間である以上我々とほぼ同様な考えで日常行動、又は事業を行っていると単純に考えます。

何故なら我々日本人は歴史上、奇跡的に平和を保つ事が出来た島国の民族なので、大陸の人達とは異なり歴史上、民族移動 、異民族との争い、及び被植民地化、その他の厳しい体験を持つ事がありませんでした。その結果全ての物事を単純にとらえる傾向があるからです。
従って島国民族が持つ内向きの能力が生かせる仕事、見える物作り(ハード)には興味を示しますが、見えない物作り(ソフト)には関心を示さないとの事は当然な事ともいえます。

これを基にして考えますと、1980年末に始まりその後も続く日本企業の国際競争力低下の一要因は、我々が得意とする見える物作りの事業に比重を置きすぎた結果であったと考えられます。その代表的な商品がガラパゴス現象と呼ばれた、メカニカル キーボード(見える)の保持に固執し続けた日本の携帯電話であった事には間違いありません 。

今後我々が、氷山の7分の6にも当たる見えない部分に対しての洞察力、分析能力を身につければ、それが新しい力となって日本に新しい活力が生まれて来ると信じています。なぜなら我々が得意な7分の1の見える部分の能力だけでも、過去数十年間を通じ、経済的、技術的に大飛躍をしてきたのですから。従って今後残りの7分の6の能力が加われば、日本は世界に向かって全く新しい飛躍の時代を迎える事が出来ると強く信じています。

しかしながら、競争相手が得意とする“隠れていて見えない部分” の能力を身に付ける事は容易な事ではありません。

大切な事は我々に欠く能力を身に付ける為の第一歩を何時踏み出すか、否かの決意の有無にかかっていると思います。


2014年1月23日 シリコンバレーにて執筆

福永憲一

コンシューマープロダクト マーケティング スペシアリスト